【達海の部屋と後藤さん】

達海の部屋に入るなり、後藤は眉をひそめた。

「まあその辺座んなよ」
「その辺……って何処だ」

少し後藤が動くだけで、ガチャ、とDVDのケースが音を立てる。
ざ、とDVDをよけてぺたんと座った達海を少し見下ろしてから、後藤は散らばったDVDを集めはじめた。

「……達海、人が生活できるレベルには片付けろよな」
「えー?俺人間だしー…細かいこと言うから嫁さんもらえないんだよお前は」
「ぐ……」

後藤がDVDケースや書類のタワーを作っていくと、達海が後藤のシャツの裾をくいくいと引っ張る。
ちょうど達海に背を向けていたため振り向くと、達海が癖のようになっている拗ねた顔をした。

「なに?」
「せっかく来たのに、俺には構わねえの?」

DVDばっかりずるい、とおかしそうに言いながら後藤の服を引く達海に、後藤はため息をつく。

「あのなあ……」
「もーいいじゃん、どうせ今からまた崩れるんだからさ」
「わ、……こら、達海」

達海が強く後藤の服を引いたせいで、後藤がバランスを崩す。
ガシャガシャと音がして、積んだばかりの塔も崩れた。

「ほら、言ったじゃん」

得意げに笑った達海に反論をしようとした後藤の言葉は、達海に届くことはなく、その唇に吸い込まれる。

「……くそ……後で片付けてやる」
「どーぞどーぞ、後でならいいよ」

楽しそうな達海の頬にぶつけるようにキスをしてから、後藤は自分より細い体を抱きしめた。



end
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