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海の果てで願うこと




「サンジキュンどうしちゃったのかしら」
「ねえ?」
ピンク色の砂浜に座り込んで長い間、海の果てを眺めていた。ゆらゆらと揺れる地平線を見ていると今でも仲間たちと旅をしているような錯覚に陥る。

少し前まではスイーツドレスを持って襲ってくるやつらもいたが、相手をしないからか今は随分静かで仲間達に思いを馳せる。


「どうしたのよヴァナタ。新聞見たときから少し変よ」
「イワか…」
「また麦わらボーイ?」
小さく首を振るとイワはため息を吐いた。あれからもう一年近くが経ち、あれだけ騒がれたルフィの記事も出ることがなくなった。時々思い出したように、小さな枠にただの憶測が書かれている程度だ。イワが持っていた新聞を砂浜に落とすと、桃色の砂埃が舞い目を細める。
11月11日、新聞に書かれた日付は一人の仲間の誕生日を示していた。砂の入った目を擦っていると、いきなりイワに蹴り飛ばされた。

「いってェな!クソ野郎!」
「随分余裕じゃない。ヴァナタに何があったのか知らないけど、まずは今のことを考えるのね。キャンディ達!」
スイーツドレスとレシピを手に、まだレシピを奪っていないオカマ達が前に立ちはだかる。レシピは随分手に入れたが、さすがにここまで来ると一筋縄ではいかない相手ばかりで、やっと五人目を倒した頃にはどっぷり夜が更けていた。

どうか無事でいてくれとまた砂浜に座り、目を閉じて祈る。
あの男が今日をよく過ごしてくれていたらどれだけ安心できるだろう。会わない間に想いは強くなるばかりで、失いかけて好きだと気づいたときにはもう遅かった。


おめでとう、心の中で何度も何度も呟いて口の中の血を砂浜に吐き出すと、紫煙をくゆらせた。

(20111111)


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