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もしもHQ夢主が白鳥沢に進学していたら



※この小説は拍手連載風と本連載風の二部構成でお送りします。









「若ちゃ…じゃなくて牛島先輩!」


「…なんだ」


「さっき、小鳩さんが探してました! あと、これ男バレの部室の前に落ちてたんですけど、誰かの落とし物だと思います!」


「そうか、わかった。聞いておく」


「はい! 失礼します!」タターッ


「…」


「若利君オハヨ〜」


「おはよう」


「凛々チャンは朝から元気だネ〜。どしたの、もの言いたげな顔して」


「…いや、なんでもない。これが部室の前に落ちていたそうだ」


「あ、それ俺のイヤホン! 無いと思ったらそんなとこにあったんだ〜」


「…」










「っていうことが朝にあったんだけどさ」


「ふーん。珍しいじゃん、牛島が思ってること言わないなんて。小鳩、原因わかる?」


「わ、私にわかるわけないと思うけど…。でも、もしかしたら凛々に『牛島先輩』って呼ばれるのが、寂しいんじゃないかな」


「じゃあ何て呼ばれたいの?」


「そっ、それは、ほら、わ、わわわ、わか…や、やっぱり言えないっ!」プシュー


「ぶふぉっ」


「天童、あんまり笑うなよ、空知に失礼だろ…。まあでも、今まで『若ちゃん』呼びしてた幼馴染が、先輩後輩になったからっつって『牛島先輩』呼びになったら、そりゃ寂しいよなぁ」


「そんなもんなのかなー。先輩呼びなだけで普通に仲良いし、関係が変わった訳じゃないんだろ?」


「実際に呼ばれて耳で聞こえちまう分、前との差を否応なく味わわざるを得ないんだろ。俺がいきなり『鷲匠』呼びになったら、巴だって寂しいだろ?」


「…確かにさみしい…」シュン


「ぐっ…! お前、いきなりそういう反応するなよ、心臓に悪いだろ…!」グサッ


「は?」


「凛々も別に、呼び方なんて気にしなくてもいいのに。上下関係とか、前に比べたらだいぶ緩くなったと思うんだけどなぁ…」


「そりゃー気にするっしょ。自分のとこの部の主将が幼馴染のこと好きで、しかもその幼馴染はそんなことお構いなしに自分に構ってくるし、下手を踏んで主将の怒りを買ったら、バレー部どころか白鳥沢にもいられなくなるし?」


「な、なんでそんな話が飛躍してるの!? しないよ、そんなこと! 凛々は大事な後輩で、今後の白鳥沢を担うスーパールーキーなんだから!」


「空知はいいかもしれないけど、空知ファンがなー…。お前はそんなつもりないと思うけど、白鳥沢のスクールカーストの頂点は実質、空知だからな」


「空知ちゃんから見た凛々ちゃんは強敵だけど、凛々ちゃんから見た空知ちゃんもなかなかの強敵だよねー」


「うぅ、私も凛々も静かにバレーをしたいだけなのに…」





もしも凛々が白鳥沢に入ったら@
学校では若利を「牛島さん」「牛島先輩」と呼ぶ。先輩後輩関係になったので、そのケジメ。その呼び方をやめろとか言ってたくせに、いざ呼ばれないと寂しいウシワカちゃん。





「はぁ…悩んじゃうわ…」


「あ、あの桃ちゃんが溜息吐いてる…!?」


「「桃ちゃんどしたの、可愛いお顔が台無しじゃーん」」


「いえ、スタメンのことでね…。オポジットに小谷さんを入れるか、今まで通り諏訪さんでいくか、悩んじゃって…」


「…なるほどー」


「…確かに悩んじゃうわー」


「小谷さんは素晴らしいテクニックを持つ選手、コート内にいたら攻守両方において活躍してくれるでしょう。けれど、今現在においてチーム間のコンビネーションが取れているのは諏訪さん。諏訪さんがオポジットにいるからこそ、事実上のツーセッター制が取れているのもあるし」


「凛々もトス上手いから、その点の心配はないんじゃね?」


「えぇ、ゆくゆくは諏訪さんのような使い方をするつもりよ。けれど、まだ入ったばかりの小谷さんでは、スパイカーとのコンビネーションに不安があるわ。やはりインハイは諏訪さんでいこうかしら、いやでも春高に照準を当てると今のうちから小谷さんを育てておきたいし…悩んじゃうわ…」


