いい加減まともな飯を食べさせねばならんと、本日後藤はクラブから達海を連れ帰った。
ここ最近、試合の予定が詰まっていて忙しかったのは確かだが、達海を見る度食べていたのはジャンク、ジャンク、ジャンク。
よくそれで太らないなあと後藤は一瞬感心したが、そこではない。
大の大人にこれはどうなんだろうと思いながらも後藤はこうして達海を自宅へ連れ帰り食卓へ座らせ、言った。
「野菜もしっかり食べろよ、達海」
「……おまえはお袋か」
案の定達海からは突っ込みが入るが気にしない。
「なんでもいいから早く食べろ」
そう言ってから後藤が手を合わすと、「はあい」とゆるい返事をして、達海も手を合わせた。
「いただきます」
(にしても)
思っていたのとは違い、文句を言わずに野菜もきちんと食べる達海を眺めながら、後藤は違和感に気付いた。
まず風呂に入らせたから私服というのもあるが、と、もごもご頬を動かす達海を眺める後藤。
(……あ)
じいっと見つめて、ようやく違和感の原因に気付いた。
(前髪か)
髪を洗った後だから、整髪料が取れて短い前髪が達海の額を隠している。
普段から若く見えるけれど、こうしていると本当に年相応には見えない。
幼い。これじゃあなめられそうだと笑いそうになるのと同時に、達海が年下だったことを後藤はふと思い出した。
「……なに」
ふと気付けば、じとりとした目で達海が後藤を見つめている。
「いや、可愛いなと思って」
弟が出来たみたいで可愛い。
後藤としてはそういう意味だったのだが、タレ目をぱちくりさせた達海は無言で食事を再開させた。
「……もしかして達海、照れた?」
「照れてない」
不自然なほど早い返事に後藤は頬を緩める。
自分勝手、よくいえばマイペースな達海には振り回される毎日だけど、許せてしまうのだ。
「やっぱり可愛いな、お前」
「うるさいな」
後藤がもう一度言うと、珍しく照れた達海は茶碗を持ったまま後藤に背を向けた。
end