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Poison




腹の虫が盛大に音を鳴らしたのを機に鍛練を一区切りさせてダンベルを置いた。タオルで汗を拭きながら窓の外を見遣ると、煙突から立ち昇る煙を確認して梯子を下りる。

「おう、夜食出来てるぞ」
用意してやるから待ってろと棚から皿を取り出すコックを尻目にカウンターに座る。途端に香るうまそうな匂いに鼻を鳴らしたとき、酒と一緒に海の幸がふんだんに使われたチャーハンが目の前に置かれた。酒に手をつけるより先にスプーンを握ると、カウンター越しにコックが喉を鳴らす。

「次の食卓に気ィつけろって言っただろ」
にやりと人の悪そうな笑みを浮かべるコックに首を傾げるが、そういえば魚人島を出るときにそんなことを言ってたなと頷いた。香辛料の香りが湯気と共に立ちのぼり、我慢出来ずにいただきますと両手を合わせる。

「毒入ってんぞ、って言ってんだ」
くわえていた煙草に火を点けると読めない表情でそう言い放った。一分の狂いもなくきれいに盛られたチャーハンを不躾にスプーンで掬うと、すぐに口元まで運ぶ。

「毒でもカミソリでも消化してやる。そう言ったはずだ」
相変わらずうめェなと口いっぱいにチャーハンを頬張ると、コックは不満げに舌打ちをした。気に食わないことがあれば"悪魔風"だとかいう激辛料理を出されるのが常だが、今回は随分まどろっこしいことをするものだと面倒に感じる。当たり前だが、最後の一口を飲み込んだところで身体に異変は見られなかった。

「あーあ、全部食っちまって。知らねェぞ」
「てめェが料理にんな小細工するワケねェだろうが」
酒瓶を傾けて一気に半分ほど酒を呷ると、コックは無言で空になった皿を下げた。カウンター越しに酒瓶を奪われて睨みつけると、無理矢理隣に腰をかけてくる。

「そろそろ効いてきたかよ」
「まだ言ってんのか、てめェは」
煩わしく思いながら頬杖をついて、珍しく酒を呷るコックに視線を向ける。一体なんの毒だってんだと喉を鳴らしたとき酒瓶を突き返されて、不可解な男の行動に眉を寄せる。


「惚れ薬」
「…はァ?」
「そろそろ、惚れてきただろ?」
「ハッ、今更効くかよ」
口には出さずにアホめと悪態をつくとあまり減っていない酒を呷った。全くムカつく野郎だとため息を吐いて、コックから視線を逸らす。

「ふうん。今更、ねェ…」
嘲笑を含む男の声に顔を上げて、ニヤつくその顔を見た瞬間、失言に気づき息を詰まらせる。言い訳を考えている内に唇を塞がれてしまい、口を開けろと舌先でノックされる。こうなってしまったらもうどうすることもできない。誰にともなく言い訳をして目を閉じると、素直に口を開いた。


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