じゅうまん | ナノ





護って!現人神様の続編



はじめまして。私の名前はナナシ、戦国時代に生きるしがない農民の娘です。いや、本来は平成生まれのただの女子高生だったんですが、ある日眼が覚めると戦国時代生まれのナナシという女性に成り代わってしまったんです。まぁ、今更過ぎたことをどうこう言っても始まらない。農民は農民らしく平凡に生きて死んでいくはずだったのですが・・・・・・


「現人神様、おらの畑で出来た大根さどうぞ!」


「現人神様、今日はカツオが大漁だったんでさぁ!是非お納めくだせぇ!」


「いやあの、私現人神じゃないんで、供物とかほんと大丈夫なんで!」


・・・何故か私、この世界の方々に『現人神』として奉られちゃってるんです。












「ナナシ殿!よくぞ参られた、さあこちらへ!」


「すみません幸村さん、わざわざ出迎えてもらって・・・」


「何をおっしゃるか、某真田源二郎幸村、現人神ともあろう方にお目通りするのも恐れ多いでござる!頭を下げるはこちらの方故!」


いや、私現人神じゃないんです。何度説明しても無駄だったので今更言いはしないが、ここまでくると本当は現人神じゃないとわかった時が怖いなぁ・・・。
昔、溺れて死にかけた近所の子供を心臓マッサージや人口呼吸で蘇生させた結果、何故か私は現人神だったという噂が日本中に出回った。更にはそれを聞き付けてやってきた戦国武将達を色々なミラクルでやっつけてしまい、全国の武将さん達に一目置かれる厄介な立場になってしまった。この幸村さんも「手合わせ願いたい!」と私のところに来た結果、何故か起こった地盤沈下に巻き込まれて結果的に私が勝ったということになってしまった。いやいや、あんなのただの奇跡なんですけど・・・。


「遅いぞ現人神!!早く位置に着け!!」


「急かすな、三成。よう来たな生き神、そこの茶菓子でも食らえ」


「おう、現人神!久しぶりじゃねぇか!相変わらずちっけえなぁ!」


「あはは、久しぶりです皆さん・・・」


私は乾いた笑い声を零しながら西軍の軍議室に入った。
何ヶ月か前にどこからか私の噂を聞き付けた三成さんが私を力付くで西軍に入れようといきなり襲ってきて、咄嗟にしゃがみ込んだら何故か私の背後から全速力で飛んできた鳥の群れ(しかも大型)が三成さんに直撃するというミラクルが以前起きてしまった。その後刑部さんに正式に西軍にスカウトされたのだが、拒否したら無理矢理拉致られかけた。頼むから拉致は勘弁してくれと言ったら何故か西軍に正式加入したことになってしまったのだ。とにかく、私は一応西軍の一員だということで軍議があると脅され・・・ゴホンゴホン、呼ばれて大阪城に来る。


「して真田、アレは撒いてきたであろうな」


「ご安心なされよ毛利殿!この幸村、与えられた任をしかとやり遂げ・・・」


「あー、お取り混み中悪いんだけど。アレがすぐそこまで来てます」


「何っ!?」


急に佐助さんが天井からぶら下がって現れた。アレ?アレって何だ?東軍の忍さんとかかな?


「あーっ!みんなこんなところにいたのぉ?」


「ゲッ・・・」


「んもう、みんな美夜ちゃんのことほったらかしにしてぇ・・・。もうほんとに怒っちゃうぞぉ!」


・・・あれ、どこかで見た顔にどこかで聞いた喋り方。あの人は確か、前に元親さんにべったり抱き着いてた、自称天女さんだ。って何でこんなところに?


「はいはい天女サン、今から軍議だから出ていってくださいねー」


「もう佐助っ!他人行儀!美夜ちゃんって呼んでって前に言ったでしょお?」


「はいはいわかりました天女サン、大将達の邪魔になるからとりあえず出て・・・」


「何でぇ?三成、私役に立つよ?何たって私、天女なんだから!」


・・・何か前に見た時より可愛こぶりっ子に磨きがかかってる気がする。凄いなあの着物、丈は鶴ちゃんの着物より短いしフリルだらけだし、何より超ピンクだし。一体どこで仕入れたんだろう・・・。


