ちら、と隣にいる達海を見た佐倉は緩む頬を抑え切れずにいた。
幸か不幸か一人でニヤニヤしていても、あまり人から不審な目で見られないタイプではあるが、それにしてもはしゃぎすぎだ。このオールスター戦、自分のチームの選手も出場しているというのに。
しかしわかっていても、どうしても視線が隣に行ってしまう。


「……さっきからなに?用事?サックラー」
「あ、すみません、なんでも!」
「ならいいけどー」

(ずっと見ていた通り)
近くにいても、遠くから見ていても、選手でも監督でも、達海は達海だった。
なにを考えているのかわからない目でボールを追っているのに、誰よりもピッチを把握していて、二手三手先が見えていたかのような動きをする。
そういう時に見せる笑顔が、初めて見たころと全然変わっていない。

「お、っし!」
「今の動き、良かったですね」
「ニヒヒ。でもあそこはサックラーが意見出してたとこじゃん、やるね」
「あ、…はい。…ありがとう」

素直に笑って佐倉の肩を叩く達海。自分の人生を見事に転がしてくれた、愛しい彼が、隣で同じフィールドにいるという幸せ。
思わずぽろっと零れてしまいそうな、熱い熱い思いを飲み込んで、佐倉は視線をピッチに戻した。
いつの日かもっと近付いて、そして、飲み込んだ思いを言葉にして贈ることが出来ればいいな。
そんなことを思いながら、少し曇った眼鏡のレンズを拭く。

「タッツミー」
「ん?」
「呼んでみただけです」

それから、「へんなの」と唇を尖らせる達海に微笑みかけて、心の中でそっと呟いた。

『あなたを知っていた、ずっと前から、こうして敬語で話す前から』

『好きです』





end


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