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ふたりぼっち




「狭いし寝にくいなァ」
「お前海賊王になるなら何でこんな小船しか持ってねェんだよ」
「船大工はこれから探すんだ」
ゾロは呆れたようにため息を吐く。仲間になってまだ一日目の夜、どんなやつが仲間になるんだろうと海賊王を目指すようになってから毎日考えていた。

「狭ェし寝にくいならくっつくな」
引きはがそうと肩を押されるが、無理矢理ゾロに抱き着いたまま離れない。

「だっておれ落ちたら死ぬもんよ」
「だからって抱き着くな!」
そう悪態をつきながらもゾロは諦めたのかもう寝る体勢に入っている。エースとサボがいたときは毎日くっついて寝ていたけれど、こうして間近に体温を感じるのは本当に久しぶりだ。

夜なのにゾロからは太陽の匂いがする。それと、少しの汗の匂い。
磯の香りと波の音を全身で感じて、ああおれもやっと海賊になれたんだと実感する。


「そういや、腕赤くなってるな」
「ああ。まあ、問題ねェよ」
ゾロの腕を手に取ると、縄が皮膚に食い込んだ跡がくっきり残っている。痛々しく皮が剥けているところまでありそこに口づけると、手を振り払われてしまった。

「お前」
「お前じゃなくてルフィだ」
「…キャプテン。こういうことは好きなやつにするもんだ」
間違っても男にすんな、そう言ってからゾロは目を閉じてしまった。唇を尖らせて好きなやつについて考えてみる。

「好きなやつってどうやって作るんだ」
「作るとかじゃなくて、自然に出来るんだよ…」
「どうやって」
「あ?相手のことばっか考えちまうとか…まあ、どっちにしろおめェにはまだ早ェよ」
「じゃあゾロだ!」

ゾロは驚いたように目を開くと、まっすぐおれを射抜いた。思いのほか長い睫毛が月明かりで陰を作っている。
そのせいか翡翠色の瞳も陰りを見せた。

こんなにきれいなのに、もったいないと思う。


「初めてお前を見たとき、手に入れたいと思った」
「それは…好きとは違ェだろ」
「じゃあキスしてェとか、やりてェとか思うのは」
「は?てめェ何言って…」

そのままゾロの唇に吸い付く。わざと音を立ててキスをすると、抱きしめている身体が一気に熱くなるのが分かった。

「これから仲間がすげェ増えても、ゾロはずっと特別だ」
「は、言ってろ」
そのままゾロを押し倒すとなぜかお互い笑いが止まらなかった。ゾロの揺れる喉仏を見つめて、嬉しくなる。理由は分からなかった。

自然と唇を寄せると、月が自分の背中に隠れて翡翠は小さく輝いた。

(20111005)


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