いつものように、「おう、どうした椿」そう言う暇もなく押し倒される。
いつもは可愛いわんこが今日はそうじゃない、自分が避けてきていた直接的な『行為』をしたがっていると気付き、達海は慌てて椿の肩を押すが遅い。
(待って)
拒んでいたのには理由があった。けれど、とても椿には言えない。
(待って椿、俺はまだ、お前にとってそうするに値する奴じゃないから)
そんな言葉がよぎり、達海は一瞬唇をかんだ。




「ん、あッ!痛…っ」

チリ、とした痛みに達海が椿の髪を引っ張った。
普段特に意識なんてしないそこを噛まれて、驚きながらも体が熱くなる。

「……でも、かたくなってきました」

タンクトップの上から、立ちあがってしまった達海の胸の粒を、椿はくにくにと摘んだ。

「ばっ、離せ、椿……っ」

ぐ、と達海は椿の身体を押すが、力では敵わない。

「嫌です、……達海さん、達海さん」
「いっ、…ッ、あ、やめ、つばき、ッおい、椿っ!」

達海がきゅっと目を閉じた隙に、椿が達海のズボンを下着ごと下ろした。

「すみません、でも」

ゆるく立ち上がった達海の自身を椿はやわやわと撫で、力の抜けた足を広げさせる。
男の身体なのに、嫌じゃないのか。達海がそんな疑問を抱くより先に、椿は熱っぽい視線で達海の身体を見つめた。

「嘘、ちょ、待て、ア、椿…っ…!」
「もう、待ったっす」

開かれた達海の足の間にすぼんだ場所を見つけると、椿は自分の指を舐める。
そして十分に舐めて湿らせてから、性急に達海の中に指を挿入した。
少しは予想していたけれど、急にそんなところに触れられたせいで達海は混乱する。
痛い、恥ずかしい、汚い、嫌だ。震える声で椿に訴えても、まるでいつもと違う顔つきの椿は聞き入れない。

「確かにキツいっす、力……抜いてください」
「嫌だ、嫌、椿ッ……や、恥ずかし…」
「……達海さんッ」

見ないでくれ、と椿の顔に伸ばした手は、届く前に椿に捕まる。
掴んだ達海の手にキスをしてからシーツに戻し、椿は、ぐ、と達海の足を大きく広げた。
(嫌)
全てをさらけ出す格好にされ、達海は首を振る。しかし、椿はその姿に煽られたようで、激しく手を動かした。

「あ、あ……っ、椿、つばきぃ、いたい、ッ、いっ」

ぐちゅぐちゅと中を掻き回され、そういうふうには出来ていないそこが悲鳴をあげる。
椿、椿、と達海が呼んでも椿は謝るばかりで、手を止めようとはしなかった。

「ごめんなさい、達海さん、でも……っ」

苦痛を訴える達海を宥めようと、椿は達海のモノを擦る。敏感な裏筋や先端を興奮に震える手で擦ると、達海は耐えるように目をつむった。
(あ、あ……)
後ろの違和感が性器への直接的な快感で掻き消され、全てから意識をそらそうと達海はシーツを握りしめる。
しかし、それはかなわなかった。

「やだ、椿、そこ、あ、ああッ…!」

椿の指が一点を探った瞬間、達海の身体が跳ねた。
体の中を探られるのは不思議な感覚だったけれど、まさかそんなところで感じるとは思っていなかった達海は驚きに目をぱちぱちさせる。
椿はごくりと唾を飲んで、もう一度そこを指で突いた。

「ココ、すか」
「あ、んッ」

漏れた甘い声に達海が慌てて口を手で塞ぐ。
直接性器に触れられるのとはまた違う、重く、じわりと甘い快感に腰がくだけた。

「んん、んッ、……ふ、あっ!つばき、っ、嫌、ッ」

椿に口を塞いでいた手を取られ、睨むように見つめられる。

「駄目、っス。声……我慢しないで」

そう言って椿は、達海が嫌だと言ったところばかりを指で触った。稚拙な愛撫だったけれど、達海の身体はびくびくと跳ねる。

「達海さんの声、好き、好き、っす、可愛い、達海さん」
「つば、きッ、…ァ、んッ…やめ、そこ、やだ、あぁ……っ!」

やめて、と首を横に振る。こうなると年上の意地とかそういうのもどこかへ行ってしまう。
(きもち、いい)
たまらない快感と、それを得ている場所や相手のせいで感じる背徳感がぐるぐると達海の中で渦をまいた。

