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はなかんむり




春の陽気にゆっくりと目を瞬かせた。白詰草で覆われた丘に腰をかければ独特の青臭さが鼻を抜ける。隣で気持ち良さそうに眠る男を見遣ると足元の白い花を根本から摘んだ。ガキの頃、好きだったレディとよく作っていた。一本一本、その花を編み込んでいく。

「器用ね」
ロビンちゃんは本を閉じると、興味深そうにまだ形にもなっていない花かんむりを覗き込んだ。素直にありがとうと告げればロビンちゃんは小さく微笑み、未だ手の中の花束を眺めている。謎を見つけたときの彼女はまるで少女のようで、その姿はとても魅力的だった。

「ロビンちゃんも一緒にどう?」
「そうね、楽しそうだわ」
ロビンちゃんはその場に本を置き木陰から立ち上がった。すぐ隣から香り始める甘い花の芳香に笑みを浮かべまた白詰草を摘む。口頭で作り方を教えるとロビンちゃんが見やすいよう手を差し出して、また茎を編み込んでいく。たどたどしくそれを真似たロビンちゃんはすぐに花かんむりを作ることに熱中した。その愛らしい姿から目を逸らして黙々と花を摘み続ける。しばらくして完成した花かんむりを雲一つない青空に翳した。

「これはロビンちゃんに」
艶のある黒髪の上に花かんむりを被せると、一度目を丸くしたロビンちゃんはありがとうと花のように顔を綻ばせた。その美しさに当てられながらとてもよく似合うよとそっと囁く。

「じゃあこれはあなたに」
ロビンちゃんは手の中の花かんむりを少し上げると不格好でごめんなさいね、とそれを頭に乗せてくれる。目をハートにしてロビンちゃんからこんな素敵なものをもらえるなんて幸せだァと天に向かって叫ぶと、すぐ隣で眠っていた男が大きな鼾をかき始めた。突然のことに面を食らってわざとらしく肩をすくめるとロビンちゃんと顔を見合わせる。美しい景色とはそぐわない豪快な鼾の音に我慢出来ず二人で声を上げて笑った。

途端に太陽の日差しが強くなり、じわりと汗が滲む。ネクタイを緩めて煙草に火を点けると新しい花かんむりを作っているロビンちゃんの手元を覗き込んだ。コツを掴んだのか簡単に作ってみせたそれを手渡され、立ち上がったロビンちゃんを見上げると首を傾げる。


「それは剣士さんに、あなたから」

気がつけば丘の上から仲間たちの姿は見えなくなっていた。手の中の花かんむりを眺め、参ったなと赤くなった頬をかく。寝ている男の頭にそれを被せると似合わねェなァと一人笑った。可憐なレディとは似ても似つかない。未だ鼾をかき続ける男の鼻を軽く摘むと、襲うぞクソマリモと空に向かって吐き捨てた。

(20120418)


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