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エタノール心中




「呪われた聖剣」のその後のお話。ネタバレを含みます。





「やあっと起きたか」
重たい瞼を無理矢理開ければ人の顔を覗き込んでいるルフィと目が合った。しししと嬉しそうに笑うルフィをしばらく見据えると、ソファに寝ていることに気づく。身体を起こすため軸にした左手に激痛が走り、その瞬間自分が寝ていた理由や左手を貫通した刀のことを思い出した。

「ゾロは何があってもおれから離れられねェぞ」
離れようとしたって離さねェ、そう囁かれて唇に触れるだけのキスをされる。カサカサだと笑われてぺろりと皮の剥けた唇を舐められた。

「悪かったな」
「それはおれにじゃねェ」
「そう、だな」
「約束に縛られるところがゾロのよくないところだぞ」
でも海賊王の隣には大剣豪っていう約束は守ってもらわなきゃ困るなあ、どうしたものかとルフィは首を傾げるがすぐに考えることを諦めたのかそのまま強く抱きしめられた。すぐにその手は離されてルフィは梯子をのぼって甲板に出る。
おれだってルフィと離れたくはない。

「みんなー!ゾロが起きたぞー!」
左手を庇うようにして立ち上がり、甲板に出るとすぐさまナミにどやされた。クルー全員に悪かったと頭を下げる。裏切ったおれをそれでも仲間たちは受けいれてくれるのだろう。クルー全員に視線を向けてからその中にコックがいないことに気づいた。

キッチンの扉をそっと開ければ、シンクに身体を預けて煙草を吸っているコックと目が合った。なんと切り出せばいいのか分からないまま口を開くと、それを遮られる。


「謝ったら蹴り殺す」
その言葉に俯いて唇を噛む。震えた声で腕は、と問いかければ未来の大剣豪様が手加減してくれたおかげで薄皮一枚切っただけだから平気だ、とくぐもった声で言われた。それに返す言葉も見当たらない。
コックは煙草をシンクに投げ入れたかと思うと、そのまま胸倉を捕まれて壁に叩き付けられる。

飛んでくると思った蹴りはいつまで経ってもやって来ず、至近距離にいるコックの顔を見ることができない。何か言わなければと口を開いたとき、いきなり舌を差し込まれた。長い間歯列をなぞられて逃げる舌を何度も絡め取られる。息苦しさのあまり男のジャケットに縋っていた手を焦りながら離すと、包帯の巻かれた左手を捕まれて掌に口づけられた。


「絶対に許さねェ。何年も何十年も罪悪感に付き纏われて、一生おれを忘れなければいい」

そう言った張本人が今にも泣き出しそうに顔を歪めていて、声に出さずにコックと名前を呼べばまた唇を奪われる。抑えつけてくるコックの腕に巻かれた包帯を見て、ぎゅっと目を閉じた。

(20111116)


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