◎ 大平監督の企画会議
性懲りもなく映画ネタです。
「さて、期待の新人五色も新しく仲間に加わったことだし、そろそろ大平組も次回作の撮影に入ろうと思うんだが」
「いつも思うんだけど、この映画ネタってどういう世界観なの? バレーは?」
「それを言ったら元ネタからツッコミどころ満載だからな。というワケで企画会議を始めるぞ!」
「えっと、会議メンバーは白鳥沢からは監督の大平くん、脚本の天童、照明の瀬見くん、録音の白布くん、それから出演の私と巴ね。あと他校からは美術の鎌先くんと撮影の西谷くん…ってあれ? 西谷くんは?」
「あ、西谷は俺の作品の追撮(※1)に、赤葦くんと一緒に行ってもらってますんで。代わりに製作を担当することになった俺、縁下が参加させてもらいます」
※1=撮影期間内に撮りきれなかったり、後から付け加えたシーンを、後日追加で撮影すること。「あ、こないだ『CROWS ANGELS』見たよ! めっちゃ面白かった! 次はあたしも出たい!」
「お前は『CROW』じゃないだろ、強いて言うなら『EAGLE』だろ」
「はいはい、話が進まないから感想は後でな。じゃあ会議進行役は白布に任せた」
「わかりました。それじゃあ獅音さんの最新作ですが、企画は既に決定してます。ずばり『五色の主演映画』です」ムスッ
「めっちゃムスッとしてんのね賢二郎」
「スクリーンに写るだけで五億点の空知さんや、役に入り込んだ瞬間のパワーが桁外れの鷲匠さんと較べて、五色はハッキリ言って実力不足ですから。ゴリ押しキャスティングにも程があります」
「お前なぁ…。五色はこれが初めての映画出演なんだし、その辺を支えるのが俺たち裏方の役目だろ。獅音だってその辺のことはちゃんと考えてるよ」
「ますますバレーが迷子になってるんだけど、これなんてSHIROBAKO?」
「で、結局どうすんだー? 俺らは美術作るだけだから、ストーリーとかは専門外だぞ」
「せっかくだから、五色にしかできない役をやらせたいし、五色だからこその映画を撮りたいな。縁下くん、同じ監督としてはどう思う?」
「そうですね…こんな映画はどうでしょうか?」
タイトル『セッション(仮)』
バレーボールに熱中する少年、五色工はバレーの名門、白鳥沢学園バレーボール部の監督、鷲匠鍛治にスカウトされ、単身白鳥沢までやってくる。
ここで成功すれば偉大なバレーボール選手になるという野心は叶ったも同然。
だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれた鷲匠の常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気の練習だった。
浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。五色の精神はじりじりと追い詰められていく。
恋人、家族、人生さえも投げ打ち、鷲匠が目指す極みへと這い上がろうともがく五色。しかし…。
「却下!!! 五色になんて映画をやらせるつもりだお前は!!!」「さ、さすがにそれはちょっとどうかな…。五色くんは白鳥沢に来たばかりで、これから全国に向けて頑張ろうって時なのに、そのストーリーはちょっと洒落にならないっていうか…」
「や、やっぱり重かったですかね…渾身のネタだったんですけど…」
「面白そうだけどな! あたしはその映画見てーぞ!」
「あ、ありがとうございます、鷲匠さん…(ガサツそうな人だと思ってたけど、案外優しいんだな…)」
「縁下カントク〜他にネタないの〜?」ギロッ
「えっ、そ、そうですね…」ビクッ
「そういう天童こそ、脚本担当じゃんか! なんかネタないの?」
「えー? そうダネ〜…せっかくだからバレー関係ない映画とかの方がいいんじゃん? 例えばこんなんとか〜」
タイトル『キック・アス(仮)』
五色工はスーパーヒーローに憧れる少年。
誰もヒーローになろうとしないことに疑問をもった彼は、自分で本物のヒーローになろうと思い立ち、ネットで買ったスーツを着てヒーロー活動を開始する。
あるとき五色は3人組に襲われていた男を救い、その模様を撮影した動画はやがてYouTubeにアップされて話題を呼び、五色は一躍有名人に。
ある日、悪漢に悩まされている女性から連絡を受けた五色は、早速悪漢を退治せんと悪の拠点へ。
だが、そこで出会ったのは、本物のスーパーヒロイン"ヒットガール"だった…。
「却下」
「なんで!? 良くない!?」
「面白そうだけど、俺はアクション系の演出苦手だからなー。あと今は本格アクションをやる予算が無い」
「それに、誰がヒットガールやるんだよ。あれの元ネタって11歳って設定だろ」
「それは若利君の幼馴染チャンとかにお願いすりゃいいじゃん、あの子だったらアクションも大丈夫っしょ?」
「あー、今は外部に出演を依頼できるほど予算無いからな。なるべく身内の中で済ませたい」
「だから何なのその無意味なリアルさ?」
「縁下さんの案なら、そんなに予算をかけずに済むんじゃないんですか? ロケ地は白鳥沢で済むし」
「それだと俺ら美術の仕事が減っちまうじゃねえか! 安く仕上げるから、もうちょっと仕事のし甲斐があるネタにしてくれ!」
「あっ! あたし思いついた! こんなんどう?」
タイトル『デビルマン(仮)』
五色工は、ごく普通の少年であったが、ある日地球の先住人類「デーモン(悪魔)」が復活し、地球を人類から奪い返そうとしていることを知る。
デーモンの超能力を取り入れて戦わなくては人類に勝ち目はない。デーモンと合体し、人間の正義の心がまさればデーモンに心を支配されることはないという。
かくして五色はデーモンと合体し、悪魔の力と人間の心を持つデビルマンとなることに成功する。果たして五色の運命は…。
「みたいな感じ! どうよ!? かっこよくね!?」
「うん、確かにそのストーリーはかっこいい。
ただしそれを実写映画化するのは壮大な死亡フラグだ」
「もうなんか面倒なんで、この企画はポシャった(※2)ってことでいいですか」
「ご、ごめんね五色くん…私にはどうしようもできないかも…」
※2=企画が途中で頓挫すること元ネタ映画解説
@セッション
ジャズドラマーの主人公があらすじ通りの運命を辿る、アカデミー賞受賞した傑作洋画。実はまだ見てない。見たい。
Aキック・アス
クロエ・グレース・モレッツが可愛すぎる新世代のヒーロー映画。アメコミ映画wwwとか思ってる奴はとりあえず見ろ。続編もあるよ。
Bデビルマン
鬱展開でお馴染み傑作漫画。管理人はシレーヌ萌え。えっ、実写映画版? そんなものはなかった。