「気持ちいい、っすか?……こっち、反応してる」
「あ、ひ、あぁっ、椿、つばき……駄目だ、だめ、ッ」
「……俺ももう、駄目っす」

自身を触られてナカを締め付けた瞬間、椿の指がずるりと抜ける。

「ひっ……ぁ、…あ、椿…?」「力、抜いてくださいね……」

今まで指で探られていたそこに熱いモノが押し当てられ、狭い縁を押し広げながら突き入れられる。
明らかに指ではない大きい質量と熱さに、達海は息を止めた。

「ひッ、……っア、痛い、椿、痛…あ…っ」
「達海さん、……達海さん」

(なんて、声)
汗で額に張り付いた達海の前髪をに触れ、椿が熱っぽい声を出す。
椿の声に身体が反応し、達海の目にじわりと涙が浮かぶ。万全ではない状態で入れられたせいで、椿が動く度に痛みを与えられる。
それでも、いつの間にか達海は椿の手を握りしめていた。

「はいって、くる……っ、痛い、つばき、ッア、ぁ」
「これで、全部っす、……達海さんの中、熱い」

はあっと息を吐く椿は嬉しそうで、達海は複雑な気持ちになる。
こうして椿を自分に繋ぎとめてしまうのがいいことなのか。
そして、そう考えることは、椿に悪いんじゃないかとか。
(……そう、尻込みしてたから今のこの状況があるんだけどね)
まさか襲われると思わなかった、と達海は苦笑する。その拍子に涙がぽろっと零れた。

「達海さん、痛い……ですよね、すみません、でも俺、我慢出来ない」

いつもみたいに慌てるではなく、椿は辛そうな顔をしてから達海の涙を舐める。
それから達海にキスをした。

「……今日は初めてでしたね、キスするの」
「そ、だな……椿」
「達海さんっ……!」

達海が笑みを浮かべたのを合図に、椿が達海の身体を揺さぶりはじめる。
身体の奥に他人を受け入れるなんて初めてで、達海は縋るように椿を見つめた。
椿もさっき探り当てた、達海が感じるポイントを必死に探す。

「……ここ?」

少し角度を変えて突いた時、達海が顔色を変えたのを椿は見逃さなかった。
にっと笑い、そこを重点的に責める。
指以上の太さ、長さで勢いよく突き上げられ、思わず逃げてしまう達海の腰は、椿に捕まえられてしまう。

「あんッ、まっ、て、椿、やだ、そこっ、だめ、くぅッ、だめっ」
「ごめんなさい、達海さん、……可愛い、好き、っ、好き、っす」

ごめんなさい、好きです。そう椿があんまり繰り返すものだから、辛いのも忘れて達海は笑ってしまった。
いまだ胸の奥に、これでいいのだろうかという気持ちはあるけれど、がくがくと揺さぶられている間にどうでもよくなってくる。
どうでもよくなって、最後に残ったのは椿への気持ちだった。
椿の背中に爪を立てないように、ぺたりと手の平をのせる。

「あぅ、ッくるし、ってば、ア、あんッ……ばか、椿ぃ、っ」
「達海さん、ッ、すみませ、気持ち、いいです……っ」

ぎゅっと椿に抱き着き、達海は荒い息を吐いた。色々考えるべきことはあっても、もう何も考えられない。
(相当馬鹿になってる、もう)
身体の奥を掻き回される感覚から快感を拾えるようになってしまった今、達海が欲しいのは最後だけだった。

「あッ、も、イきた、ぁ、前、触って、椿……あっあっ」
「達海さ、っ、俺、も…いきそっ…す…!」

達海の欲求通りに、椿が些か乱暴に達海のモノを擦る。
はあはあと息をして、それからすぐにびくりと震えた二人は、お互いの欲望をシーツの上に撒き散らした。



くたりと並んで横になり、息を整えてから達海は椿の頬を抓る。

「いひゃい、いひゃいっす」
「痛いのは俺の方だろ、馬鹿、……椿!」
「あああ、はいっ!すみません、すみません……ッ!」

強い調子で達海が名前を呼ぶと、すっかりいつも通りで縮こまった椿。
(ずりいの)
叱れない、と達海は苦笑して、椿に体を寄せた。

「……次は、もうちょっと優しくして」
「えっ……、は、…はい」
「照れんな。俺も……恥ずかしくなるじゃん」

途端真っ赤になった椿の頭を撫でながら、達海はらしくない考えごとをどこかに振り払うのだった。






end

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