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プレゼント




「なァチョッパー、おめェ欲しいものあるか」
「え?」
しばふ甲板のちょうど中央に置かれたもみの木を背に、大小様々なプレゼントに囲まれているチョッパーは不思議そうに首を傾げた。ブルックより頭一つ分ほど大きなもみの木は、ウソップが作った飾りのおかげでとても賑やかに見える。そのクリスマスツリーのてっぺんには、大きな星が月明かりに照らされて輝いていた。器用なモンだなと、サンタやトナカイの形を模した飾りや、ルフィにかじられてしまった飴細工を眺めて素直に思う。

「プレゼントならたくさんもらったぞ!」
チョッパーは楽しそうにエッエッエッと口元を蹄で覆った。チョッパーの誕生日兼クリスマスパーティーは大いに盛り上がり、つい先ほどルフィが潰れたのを機にお開きになったばかりだった。チョッパーがプレゼントの箱を一つ開ければ、ロビンからだろう、分厚い本が一冊入っている。医療の本だというそれを手にとって、ゾロが怪我しても大丈夫なようにおれもっと勉強するからな!とチョッパーは声高に宣言した。それから慌てたように、でもムチャはするなよと窘められて思わず苦笑を零す。

「んなことより、他に欲しいモンはねェのか」
「おれ、ゾロからもプレゼントもらったぞ?」
「それは誕生日プレゼントだろ」
チョッパーの向かいにしゃがみ込むと、大きな帽子越しに頭を撫でる。風が吹いて、クリスマスツリーの飾りが音を立てて揺れた。シャンシャンと鈴が音を鳴らし、サンタでも来そうだなとチョッパーと空を仰ぐ。すると、視界に明るい金髪が映った。かと思えば、すぐにぐるぐると巻かれた変な眉毛が顔を覗かせる。おりゃ、と頬を両手で覆われて、あまりの冷たさにおわっと声を上げた。洗い物を済ませてきたのだろう、その手は氷のように冷え切っている。

「おれたちがお前にやりてェのはクリスマスプレゼントだ」
「サンジ!」
頬から手が離れていくと、同じようにしゃがみ込んだコックは背中に張り付いてきた。そういうことだとコックの言葉に頷けば、理解できずにいるチョッパーは大きな目をぱちぱちと瞬かせる。その愛らしい姿に口端を上げると、コックも楽しそうに身体を揺らした。

「言うなれば、おれたちゃサンタクロースだな」
青鼻のトナカイでちょうどいいじゃねェか。なぜか得意げに聞こえる声色に呆れながら、赤鼻のトナカイの間違いじゃねェかと鼻で笑う。言ったあとで赤も青もたいした違いはねェかと肩をすくめた。しばらく状況が掴めずにぽかんとしていたチョッパーは、サンタか!とすぐに目を輝かせてみせた。

そして、プレゼントについて考え込んでしまったチョッパーの鼻先に白いものが落ち、すぐに姿を消した。空を見上げて、雪かと納得がいく。どうりで冷えてきたはずだ。肩に置かれていたコックの腕が首に回って、寒ィと言いながらますます身体を密着させる。チョッパーはそんなおれたちを見上げながら、顔を赤くしてどこか言いづらそうに帽子を目深に被ってしまった。

「おいチョッパー、なんでも言っていいんだぞ」
もじもじと本で顔を隠してしまったチョッパーに、コックが背後で首を傾げるのが分かった。おそるおそる顔を上げたチョッパーの顔を二人で覗き込む。


「あ、あのな、おれもサンジがゾロをぎゅーってするやつ、二人にされてえなあ…」
徐々に小さくなっていく言葉尻に耳を傾けながら、目を丸くする。チョッパーはダメならいいんだ!と落ち込むように俯いてしまった。コックとまじまじと顔を見合わせると、堪えきれず二人で吹き出してしまう。笑うなよ!と頬を膨らませたチョッパーの頭をもう一度撫で、お安いご用だと笑いながら告げる。ぱあっと目を輝かせたチョッパーを抱え上げると、ぎゅっと腕の中に抱きしめた。

「あ、ずりィぞゾロ! おれも!」
背中にべったりと張り付いていたコックは慌てて離れると正面に回り込んだ。チョッパーとひとまとめに抱きしめられて、なんでおれもだと文句を言えばにやりと口端を上げるだけで簡単に交わされてしまう。あったけェなァ、そう呟いたコックの言葉に大きく頷いたチョッパーは、なんだか心までぽかぽかするぞと笑った。そんなチョッパーの姿に笑みを浮かべると、抱きしめる腕に力をこめる。確かにあったけェ、そう呟くと甲板は雪に覆われて白く染まりはじめた。

「今日は親子三人、川の字で寝るか? な、チョッパー」
「誰が親子だ…」
「エッエッエッ! ならサンジはお母さんだな!」
チョッパーの言葉に、そりゃァいいと声を上げて笑った。バカ言え!おれはお父さんだろ!と憤慨するコックにますます腹を抱える。チョッパーも楽しそうに笑いながら、コックから逃がれるように腹にしがみついてきた。庇うようにチョッパーを抱え込みながら二人で笑い続ける。コックは拗ねて唇を尖らせると、てめェは笑いすぎだと抱きしめる腕にますます力を込めてきた。苦しいと笑うチョッパーにざまあみろと、言葉とは裏腹にコックは優しく微笑む。

「おれ、こんなに幸せな誕生日はじめてだ!」
「そりゃァ何よりだ。な、オカアサン」
「だーっ、うるせェ! だからてめェはクソマリモなんだよバーカ!」
こんなガラの悪い母親は嫌だな、と眉を寄せてチョッパーと目配せをする。こうなりゃラブ攻撃だ!と声を荒げたコックに突然頬を覆われて、額に唇を押しつけられた。咄嗟のことに反応ができないでいると、コックは同じようにチョッパーの頬に唇を落とした。キャッキャッと騒ぐチョッパーは、おれもゾロにちゅーするぞと飛び上がる。そうして、当たり前のように次はおれの番だと二人にキスをねだられて思いきり顔をしかめた。

(20121226)


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