ゆめ(白鳥沢) | ナノ
 ヒナワシは飛んでいく


小鳩、巴、天童、瀬見の4人でのリモート飲み会にて


「そういや今年の中総体、白鳥沢が2年連続で全国進出だってな」


「うっわ、マジで!? 巴ってば、いつの間にかすっかり鍛治君みたいになっちゃって!」


「今年のウチはすげーぞ、マジで全国制覇狙える! 特にセンター線がめっちゃ強くてさ!」


「ほーん、良いミドルブロッカー入ってきたんだ。どんなん?」


「天童と同じゲスブロッカー! 反射神経とか身体能力はまだまだだけど、推測の精度なら多分お前より上!」


「カッチーン!? もうバレー辞めて10年近く経つのにそう言われると未だにムカつく!」


「あはは、天童は負けず嫌いだもんね。でも私も試合見に行ったけど、本当に凄いセンスの持ち主だったよ。確か名前は…音斗(オト)くんだったよね?」


「うん、去年の12月頃に神奈川で拾ってきた!」


「去年の12月? 神奈川? 拾ってきた? 何それ、どういうイミ?」


「もともとは、神奈川に遠征に行った時に練習試合相手になってくれた学校の選手だったんだよ。センス抜群だし点も稼げてるのに本当は控えっぽくて、チームとの相性も悪くて本人も居心地悪そうだったからさ。高校上がったら白鳥沢おいでよって声かけたら『高校まで待てないから今すぐ行く』って今年度から編入してきたんだ。すげー根性だよな!」


「…なんか巴、ますます中身が鍛治君そっくりになってきてない? 俺ちょっとコワいぐらいなんだけど」


「そういや天童も、中学最後の試合ではワンポイントブロッカー扱いだったのを声かけられたんだっけか。やっぱり血は争えないってことだな」


「そうだ天童、試合の映像送るから今度アドバイスしてやってよ! ゲスブロックってどうしても本人のセンス任せになっちゃって、なかなか的確にアドバイスしてやれなくてさ」


「いや〜…ゲスブロック飛ぶヤツってどうせメンドーな性格の捻くれ者だろうから、人のアドバイスなんか聞く耳持たないと思うけど」


「見事なまでの自己紹介だな」


「そのへんは大丈夫! ウチの音斗、今時珍しいぐらい素直だから! 何だったら今紹介するわ」


「は? 今?」


「音斗、ちょっとこっち来て!」


「どうかしたの、巴ちゃん?」ヒョッコリ


「!?!?!?」


「音斗、こいつ天童っていって、お前の大先輩のゲスブロッカー! 性格は悪いけど良いヤツだから色々と学ばせてもらえな!」


「はーい。はじめまして、天童センパイ。白鳥沢中等部でミドルブロッカーやってる祢津音斗(ネヅオト)でーす」


「ちょっ、ちょちょちょちょちょっと待って!? そこ巴ん家だよね!? まさか一緒に住んでんの!?」


「それがさー。音斗、駆け込みで編入が決まったから、気付いた時には学生寮の部屋が全室埋まっちゃってたんだよね。まさか中学生を一人暮らしさせる訳にもいかないし、声かけた身として責任とって居候させてんの」


「何ソレ、空知ちゃん知ってたの!? なんで俺に教えてくれなかったワケ!?」


「う、うん、知ってたけど…。まあ学校とか親御さんにはちゃんと許可取ってるそうだし、すごくしっかりした良い子だって聞いてたから…」


「いやいやいや、そいつ中2かそこらのオスガキでしょ!? 俺が童貞捨てた歳と全く一緒よ!? 良い子だろうが何だろうが獣と大差ないよ!?」


「子供の前で何言ってやがんだボゲ!!! それ以上教育に悪いこと抜かすならリモート切っからな!!!」


「オスガキなんてヒドい、俺は純粋にバレーがやりたくて白鳥沢に来ただけなのに…」シクシク


「うわーっ、ごめん音斗! こいつに紹介したあたしが悪かった! 天童、お前も謝れや! フランス生活長すぎて日本人の奥ゆかしさ忘れたのか!?」


「好き好んでゲスブロック貫いてるようなヤツに奥ゆかしさなんて概念あるワケないでしょーが!! 空知ちゃんと英太君、地元組として責任取ってそいつのこと見張っておいてよ!? 間違いなく俺と同類のゲス野郎だから!!」


