◎ 5/20=ゲスモン生誕祭
5/20
「オッハヨー!! 清々しい朝だネー!!」
「「「……」」」
「あれ? 反応薄くない? もしかして今日が何の日か知らない感じ?」
「いや、知ってるしそれなりの用意もしてある。
だけど本人自ら『本日の主役』タスキを身につけられるとさすがに祝う気も失せる」
「いつの間に買ったんだそんなモン」
「天童さん、今日が誕生日だったんですね! おめでとうございます!」
「んっんー、工は素直でよろしい! 太一と賢二郎、また1つ年を経て成長した先輩に何か言うことは?」
「また1年寿命が縮まりましたね、おめでとうございます」
「16日も天童さんと同い年だったとか寒気がしましたけど、また離れられて安心しました。おめでとうございます」
「待って、年を経るごとに俺の扱い悪くなってない? 泣いていい?」「聞いたぞ覚、今日が誕生日らしいな」
「あっ、鍛治君! なになに、鍛治君も俺のこと祝ってくれんのー?」
「ああ、今日はお前の為だけの特別練習メニューだぞ。前々からお前のスタミナとパワーの無さはどうにかしなけりゃと考えてたからな…。
というわけで今日は走り込みと筋トレ15セット!!」
「えっ」「「「天童、テメエ…!!!」」」
「ということがあったせいで、朝からクタクタなのよー…」
「た、大変だったね…。隣のコートで見てて、阿鼻叫喚の地獄絵図だったもんね…」
「なっさけねーヤツだな! 今日で18歳になったんだからシャキッとしろや!」
「18歳は18歳でもなりたてホヤホヤだから、ヒトカゲからリザードに進化しても技が『ひのこ』しか使えなかったら意味ないでしょーが」
「誕生日をポケモンの進化みたいな言い方をすんなよ」
「でも今日で18歳ってことは、天童はしばらく私たちより年上だね」
「そっか、よくよく考えてみれば、同学年の中だと天童が一番誕生日早いから、しばらくは一番年上ってことになるな」
「そうそう、若利君とか俺より1つ年下になるんだよ! 若利君、若利君の誕生日までは俺が先輩だからね! 俺が『焼きそばパン買ってきて』って言ったら買いに行かなきゃダメだかんね!」
「そうか」
「若利、天童の言うことを律儀に聞かなくていいからな!?」
「そう考えると変な話だよな。あたしの誕生日が11月だからちょうど半年違いだけど、天童が0.5歳の時はあたしはまだ生まれてなかったワケだもんな」
「……」
「なんだよ、急に静かになってどうしたんだ?」
「うっわ、そう考えると俺は半年も、巴の存在しない世界で生きてたってことになるじゃん。なんかそう考えるとめっちゃコワくなってきた」
「なんだよそれ、大げさだな! まだ生まれてなかったってだけじゃん」
「いやいやいや、そこに存在してて当然のものが存在してない瞬間を生きてたって、よくよく考えてみたらコワくない? 巴、頼むから俺が死んだ後に死んでよ」
「もっと別の言い方できねーのかオメーは!」
「そこは『俺より先に死ぬな』とか言えばいいだろ」
「巴、俺より先にし…ぶふっ、ダメだその顔見てると笑っちゃって言えない」
「むっかぁー!! ぜってー天童より長生きしてやる!!」
「…いやもう、ほんとそうして、頼むわ」
(18歳、高校3年生、最後の年。今年でこの楽園ともオサラバ)
(若利君や英太君、空知ちゃんや他のみんな、それから巴とも、卒業したらそれでおしまい)
(…あーあ、最高の1日のはずなのに、ナーバスな気分)
18歳の誕生日ってナーバスになるよねって話。え、私だけ?