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はじめましてかみさま




(現パロ)


「初詣行こうぜ」
仰向けで裸のままベッドに沈み込み、心地良い睡魔に呑み込まれてしまいそうなときシャワーから戻ってきたエースに叩き起こされた。
だりい、と自分でも驚くほど掠れた声でそう言えばエースはニヤニヤと笑い背中を指でそっとなぞってくる。その手を振り払うが、この男には何も通用しない。

「お前が嫌なら俺はこっちでもいいんだけど」
「…シャワー浴びてくる」
一人で大丈夫?と笑いを含みながら耳元で囁かれ背中が粟立った。悪態をつきながら顔を押し返せば楽しそうに声を上げて笑われて、憤りを隠せないまま風呂場に向かう。

シャワーを浴びてリビングに戻れば、テレビからあけましておめでとうございますと浮かれて騒ぐタレントの声が聞こえてくる。それを聞き、あまり実感も湧かないまま年が明けたことを知った。


「あけましておめでとう、ゾロ」
「おう。おめでとう」
テレビを消してソファから立ち上がったエースにそう答え、ジャケットをクローゼットから取り出すと外に出る。吐く息が随分と白い。

神社に行くんだったよなと道程を頭の中に思い浮かべ歩きはじめると、いきなり手首を捕まれてエースは神社のある方向とは正反対の道を歩きはじめる。不思議に思い首を傾げるがエースは腕を掴んだまま、うははと笑ったきり何も言わなかった。突き刺すような寒さに身を竦めながらも捕まれた腕が熱くなる。離せとはどうしても言えずに無言で歩き続けた。すると先の見えない行列と、遠くに鳥居が見える。

「ああ、近道だったのか」
真逆に歩き出した理由がやっと分かって一人頷くと、エースはついに腹を抱えて笑い出した。その姿にムッとしながら離れた手をポケットにつっこんで唇を尖らせる。

「すげ…ふはっ、人だなァ」
「なに笑ってんだよ」
「ごめんごめん。なんでもねェから」
とりあえず並ぼっかと笑いすぎて涙さえ浮かんでいる目を擦りながら行列に並ぶ。やっと賽銭箱が見えてきた頃には年があけて一時間は経とうとしていた。

「手ェ繋ごう」
「バカか。人いるだろ」
「誰も見てねェって」
間延びしたため息を吐くとポケットから手を取り出した。エースは自ら言い出した癖に照れたように笑い指を絡める。やばいキスしたくなってきたと笑う男の頭を殴ったとき、少しだけ行列が前に進んだ。


「今年もよろしく。ずっと一緒にいてくれな」
「当たり前だ」
「どうしよう俺神に祈ることなくなっちまった…」
エースの言葉に呆れるが、じわじわと顔が赤くなっていくのに気づきそれを隠すように夜空を見上げる。帰ったらもっかいしたい、と耳元で囁かれたそれを無視して繋いだ手に力を込めた。

(20120102)


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