「おはようタッツミー」
何度起こしてもキスをしても起きない恋人を仕方なく放置して、朝食をゆっくり作ってから再びジーノは寝室のドアを開けた。
すると、なんとか起きていたようで、達海はベッドの上に座りぐらぐらと眠そうに首を揺らしていた。
服は、纏わないまま。
「タッツミー……服ぐらい着てよ」
ジーノが苦笑すると、うすらと目を開けた達海がジーノを映した。
「今から着る……え、ひょっとして興奮する?」
眠そうなくせに挑発的に笑うものだから、ジーノは達海の方へ一歩進む。
「かなりね。さっきから、昨日かなり際どいとこに付けたキスマークが丸見えなんだよ」
「見ないでよ」
「そりゃ見るでしょ」
もう一歩、ジーノが達海に近付いた。達海までの距離はあと一歩。
「……朝から野獣な王子なんて聞いたことない」
「僕も」
「だよなあ。……でも、まあいいや。食べたいなら食べていいよ?」
ニヒ、と笑った達海にジーノは頭を押さえた。
こんな朝っぱらから姫を襲おうだなんてまるで紳士的じゃないね、と呟いていた自分の中の紳士はいつのまにか姿を消す。
達海との距離をゼロにして、ジーノはゆっくりと達海の肩を押した。
「タッツミーがあんまりおいしそうだから悪いんだよ」
「……そりゃどうも」
「いっぱい跡つけていい?」
「だーめ」
布団に押し倒された達海がジーノの手を握る。
「つけるならジーノしか見ないとこにして」
ああ困ったな、せっかく作ったのに、よくてブランチ、下手したらランチになっちゃうなあ。
そんなことを一瞬考えてから、ジーノはにこりと笑う。
「ヒミツの場所か、いいね。……いただきます」
どうぞ、と朝の掠れた声で言う達海にまず深いキスを送って、ジーノはつう、と達海の顎を指でなぞった。
end