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甘いしんぞうに溺れたい




「なにしてやがる」
「なにって……確認?」
首を傾げながらゾロの両胸に這わせていた手に力をこめた。弾力のある感触に遅れて、少し速いリズムを刻む鼓動がてのひらから伝わってくる。ますます逞しくなった身体つきにムラっとしたのもつかの間、顔を真っ赤にしたゾロに両手を叩き落されてしまう。コックの手になんてことしやがる、と茶化すように文句を言えばきつく睨み返されてしまった。

硬すぎもせず、かと言ってレディのように柔らかいわけではない胸の感触を思い出しながら手持ち無沙汰になった両手を何度か開閉する。すると、それを見ていたゾロはハッとした顔をして襟を掴むと大きく開いた胸元を慌てた様子で隠してしまった。恥じらう乙女のようなその仕草に腹を抱えて笑えば、今度は怒りで顔を赤くしたゾロの手が刀の柄に伸びるのが見てとれる。

「ぶった斬るぞてめェ!」
「ばっか、お前なァ、恋人のおっぱいがでかくなってりゃ誰だって心配になるだろうが」
知らねェ傷も増えてるしよ、とは口に出さず左目の傷から視線を逸らす。呆気に取られたように目を丸くしたゾロは、アホかとかエロコックだとか口々に罵詈雑言を飛ばしてきたが、それに乗らずにいるとしばらくして困ったように口をつぐんだ。さっきからゾロの行動がいちいちかわいくて仕方がないと口端を上げる。ベッドを置くスペースしかない連れ込み宿の壁に背を預けているゾロの顔のすぐ脇に手を這わせると距離を詰めた。そうして、また無防備に顔を覗かせている胸元へ空いている手を滑り込ませる。

「てめェも、おれがどれだけ成長したか知りたくね?」
「興味ねェ。…離せバカコック」
「へェ、そりゃ残念」
胸を撫でるようにして手を動かせば、やめろと手首を掴まれてしまった。ぴたりと身体を密着させてわざと胸の突起を引っ掻くと相変わらず敏感なゾロの身体が反応を示す。それに気をよくしながら、文句を言おうと開かれたゾロの口を塞いだ。突然呼吸を奪われたことで次第にゾロの鼓動が速くなっていくのを、てのひらから直に感じ取る。

柔らかい唇に触れた途端、愛しさで胸がいっぱいになった。しまいには、ゾロの鼓動を感じる暇もないほど甘い舌を味わうことに没頭していく。
口づけに応えはじめたゾロの手が手首から離れたとき、突然肩を押され思いきり突き飛ばされた。そのまま真後ろのベッドに倒れ込む。固いマットはあまり衝撃を吸収してくれず、スプリングが大きく軋んだ音を立てた。思わずなにしやがる!と怒鳴り声を上げたとき、そのままベッドに乗り上げ覆い被さってきたゾロに唇を塞がれてしまった。驚きに目を見開いている間にネクタイを引き抜かれる。


「そんなにおれの存在を確かめてェなら、もっとてっとり早い方法があるんじゃねェの」
てめェだけだと思うなよ、と拗ねたようにシャツのボタンに手をかけるゾロを呆然と見上げる。そんな中でも、ゾロの手によって己が露わにされていくことに確かな興奮を感じていた。たまらなくなり、ゾロの首に腕を回すと無理矢理胸元へ引き寄せる。二年間、自分の不甲斐なさに押し潰されそうだった。好きだ、愛してる、生きていて本当によかった、そう一気にまくし立てたかったが、なぜか言葉にならなかった。そのかわりにぎゅうぎゅうとゾロを抱きしめる。腕の中のゾロは随分と大人しかった。まったくおめェには敵わねェよ。やっと口をついた言葉に、ゾロは今更だろとやたら楽しそうに咽喉を鳴らした。

(20121002)


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