「いや自分のことゲス野郎って認めんのかよ」


「天童…フランス生活長すぎて片想い拗らせちゃってるなぁ…」













「えーっ!? 音斗さん、あの天童さんと瀬見さんと会ったんですか!? 羨ましい…!」


「リモート越しだけどね。っていうかシャナ、なんでそいつらのこと知ってんの?」


「だって天童さんと瀬見さんといえば、若様が白鳥沢の高等部に在籍していた時代のベンチメンバーですよ!? 特に天童さんはスタメンとして若様と肩を並べて戦った歴戦の勇士! 若様ファンとして知らないはずがないじゃないですか〜!」


「…シャナ、ウシワカのこと若様って呼ぶの、イタいオタク丸出しすぎるからやめた方がいいよ」


「ウシワカに憧れすぎて右利きだったのを無理やり左利きに矯正したような熱狂的信者に何言っても無駄だぞ、音斗」


「静さん、おはようございまーす。なんか巴ちゃんが用あるっぽいですよ」


「いつも思うけど、お前よくあの鷲匠先生のこと『巴ちゃん』なんて呼べるな。恐ろしすぎて俺らには絶対ムリだわ」


「しかもあの超怖い先生と一緒に暮らしてるんだから更に驚きですよね! 俺だったら3日も経たずしてフルメタルジャケットの微笑みデブみたいになりそうです」


「中1のくせに随分渋い映画知ってんなお前」


「は??? お前いま俺の女神様の巴ちゃんのことデブって言った??? 今すぐそこにドタマ出せよマジで微笑みデブみたくでけえ風穴開けてやるから」


「完全に誤解です音斗さん!!! 瞳孔開きすぎてて鷲匠先生より怖いです!!!」


「お前本当に鷲匠先生のこと好きだな…。あのハートマン軍曹ばりのスパルタ監督を女神様って…」


「当たり前じゃないですか、巴ちゃんは俺を地獄の底から引っ張り上げてこの楽園に連れてきてくれた正真正銘の女神様ですよ? 俺は巴ちゃんと白鳥沢のために、中総体もインハイも春高も必ず全国制覇して、ゆくゆくはゲスブロッカー初の全日本入りも果たしてみせるって決めてるんですから。そして俺のことを虐げてきた地元のノータリンどもを絶望と後悔の海の底に沈めてやる…。その為にもあの天童とかいういけ好かないブロッカーなんぞには絶対に負けねえ…」メラメラ


「さすが音斗さん! 俺も若様が現役のうちに必ず全日本入りして、あのウルトラスーパーハイパーかっこいいスパイクを一番間近から見るという若様ファンにとっての至上の喜びを味わってやります!」キラキラ


(これからこんなめんどくせえ後輩を御していかなきゃならないのか、俺…。主将なんか引き受けるんじゃなかった…)








未来の白鳥沢中等部男子バレー部の面々(捏造)

・音斗
中学2年生。身長179.1cm。神奈川から単身白鳥沢に編入してきた天才ゲスブロッカー。性格は頗る悪いが好きな人の前だと猫を被る腹黒ぶりっ子。巴のことが大好き。フルネームは祢津音斗(ネヅオト)。

・シャナ
中学1年生。身長169.9cm。ウシワカの大ファンすぎてもともと右利きだったのを無理やり左利きに矯正して、結果両利きスパイカーになった単純だけど凄いヤツ。シャナは本人考案のあだ名で本名は車舎奈月(クルマヤ ナツキ)。

・静
中学3年生。身長180.3cm。現エーススパイカーで主将。監督の巴よりしっかりしていると評判の苦労人。憧れの選手はキリュウ。フルネームは吾妻静(アヅマ セイ)。



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