じゅうまん | ナノ
オリキャラセーニャ夢
ナナシちゃん日誌
8月10日。助手のナナシちゃんがセーニャチカに殺される。今回で11回目。
「セーニャチカ、私セーニャチカのこと好きなんですよ」
「僕もナナシちゃんのこと好きだよ。でもね・・・」
「はい?」
「ナナシちゃんの使ってるシャンプーの匂い、殺したくなるほど大っ嫌い♪」
という理由でチェーンソーで頭を真っ二つに切られて死亡。いつも通りクローン技術で生き返らせて記憶のデータを脳に上書きした。定期的にナナシちゃんの記憶をバックアップしなきゃ後々大変なことになるな。
8月27日。ナナシちゃんがセーニャチカに半殺しにされる。半殺しにされるのはもう何回目だろうか。途中で数えるのやめたから忘れた。
「どうですかセーニャチカ?シャンプーの匂い抜けました?」
「うん抜けたー!今度は僕の好きなバニラの匂いだね!」
「セーニャチカの好きなものは何でも知ってますよ。私セーニャチカのこと好きですから」
「じゃあ僕の好きなスポーツは何か知ってる?」
「・・・フィギュアスケート?」
「ぶっぶー!正解はサッカーでしたー!じゃ、ナナシちゃん罰ゲームね♪」
という理由でボコボコにぶん殴られたらしい。ギリギリ生きてたので治療で済んだ。生き返らせるのだってただじゃない。ナナシちゃんは「あんな天使みたいな顔した人の力じゃない」とか言ってた。セーニャチカの力が超重いチェーンソーをぶん回せるほどとんでもないのは知ってるからその情報はいらない。
9月30日。ナナシちゃんが死ぬ。今度はセーニャチカに殺された訳じゃなくセーニャチカをスナイパーの弾丸から庇って死んだ。
「・・・・・・・・・ぁ・・・ちょっと、これはやば・・・・・・」
「ナナシちゃん大丈夫?ナナシちゃんは偉いね。どっかの腰抜けと違ってちゃんと僕の盾になるもんね」
「・・・・・・そりゃ・・・・・・わた・・・・・・あなた・・・・・・こと・・・・・・すき・・・・・・ですから・・・・・・」
「うん、偉い偉い。いい子いい子してあげる」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ?死んじゃった。誰かー、誰かドクトル呼んできてー」
出血多量で死んだがいつも通り生き返らせた。何で死んだかを説明すると「セーニャチカが無事でよかった」と胸を撫で下ろしていた。後日セーニャチカから褒められたらしくナナシちゃんは喜んでた。本人がいいなら別にいいけど。
「ドークタル、被験体63が中毒症状を起こしました」
「ドラッグDを投薬、拘束もしておいて」
「わかりました」
このしょっちゅう私の雇い主、セーニャチカに気まぐれで殺されるナナシちゃんは普段は私の助手をしている。私はクローン技術の研究をしてて、昔は2人で普通に研究してたけど昨今は人権がどうたらとか命の価値がどうたらとかくだらない連中がうるさいので、そういうのから逃げて今はセーニャチカ率いるロシアンマフィアのキーテジの援助を受けて違法な実験を色々と試してる。
「はーい、暴れない暴れない。足にベルト巻くよー」
ナナシちゃんは優秀な助手だ。人に褒められるような性格をしていない私にもついて来れるし、何より真面目だ。いっつもだるそうにしてるから誤解されがちだが、しっかりと仕事はする。そして最近は、仕事以外のあることにも気合いを入れてる。
「じゃ、休憩なんで私行ってきます」
「またセーニャチカに求愛行動か。懲りないね、ナナシちゃんも」
「だって私、セーニャチカのこと好きですから」
何故かナナシちゃんはセーニャチカのことがすごく好きらしい。はっきり言って、何であんな人を好きになれるかわからない。セーニャチカはそれはそれは美しい天使のような可愛らしい外見だが、本性は悪魔そのものだ。私のクローン技術をいいことに気まぐれで自分の側近やナナシちゃんをぶっ殺して、また生き返らせる。正確には生き返らせるんじゃなく、クローン人間を新しく作ってバックアップした記憶を真っ白な脳に上書きしている。殺人はセーニャチカにとってはテレビゲームみたいなもので、ようするに娯楽なのだ。そんな娯楽に付き合わされるのがそれ用に作ったセーニャチカの側近とセーニャチカを好きだというナナシちゃんという訳。私も研究の為なら何人もの人間を生き地獄に突き落としたりしたけど、セーニャチカよりはまだ人間らしいと思っている。
「仕方ないです。好きになってしまったんですから」
ナナシちゃんは何回殺されようと半殺しにされようと、変わらず好きだと言い続ける。
「セーニャチカの笑顔を見れるなら、いくらだって殺されますよ」
ナナシちゃんは、笑顔で言った。
「私、セーニャチカのこと好きなんですよ」
好きになったきっかけは忘れた。そもそも殺される度に一回は記憶をなくして、バックアップしておいた私の記憶データを上書きするだけという実に雑な処置方法なのだから、所々記憶も抜けてたりする。でも、何度生き返ってもセーニャチカを好きだと思う気持ちだけは、不思議と残っている。
「セーニャチカ、こんにちは」
「あれ、ナナシちゃんだ。もう生き返ったの?」
「はい、おかげさまで」
「ふーん・・・」
セーニャチカは天使そのものの笑顔で私を見た。相変わらずの美少年ぶりだ。私はセーニャチカより5歳ほど年上だが、それでもセーニャチカの美しさには思わず平伏しそうになる。こんなに美しい人間、私は見たことがない。
「ナナシちゃんはどうして僕が好きなの?」
「さぁ、どうしてでしょう。私にもわかりません。でも好きなものは好きなんです」
セーニャチカは私がそう答える度に満足そうな笑みを浮かべた。この人は、愛に飢えていながら愛を馬鹿にしているのだ。この人はかつて全ての愛を奪われたと、ドクトルは言っていた。セーニャチカが唯一愛するものはとうに失われたのだ。
「僕のことをいつまでも変わらず好きって言ってくれる人、ナナシちゃんと死んだママぐらいしかいないよ」
「じゃあ今では私独りだけですね」
「そうだね」
今現在、私はセーニャチカにとっての唯一だという事実は私を喜ばせた。この人に残ったのは、キーテジという組織と周りからの畏怖の視線、殺人の快楽だけなのだ。私はそれでも、この人の元に残り続けたい。
「・・・ナナシちゃん、賭けしない?」
「賭け?」
「そう♪簡単な賭け」
セーニャチカは金色の髪をなびかせて笑う。モスクワの冷た過ぎる風が肌を突き刺した。
「期間は僕が死ぬまで。僕が死ぬまでナナシちゃんは僕を好きでいられたら、ナナシちゃんに僕が遺したもの全部あげる。でも僕が生きてる間にナナシちゃんに僕より好きな人ができたら、ナナシちゃんは一生僕の奴隷。どう?」
「いいですよ、私にマイナスなことがないですし」
「・・・ふふふ、いつまでそう言ってられるかな」
セーニャチカは僅かに翳りが見える笑顔でそう言った。
「大丈夫ですよ、セーニャチカ」
「・・・何が?」
「私はセーニャチカに逆らうことなんて、できませんから」
あなたはまだわかっていない。私があなたのことをどれだけ好きか。好きでもない奴に何回も殺されて平気な奴は、いない。
「だってセーニャチカ、私セーニャチカのこと好きなんですよ」
私は何度殺されようと、同じ言葉を吐き続ける。
匿名様からのリクエストを書かせていただきました。リクエストありがとうございました!