じゅうまん | ナノ





殺し屋探偵×ルパン三世



イタリアンマフィアの頂点に立つボンゴレファミリーには、隠されたある秘宝がある。


「っていう話知ってた?ルパン」


「久しぶりに会いに来てくれたかと思えば第一声がそれですか、不二子ちゃ〜ん」


「ちょっと、どこ見てんのよ変態。いいから入れなさい、あたしと五ェ門を雨ざらしのままにしておく気?」


時には敵であり時には味方でもある女、不二子は相変わらずのグラマラスボディを見せつけながら、五ェ門を引き連れて雨の降る午前1時きっかりに自分のもとへ訪れた。五ェ門は構わないが、美女を深夜の雨の中に曝しておく訳にもいかない。ルパンは世界中に幾つもある自分の隠れ家に2人を招き入れた。


「おいおいおい何だよルパン、お馴染みの4人で酒盛りやんのか?」


「次元、酒盛りは今度だ。不二子が話があるんだとよ」


部屋の中でバーボンを片手に酒盛りに備えていた次元は、急な来客に驚きの表情を見せた。不二子はルパンが座っていた椅子に勝手に座り、五ェ門は窓の側に寄り掛かった。


「酒臭い、換気をせぬか」


「冗談じゃない、酒に酔いつつ匂いにも酔うのが一流の酒呑みってもんだぜ」


「ルパン、さっさと本題に入りましょ。ボンゴレファミリーが隠してる、秘宝の話をね」


ボンゴレファミリー、それはイタリアンマフィアの頂点に立つ、歴史も権力もある大物マフィアだ。そのボンゴレが所有する宝には、ボンゴレリングという7つの指輪などがあるのだが、そんなものとは比べものにならないほど価値のある、いわくつきの宝を隠しているというのは、腕のいい泥棒達の間では知られた話だ。


「『マルヴァージョ』のことか。悪いが、マルヴァージョについては俺はなーんにも知らないぜ。ボンゴレが必死になって隠してるってことくらいしか」


「おいルパン、俺は知らねぇぞ。何だそりゃ」


「んだよ次元、知らねぇのか?仕方ねぇ、このルパン様の解説をよく聞いてろよ」


わざとらしくゴホンと咳をしてからルパンは語り出した。





マルヴァージョ―――
それはボンゴレ3代目の周りの女達を死に追いやった、呪われた宝石である。


「その宝石を最初に手に入れたのは3代目の妻だった。宝石に目のない妻はもともとマルヴァージョを持っていた婦人を殺してマルヴァージョを奪ったらしい。しかしマルヴァージョを手に入れると、それに魅入られた3代目の娘が実の母親を殺してマルヴァージョを奪い取った。その娘は祖母である3代目の母に殺され、そいつは3代目の部下の女に殺され、そいつは親友であったボンゴレの門外顧問に殺され・・・・・・。さすがにこの異様な事態に気付いた3代目はマルヴァージョをボンゴレが所有する屋敷の地下に封印した。よくある『曰くつき』の宝石さ」


「マルヴァージョ、『毒婦』ってか?とんだレズビアンの毒婦だな」


「ねぇルパン、あたしその宝石が欲しいわ〜。盗んでくれない?」


「冗談言うなよ不二子、なーんで俺がおっかない野郎共の中に泥棒しに行かなきゃならない訳〜?」


「あなた絶対そう言うと思ったから、もう出してきちゃったのよね〜」


「ありゃま〜・・・。・・・ちなみに、何を?」


「予・告・状♪」











「じゃ、あたしはここでネズミが来るのを待てばいいのね」


「あぁ、頼むぞミス。何も殺さなくてもいい、動けないようにするくらいで構わない」


あの大泥棒ルパン三世からマルヴァージョを盗むという予告状が来たボンゴレは、ルパンを捕らえる為に凄腕スナイパー、ミス・ヘイヘことアイボー、そして探偵ことナナシを雇った。最初はアイボーだけが雇われたのだが、怪盗には探偵が付き物だとアイボーが無理矢理ナナシを巻き込んだのだ。