「黙れ、喋るな、口を開くな!貴様の顔を見ていると反吐が出る!」


「ちょ、三成さん、ここで抜刀はやめてくださいよ。今私の顔スレスレに刀が・・・」


「・・・ん?あんた、どっかで・・・」


あ、やべ。私の存在に気付かれた。せっかく幸村さんの背中にいい具合に隠れてたのに。いや、前に会った時から大分時間も経ってるし覚えてないでしょ。


「・・・あっ!あんた、あの時の・・・!」


覚えてたー・・・。とりあえず幸村さんの背中に隠れとこ。「そのように密着するのは破廉恥でござる!!」とか言ってるけど気にしない気にしない。私の命の危機なんです。


「生き神、知り合いか?」


「いや、皆さんこそ・・・お知り合いなんですか?」


「そのような訳なかろう。ソレはいつぞやに長宗我部が連れてきた」


「連れてきたんじゃねぇ、知らねぇ間に着いてきてやがったんだ!」


・・・やっぱり元親さんか。それでいいのか戦国武将、気付かない内に着いてきてたって・・・。


「駄目よ、みんな騙されちゃ!そいつは現人神なんかじゃないわ!」


「なっ!?何を申されるのでござるか!?」


「いい加減なこと言ってんじゃねぇ!!テメェ前にも同じようなこと言いやがって・・・」


いや、本当に私現人神じゃないんですってば。


「そいつは現人神と自称して金儲けするペテン師なのよ!そいつに騙されたって人と何人も会ったわ!」


・・・いやいや、金儲けなんかしようとしてません。皆さん勝手に供物と称して作物とかをくれるだけで・・・ちゃんと私も貰ったのを料理して皆さんにおすそ分けしてますし。第一、私は現人神と自称したことは一回もありませんし、むしろ否定してますし。


「ね、三成!早くこいつを追い出して・・・」


「私に触れるな!!」


あ、三成さんが天女さんを突き飛ばした。いくら何でもいきなり腕を掴まれたぐらいでそんなに強く突き飛ばさなくても・・・。天女さん壁まで飛んでいきましたよ。


「ヒヒヒ、我らはこの生き神の成す業をこの眼で見ておる。それを見ておきながらぬしを信じよというのは、どう抗ってもできぬなぁ」


「くだらん。長宗我部、貴様が蒔いた種よ。貴様が刈り取れ」


「とは言ってもよぉ・・・」


元親さんが困った顔をした。何だかんだ言って優しいから天女さんの処遇に困ってるんだろう。追い出しても追い出しても戻ってくるって、いつだか言ってたしなぁ。


「あれー?天女さん動かないけど。凶王の旦那、殺しちゃったんじゃない?」


「あの程度で死ぬ訳がないだろう」


天女さんは壁にもたれ掛かったまま動かない。大丈夫かな、まさか打ち所悪くて意識不明、とか・・・。


「あの、大丈夫ですか?」


私は天女さんに恐る恐る近付いて肩を軽く叩いてみた。


「ナナシ殿、危のうござる!!」


「え?」


幸村さんが叫んだから何かと思えば、急に後ろに引っ張られて倒れ込んだ。引っ張ったのは元親さんだ。状況が飲めなくて目の前の天女さんを見たら、手に刃が剥き出しの匕首を握っていた。


「え、ちょ・・・」


「みんなをたぶらかす悪魔め、殺してやる!!」


「うわ、あぶな・・・」


天女さんが匕首を振り回した始めた。危ないですって、刃物は振り回しちゃ駄目ですよ。思わず眼をギュッとつぶった、その時―――





「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


・・・あれ?私のじゃない悲鳴が聞こえる。私はきつくつぶっていた眼を開くと、天女さんがとんでもないことになってた。


「何よこれっ!!!離れて、いやあっ!!!」


天女さんの足元からたくさんのネズミがよじ登っていた。まるで天女さんの動きを封じるように、匕首を持った右手目掛けて凄い速さでよじ登る。天女さんはパニックになってネズミを身体から剥がそうとしているが、剥がしても剥がしても次から次へとよじ登ってくる。何だかディ○ニー映画みたいだな、とかのほほんとしたことを思った。


「はははっ、すげーな現人神!お前がやってるのか?」


「え?いや・・・」


「ヒヒヒヒヒ!!ぬしもなかなか面白い真似をする!!」


「ちょ、あの・・・」


「うおおおお、さすがでござるナナシ殿!!某も精進致す!!」


「あ、その・・・」


「あははー凄いことになってるねー。あとは俺様が何とかしておくから大将達は一旦お茶でも飲んでくれば?」


「仕方あるまい。畜生に塗れのたうちまわる醜女の踊りなど見たくもないわ」


「フン、行くぞ刑部!」


「あいわかった。ほれ生き神、早に参れ」


「え・・・あ・・・はい・・・」


・・・ますます誤解されてる。天女さんすみません、私がやった訳じゃないんです。本当ですよ。


「行くぞ現人神!」


「うわっ!」


元親さん、私を俵担ぎするのやめてください!第一、私は現人神じゃないんですってば!













匿名リクエスト。リクエストありがとうございました!







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