「…桃ちゃん、私は凛々を使うべきだと思います」


「げ、こはく」


「今の聞いてた?」


「自分でも前から思ってたことだよ。凛々を使う理由の方が、私を使う理由より多いし、納得がいく。悔しいことだけどね」


「…そう。私が諏訪さんに覚悟を迫らなくても、もう既に覚悟を決めていたのね」


「はい。でも、諦めませんから。私が白鳥沢のチームに必要なことを、ちゃんと証明できるように、今後も気合入れて練習してきます」


「ふふ、いいことだわ。でもね諏訪さん、私はまだ小谷さんを使うことを決めたわけじゃないわ。あの子は、少し精神的に未熟なところがある。自分がチームの力になるために周りを顧みずに暴走してしまう点は、スタメンとして起用するには少し不安要素だわ」


「大丈夫です。私が、あの子の面倒見ますから。今後の白鳥沢を牽引する正真正銘の『エース』に、私がしてみせます。生半可な奴に、ポジションを渡せませんから」


「「こはくかっけー」」









「とは言ってみたけど…」


「こはくさん、左手スパイク教えてください! こはくさんみたいに、もっとコースの打ち分けできるようになりたいです!」


「…凛々。あんたはホントに可愛いやつだな! どっかの双子とか小鳩厨とは大違いだわ!」スリスリ


「?」


「こはくも凛々のこと甘やかすだけ甘やかしてるじゃん」


「凛々って実は左利きキラーなんじゃね」






もしも凛々が白鳥沢に入ったらA
凛々とこはくのポジション争いが始まる。だが凛々もこはくもお互いを尊敬してるので、物凄く良い先輩後輩関係。凛々を一番可愛がるのは小鳩でも巴でもなく、こはく。





白鳥沢近くのカラオケ


『好き好き大好き♪』


『好き好き大好き♪』


『『愛してるって言わなきゃ殺すー♪』』


「相変わらずコワイ歌ばっか歌うのネ、戸鷹姉妹」


「ふー、歌った歌った。次は凛々と五色と柴田の1年トリオだよ」


「1年はカラオケに来たら全員でなんかやらなきゃならないってのが、ウチのバレー部の伝統だから」


「もう、そんなこと勝手に決めて…。別に気にしなくてもいいからね、凛々」


「いえ、大丈夫です! ちゃんと準備してきました! 工、柴ちゃん、今こそ練習の成果を見せる時!」


「よっしゃ! 俺がこの白鳥沢のエースに相応しいと、ここで証明してみせます!」


「カラオケにエースも何もないだろ…。はあ、気が重い…」


「どれどれ、工たちは何やるんだ? 去年の白布たちはアナ雪メドレーだったっけ」


「太一のオラフが完コピすぎて大草原不可避だったわ」


「天童さんやめてください、思い出すだけで死にたくなるんですから」


「じゃあちょっとステージお借りします!」


「おお本格的」


「「ワクテカー」」






『あたたたたたた、ずっきゅん♪』←低音


『わたたたたたた、どっきゅん♪』←低音


『C!I!O! チョコレート チョコレート チョ!チョ!チョ! いいかな♪』


「え、そこでまさかのBABYMETAL? っていうか男子2人がゆいもあやんの?」


「妙に動きがキレッキレだな!」


「なになに、工がゆいちゃんなの? 俺の腹筋を殺す気なの?」


「工じゃありません、TUTO-METALです!」


「何だその妙な語呂の良さ」


「こんなん草生えるわ、ムービー撮っとこ」ピロン


「凛々かわいー、今年の文化祭はこれで決まりだね」


「グループ名は『バレーメタル』でいくべ」


「もちろんベルばらもやるから安心してね、小鳩」


「全く安心できないんだけどそれ…」





もしも凛々が以下略B
五色、柴田の1年組とは仲良し。凛々と五色が盛り上がり、柴田が止めに入るのが定番。
カラオケでは『ギミチョコ!!』→『ヘドバンギャー!!』→『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の順で完コピ芸を披露して大いに盛り上がり、YUI-METAL派とMOA-METAL派で骨肉の争いを繰り広げたそうな。私はSU-METAL一筋です。





小谷家


「若ちゃん助けて! 宿題ぜんぜんわかんない!」


「何度も言うが、俺だって大して頭が良い訳ではない。勉強のことは空知に聞け」


「小鳩さん優しいから丁寧に教えてくれるんだけど、私のレベルが低すぎて『えっ、そこからなの?』ってとこから始まるから、申し訳なくて…。私の何百メートルも先の次元の話をしてるんだもん、やっぱ頭の良い人は前提が違うんだね…」


