達海、と言ってから気付いた彼の隣にいた人物に、後藤は内心舌打ちをする。
(またお前か)

「おー後藤」
「よ、達海。……と、緑川」

にっこりと友好的に笑うと、緑川も同じように返してきた。ベテランらしい落ち着きに後藤は逆に苛立つ。まさか緑川までライバルになろうとは、と。

「楽しそうだな」
「んー、まあね。監督としてアドバイスしてた」
「ふーん?」

あくまで笑みを浮かべたまま、達海の肩に視線をやる。ぽん、とさりげなく達海の肩に手を置く緑川。
(その手を離せ、まったく)
今日はご機嫌な達海の手前、そんなことを言うわけにもいかないけれど。

「あれはアドバイスって言うんですかね、俺の体触ってただけでしょ」
「ちゃんと話したろ。なんかドリはなー…触っちゃうんだよな」
「セクハラですよ、達海さんなら別にいいけど」

見せつけるように達海にアピールする緑川をなんとか睨まないように見つめる。
(くそ……)
それでも後藤がぴしりと固まりはじめると、そんなことには全く気付かない達海が後藤の腕を軽く掴んだ。

「後藤も昔はもうちょい硬かったのにな」

どことは言わないけど、と付け加えた達海に、今度は緑川が固まる番だった。

「……へえ」
「うん。なー、後藤」
「あ、ああ…そうかな」

言葉の足りない達海の言い方に苦笑しつつも、後藤は内心ほくそ笑む。手を繋がれているというのも、ますます後藤の頬を緩めさせた。

「そうだよ、俺知ってるし、……あ」

ぎゅっと後藤の手を掴んだ達海が、ふらりと手を揺らして時計を見る。そしてそのまま手を引いた。

「よし、そろそろ飯行こ、後藤。約束してたよな?」
「……了解。またな、緑川」
「悪いな、次はドリも一緒に行こーね」

勝った、と今日初めて心底嫌な顔で緑川に笑いかけると、緑川も悔しそうな顔で笑う。
そのまま、そんな二人にはまるで気づかない達海に手を引かれて後藤はため息をついた。

お前を守るのは、骨が折れるな、と。





end

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