※史実絡み


「すまない、ナナシ殿!この度の婚約は無かったことに・・・!」


「・・・え?」


ナナシノナナシ。別名次郎法師。婚儀寸前で婚約を破棄されました。








「こんちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「まあまあ、ナナシ!そうしょげるな、飲め!」


はじめまして。それがしはナナシノ直政。今年で5つになりました。本日はそれがしの生たんのうたげで、母上さまが主君の徳川さまをよばれたのですが、なぜこうなっているのでしょうか。


「とっ、徳川、様ぁ!私っ、そんなに女として魅力ないです、かねェッ!?」


「そんなことはない!ナナシは立派な女人だ!なぁ、忠勝?」


「・・・・・・!!!」


「ほら、忠勝もそう言ってるじゃないか!元気を出せ、ナナシ!直政も心配しているぞ!」


・・・どうやら母上さまは酒をのみすぎてよわれたようす。母上さまはよわれると昔のことを思い出して泣くことがよくおありです。そのたびにこうしてまわりがはげましているのですが、今回はかなりよわれているようです。


「・・・うぅっ、私信じてましたよ、直親様を。いろいろあって婚儀は遅れたけど、私が嫁ぐのを待ってくれてるって。」


「うんうん。」


「それなのにィィッ・・・!!あの男、私が嫁ぐ前に正妻を迎えるって、どういうことなんだよォォォォォッ!!!ええい、あんな男に様なんてつける必要なかった!バカチカで十分だ!バカチカこのクソ野郎ーッ!!!」


「落ち着け、ナナシ!それと、バカチカはやめてくれないか?元親となんだか被ってしまうんでな。」


「ぐすっ、すみません・・・。うううっ、私ナナシノ家の当主頑張ってますよねぇ?」


「ああ、もちろんだ!お前たちのおかげでワシも助かっている。本当に感謝しているぞ、ナナシ。」


「徳川様・・・!」


徳川さまは本当に太陽のようなお方だ。あんなによってる母上さまの相手をちゃんとしてくださる。母上さまも感げきして、さらに泣いてしまった。


「徳川様ッ!私、徳川様に一生お仕えします!」


「そうか、頼りにしているぞ!では飲め飲め!」


「ありがたき幸せっ!」


そう言いながらお二人はどんどん酒を進めていく。ああ、あんなに飲んで。徳川さまもけっこうよわれているようす。


「・・・!!」


「?本多さま?」


本多さまが何かをそれがしの手の上においた。・・・小さな、がらす細工の珠だった。


「そ、それがしの生たんの祝いに?」


「・・・・・・!!!」


「あ、ありがたきしあわせっ。」


本多さまからのおくりもの・・・!なんとありがたきことか・・・!それがしにはもったいないしろものだ。本当にいただいていいのだろうか・・・。なんにせよ、これからやるであろう母上さまの面どうを見ることさえ、うれしくなってくる。


「うううううう・・・。直親様の、浮気者ーーーーーーーーーーッ!!!」


「ハッハッハッハ!まあ飲め!」


・・・今回はさらに面どうになるよかん。


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