「…どこがわからないんだ、貸してみろ」


「えっとね、ここと、ここと、ここと、あとここ!」


「お前は一体授業で何を聞いているんだ」


「…お母さん、あの2人ちょっと距離が近すぎると思うんだけど…


「学校で距離がある分、ウチでは近付いてたいんでしょ〜。はー、早く付き合っちゃえばいいのに、凛々と若利くん」


「いやでも凛々も年頃なんだから、もうちょっと慎みをだね…。いや若利くんはそんな男じゃないとわかってるけど…」


「そうね〜。凛々も年頃なんだから、もうちょっと可愛い部屋着買ってあげた方がいいわね〜。私に似て美人なんだから、その気になれば若利くんもイチコロなのにねぇ」


「あのお母さん、そういうことじゃなくて…」





もしも以下略C
ウシワカちゃんとのベタベタ度が上がる。相対的に小鳩のorz度も上がる。YOU早く付き合っちゃいなYO!な凛々ママとウシワカママはピシガシグッグッ状態。














「お、おぉぉぉ!! スゲー、広い!! ホテルみたい!!」


新マネージャーである仁花に勉強を教えてもらった帰り、県内王者白鳥沢のエース、牛島若利に出くわした日向と影山は、ロードワーク中の若利を追って白鳥沢学園までやってきた。見慣れた烏野とは全く違う、真新しい白い壁が映える大きな校舎に、日向の眼がキラキラと輝く。


「おい、牛島さん見失ったぞ!」


「え! ってことは、迷子かよ!?」


影山の言葉に、日向が慌てふためきながら周りを見渡す。猛スピードで体育館へ向かった若利を見失ってしまったのだ。慣れない学校の間取りに戸惑いながら体育館を探すも、全く関係のない馬術場に来てしまった。


「う、馬! 馬がいるぞ影山!」


「うるせぇ、それよりも体育館だ! 早く行かねーと付いて来れなかったみたいになるだろうが…!」


「体育館に、なにかご用ですか?」


影山が焦りながら日向の頭を引っ叩いたその時、後ろから明るい声が聞こえてきて、2人が同時に振り向いた。そこにいたのは、ポニーテールが印象的な白鳥沢の生徒らしき少女だった。日向がぴゃっと叫んで背筋を伸ばす中、影山は藁にも縋る気持ちで少女に近づく。


「俺ら、男子バレー部の偵察に来たんです! 体育館に案内してくれないっスか!?」


「て、偵察?」


「牛島さんにちゃんと許可は貰ってます!」


「若ちゃ…牛島先輩に? …それだったら、大丈夫なのかな? まあでも、私も今から体育館に行くところだったから、よかったら案内しますよ」


「あざっす!」


「あ、あざっす!」


日向と影山は綺麗に90度頭を下げ、明るい笑顔を浮かべる少女に心から感謝した。早速少女に案内してもらおうと期待の眼差しで見つめていると、少女は持っていたバッグから何やら地図の書かれたプリントを取り出し、周りと見比べ始めた。


「えっと、こっから入ってきて、馬術場に出たから…こっちです!」


「…あれ、白鳥沢の人なんじゃ…?」


「ここ、広くてまだ覚えきれてなくて…。それにさっきまで病院行ってて、近道代わりにそこのフェンス越えてきたんで余計わかんなくて…」


あはは、と笑う少女に、日向も影山も不安になった。しかし、少女はともかくプリントに書かれた地図は信用できるらしく、1分もしないうちに体育館へ辿り着いた。中から聞こえてくる聞き慣れたボールの音に、2人ともホッと息をつく。


「はい、着きました! と言っても、今はみんなロードワークに出てると思いますけど…」


「あざっす!」


「ほ、本当にありがとうございました! 俺、日向翔陽っていいます! 烏野バレー部の1年です!」


「烏野…ってもしかして、あの超速攻の!?」


日向の言葉を聞いた瞬間、目の前の少女の表情が一変する。キラキラとした瞳でずいっと近寄ってきた少女に、日向と影山がたじろぐ。


「インハイ予選見てたの! すごかったです、あの速攻! よく見たらそこの背高い人、あのとんでもないトス上げるセッターじゃないですか!」


「な、なんスか…!?」


「私、あなたたちのファンなんです!」


その言葉が、日向の心にガツーンと響いた。あなたたちのファンなんです、あなたたちのファンなんです、あなたたちのファンなんです…。頭の中で反芻していく言葉に、思わずにやぁ〜っと表情が締まらなくなっていく。