「で、本当にこの作戦でいいのね、ナナシ?」


「大丈夫。ルパンが、私の思い通り動いたらね」


何だかんだで怪盗ルパン三世との対決を楽しんでるのか、ナナシは悪人面の笑みを見せた。


「あなた、ホームズ三世を名乗った方がいいんじゃない?」


「だから私はポワロ派なんだってば」


「あっそ」


アイボーは弾のチェックをした後、瞳が赤い女神像のオブジェを弄り、現れたボンゴレの隠し部屋の中へと脚を踏み入れた。















「ちょっとルパン、他に潜入ルートなかった訳?」


「それがないのよ不二子ちゃ〜ん。ボンゴレの本部って古城だから、潜入できる道には大体罠が仕掛けられててさ〜」


ルパン一行はボンゴレ本部の中枢に繋がる下水道から侵入する為、悪臭漂う狭い道を通っていた。不二子は先程から鼻を摘みながら不平を垂れ流す。美しい物が好きな不二子からしたら拷問に近い仕打ちなのだ。


「おっ、ついたついた。五ェ門、頼んだぜ」


「・・・承知した」


如何にも渋々、といった表情を浮かべながら五ェ門がルパンが指差す天井に向かって剣を構えた。深く息を吐き集中する。


「せいやぁっ!!」


五ェ門の声が響いたかと思うと天井があっという間に斬り裂かれ、刀を鞘に収めると同時に天井がガラガラと音をたてて崩れ落ちた。ぽっかりと開いた穴から少しばかりかの光が漏れている。ボンゴレの地下室に通じる通路が今開かれた。


「またつまらぬものを斬ってしまった・・・」


「はいはい、決め台詞ご苦労様。さ、行くわよルパン!」


不二子は五ェ門を無視してさっさと鈎のついたロープを穴に引っ掛けて地下室へと急ぐ。決め台詞をさらりと流されて肩を落とす五ェ門の肩を次元がポンと叩いた。













「ようやく着いた。あとはこの美人さんをちょっくら弄くりまわすだけだ。そんじゃ、失礼しますよ〜っと」


あらゆるセキュリティをくぐり抜けてルパン一行はとあるオブジェの前に到着した。ブロンズ製の身体に赤く輝く瞳を持つ女神像だ。ルパンは自分の身長より少し低いくらいのその像の足元にひざまずき、ブロンズの服の中に手を突っ込んだ。


「破廉恥な、何をしている!」


「ルパン、お前とは長い付き合いだが、まさか女の形をしてればマネキンでもいけるだなんて初めて知ったぜ」


「ちょっとちょっとなーに勘違いしちゃってんだよ。脚の付け根にダイヤルがあるんだよ。ここをちょいちょいっと回せば・・・」


ルパンが隠れたダイヤルを回すと女神像の後ろの壁が動きはじめた。しばらくすると、行き止まりだったそこに扉が現れる。隠し部屋だ。


「ここにマルヴァージョがあるのね!」


「そういうこと。そんじゃ、先に行きましょ〜・・・」


「待てルパン。その先から、ただならぬ気配を感じる」


扉を開けようとしたルパンを五ェ門が制した。自らが先頭に立ち、剣に手をかけながらゆっくり扉を開ける。扉の向こうは暗闇で、明かりがなければ何も見えない。警戒しながら五ェ門が脚を踏み入れた―――





バンッ!!


「でやぁっ!!」


発砲音がすると同時に五ェ門が剣を一閃した。カン、という音をたてて何かが床に落ちる。2つに斬られた、銃弾だ。


「あら、仕留められなかったかしら」


「あんたは・・・殺し屋ミス・ヘイヘか」


「その声は次元大介ね?久しぶりね、ガンマン」


暗闇の中に女の声が響く。ルパン一行を待ち伏せしていたアイボーだ。ルパンが持参してきた簡易照明で部屋の中を照らす。部屋の中には数々の宝が分別されて置かれており、部屋の奥に立つアイボーの背中に、金庫のようなものが見えた。


「あそこにマルヴァージョが・・・!」


「あら、これを盗みに来たのね。残念だけどこれを守るのが今回のあたしの仕事。悪いけど帰ってもらえるかしら」


「ルパン、ここは俺に任せな。あの女とは一回射撃勝負をしたかったところなんだ」


次元が愛用のコンバットマグナムをアイボーに向ける。アイボーはニヤリと笑った。


「酷いわ次元。あなたを相手にしてたらあいつらに銃を向けれないじゃない」


「女は一途なのが一番だぜ、ミス・ヘイヘ。あいつらは放っておいて俺だけを見てな」


「まあ、とんだ気障男。あなたのそういうとこ嫌いじゃないんだけど、一度受けた依頼はこなさなきゃ信用ってものがなくなるわ」


アイボーは右手に持つ銃を次元に、左手に持つ銃をコソコソと自分の背後に回ろうとしているルパンに向けた。







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