お気に入りのソファでふんふんとジーノが鼻歌を紡ぐと、隣でおとなしく雑誌を読んでいた達海がぴくりと反応した。
「……ワルツ、みたいな」
「よくわかったね」
ジーノが素直に褒めると、妙に自慢げな顔で達海が笑う。思わずいじめたくなり、ジーノは達海の肩を抱いた。
「タッツミーはクラシックにも詳しいんだね、どんな曲が好き?流そうか」
「え」
途端に泳ぐ視線にジーノが笑い声をあげると、反対にすっかり拗ねた達海がジーノの脇腹を突く。
「……やなやつ」
「ごめんね、ワルツって言った時の顔があんまり面白かったからさ。……さて、ワルツのように優雅な恋を、と言いたいところなんだけど」
達海の手の甲に口づけて、ジーノは言った。
「君との恋は予測もつかない。転調だらけだし、テンポもばらばら」
「……なにが言いたいの」
「うーん、ミステリアスでスリリングで、キュートな君を愛してるってことかな」
今度はジーノが自慢げにする。それを見た達海は、ますます眉間に皺を寄せながらも、ジーノの腕に体を預けたのだった。
「褒めてないよなそれ。ま、……愛してるならいいけど」
end