※現パロ
大谷さんの検診に訪れる度に、あの人は意地が悪くなっていく気がする。
「・・・まさか鍵を閉めているとは。」
あの野郎、こっちも好きで来ている訳じゃねぇっての。仕事で来てやってんのにこの扱いはなんだ。とにかく玄関に貼ってあった「鍵は自分で探してみせよ☆」の書き置きを破いておいた。
「用事あるっていうのに・・・!あの野郎わざとやってんな・・・!」
私は鍵を探しに家の周りをグルグル回りはじめた。
「ほう、早かったな。」
「お・お・た・に・さんっ!!いい加減にしなさいよ、あんた!!いくら検診嫌いだからって鍵閉めるとか、石田さんに言い付けますよ!」
「ヒヒッ、それは困った、困ったァ。まぁ、座れ。茶ぐらい飲んでも構わんぞ。茶菓子はないがな。」
「飲む暇もねぇっつーの!いいから検診!」
結局鍵は玄関先の電灯の上に置いてあった。灯台元暗しってレベルじゃねーぞ。しかも私の身長が低いことを馬鹿にしてんのか。畜生。
「で、調子は?」
「相も変わらずよ。食欲は湧かぬ、足は萎える、膿は多少は収まった。」
「だからもう入院してくださいってば・・・。私じゃどうしようもありませんよ。栄養剤出して、歩くリハビリの手伝いして、包帯巻いてあげることくらいしか出来ないんですから。」
「構わぬわ、病院は好かぬ。それに、三成もおる。あれは放っておけば干からびて死ぬ故にな。」
相変わらず頑固な人だ。でも、今すぐにでも死ぬ病気ではないけれど、入院すれば多少は回復することは間違いないのに。
「我にはぬしの下手な検診で十分よ。」
「・・・下手で悪かったですね!」
「そう怒るな、褒めておるのよ。」
「どこかですか!」
「・・・全く、ぬしも医者ならもうちと賢くなりやれ。」
「一応医大出ましたが!?キーッ、むかつく!この元東大生め!」
人が気にしている学歴のこと言いやがって!この天才め!
「とにかく、なるべく歩くようにしてくださいね!歩かないから筋肉が落ちてますます歩けなくなっていくんですよ。」
「わかったわかった。」
「あと、ご飯もなるべく三食取るようにして、どうしても吐いたり食べれなかったら栄養剤飲んでください。それから包帯はこまめに取り替えて、体周りは清潔にするように!」
「わかったわかった。ぬしは夏の蝉よりやかましいな。」
「なんなんですかそれ!・・・心配してるんですよ。ちゃんと言い付け守ってくださいね。」
「・・・あいわかった。」
大谷さんが私の頭を撫でた。・・・むぅ、また子供扱い。一応、医者と患者っていう立場的には私のほうが上なのに、・・・むかつく。
・・・でも、私で十分って言われて、ちょっとだけ嬉しかったことは秘密だ。