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あおみどり




煙草に火を点けようとしたが、隣で眠る男を眺めてマッチをしまった。煙草をくわえたまま髪を撫でる。見た目より柔らかく芝生のようなそれをしばらく指で梳いていると、ゾロが身じろいだ。
薄く目が開いたのに気づき、もう開くことのない左目を指の腹でそっとなぞる。

「悪い。起こしちまったな」
「ん」
ゾロは焦点の合わない目で何度か瞬きしてからやっとこちらを見る。それでも今にも眠ってしまいそうだった。

「朝か」
「いや。寝てていいぞ」
口にくわえたままだった煙草を脱ぎ捨ててあるスーツの胸ポケットにしまい、展望室の窓から月を望む。

「お前は寝ないのか」
ゾロに手首を捕まれると上目遣いで見上げられる。煙草に火を点けておけばよかったと、赤くなる頬を隠すことができないことに気づき後悔した。

「寝るよ…うおっ!」
そのまま手首を引っ張られ、思いきり頭を床にぶつけた。あにすんだこのクソマリモ!と頭をさすりながら怒鳴れば、陰りのない翡翠と目が合ってしまう。


「なんでてめェが傷ついた顔してんだよ」
上から毛布をかけられてお互い素っ裸で寝転んだまま見つめ合った。意志の強い瞳に咎められた気がして、目を伏せる。自分でも分からないほどに焦燥にかられていた。

「てめェの目が、好きだったんだ」
おれにはゾロの瞳が宝石みたいに見えた。ナミさんの好きな財宝とは違う美しさがある。それに、この翡翠に輝く瞳はおれだけのものだった。


「こっちは」
けだるそうに腕を動かして右目を指差したゾロは、やっぱりおれの好きな瞳でお前のもんだろと告げた。眉間にシワを寄せて、俯いていた顔を上げる。

「欲しけりゃやる。その代わり、おめェのそれはおれのもんだからな」
おれもコックの目が好きなんだ、と勝ち誇ったように笑われて頬が熱くなる。我慢出来ずにゾロを抱きしめて、お互いの体温を感じながら毛布に包まった。

そういえばもうすぐゾロの誕生日だ。プレゼントは何をやろう、料理やケーキはどうしよう。そんなことを考えられるのがとても幸せに感じて一人で喉を鳴らして笑う。
もうすっかり夢の中にいる恋人の右目に優しく唇を落とした。

(20111027)


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