「ぬ、ぬふっ、俺にもついにファンが…!」


「なに気持ち悪い声だしてんだお前」


「う、うっせ! えっと、あなたもバレーしてるんですか!?」


「はい! っていうか、同い年だから敬語じゃなくていいですよ! なんで、私もため口きいていいですか?」


「は、はい、じゃなくて、うん! あの、君の名前は…」


「凛々、何をしている」


ふと体育館の中から、日向と影山の本来の目的である牛島若利が出てきた。ビクッと肩を跳ねさせて反応する日向とは違い、影山は堂々と若利に向き直る。しかし、若利は2人を全く気にせず、自身が凛々と呼んだ少女のもとへ近づいてきた。


「わ…牛島先輩、お疲れ様です!」


「…あぁ。今日は診察だと聞いたが」


「はい! お医者さんから骨折の完治宣言が出たので、急いで戻ってきました!」


「そうか、それは何よりだ。女子もそろそろロードワークから戻ってくる頃だろう。早めにアップをしておけ」


「はい、そうします! …それじゃ、またいつか!」


「あっ…!」


若利に丁寧に一礼した後、凛々と呼ばれた少女は日向と影山に手を振って、体育館の脇に建っている部室棟へと向かった。体育館前に日向と影山、そして若利が取り残され、お互いに静かに睨み合う。そこには険悪さは無いが、異様な緊張感が通っていた。


「遅かったな」


「あのっ! 今の子って…」


「…あいつは小谷凛々。ウチの女子バレー部の1年生だ」


「小谷、凛々…」


凛々が向かった部室棟に、日向が視線を向けた。それを見た若利は、わずかに眉を寄せて日向の眼前に立ち塞がり、自分より遥かに下にある眼を睨んだ。


「お前たちには、関わりのないことだ」













「あれ?」


部室棟に荷物を置き、練習着に着替え終わった凛々は、すぐに体育館に向かうために部室を出た。しかし、部室を出てすぐのところに若利が立っており、凛々のことをじっと見ていた。何か自分に用なのだろうか、さっきの2人はどうしたのだろうか、そんなことを考えながら若利に近づく。


「牛島先輩、どうかされました? 男バレの他の人たち、まだ帰って…」


「凛々」


その声の真剣さに、思わず背筋がぴしゃりと伸びる。若利はゆったりと凛々に近づき、1つに束ねた黒髪をさらさらと手で梳いた。


「牛島せんぱ…」


「いつものように呼べ、今ここには誰もいない」


「…若ちゃん、どうかしたの?」


若利のいつにない真剣な表情に、凛々が不安になっていく。


「お前のいるべき場所はここだ」


「…うん、そうだね。この白鳥沢が、私が今いる場所だよ」


「ここでなら、お前の力を存分に発揮することができる」


「うん。桃ちゃんは私に色々なことを教えてくれる。小鳩さんも巴さんも、みんな私の繋いだボールを繋いでくれる」


「決して、ここから離れるな。あの時のようになりたくなければ」


若利の言葉に、凛々は全身にぐっと力を込めた。消えない記憶、変わらない記憶。それでも、今ここにいることが、全てだ。それは、誰よりもよくわかっている。


「…離れないよ。白鳥沢で、私は戦うって決めたから」


「そうか。ならばいい」


「若ちゃん、どうしたの? なんか変だよ、私なにかした?」


「お前は何も気にしなくていい。…俺もよくわからん、何故こんなことを考えたのか」


「?」


先ほどとは打って変わって、いつも同じ仏頂面になった若利は、足早に体育館の中へと戻っていった。それを追いかけるようにして体育館へ向かうと、別の方向から若利に置いて行かれた男子バレー部の面々、そして小鳩を先頭に走る女子バレー部の面々が体育館へ向かって走ってくる。


「は〜っ、若利君ペース速すぎ…。俺もうクタクタ、帰っていい?」


「いいわけないだろ。ほら、大学生の人たち待たせてるんだから」


「あ、凛々! 怪我、大丈夫だった?」


「はい! 完治宣言出ました、今日からバリバリ練習します!」


「今までもしてたじゃん、ハッキリ言って怪我人なの今日まで忘れてたし」


「よっしゃ、いっちょスパイク練やるべ! 小鳩、トス上げてトス!」


「待って待って、まずはパスで慣らしてからね。さぁ、やろうか凛々」


「はい!」


先輩たちの笑顔を受け、凛々は心からの笑顔を浮かべる。この豊穣な土地で、凛々はバレーをしていく。掃き溜めの鶴はもういない。実り豊かなこの土地で飛ぶ、白鷲がいるのみだ。そのことに、若利は心からの安堵を覚えた。

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