気付くとタッツミーがなにか花を持っている。
にこにこ笑う彼と、見たことのない淡い色彩の花。それからぼやける背景に、すぐにこれが夢だと気付いた。

「……きみがにこにこしてるから夢だと気付くってのも、ねえ」
「なにが?」
「こっちの話さ、タッツ」

ふふ、と笑って彼の肩に触れる。自分の手さえぼやけて見えるのに、目の前の存在はまるで夢じゃないように確か。
もしこの夢が深層心理だとかいうのなら、どれだけ自分のフォーカスが彼に合っているんだろう。

「誰かが夢に出てくる時、自分がその人に想われているって本当かなあ」
「……ジーノ?」
「それなら君の夢の世界、ずっと僕がいることになるね」

遠く響くような自分の声を聞きながらゆっくりと彼を抱きしめてみた。
髪に触れながら、出演料を貰わなきゃと冗談を言っても夢のタッツミーはいまいち反応が悪い。
おとなしい君も愛しいけれど、やっぱり本物じゃないと物足りないよ。
ずっと嬉しそうにしている彼に頬を擦り寄せると、ぐにゃりと世界が歪んだ。
目が覚める。そう確信した瞬間、いつのまにか暗くなっていた視界が開けた。

「……ジーノ、むずむずするからやめて……」
「おやタッツミー……おはよう。ああ、これは失礼」

起きているのかいないのか、ほとんど目が開いていないタッツミーがもぞりと枕に頬を埋める。
しかしこちらも寝ぼけていたらしい。掴んでいた彼の手の平に頬を擦り寄せていたようだ。目の前に体温の高い、力の抜けた手がへたれている。

「ごめんね、くすぐったかったかな」

その手を掴み直し、少し開いていた二人の距離をつめるように身を動かすと、彼は嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「……に…おまえ、夢でもほんとでも…近い…」
「……夢でも?」
「んー……」

起きる時間には少し早い、薄暗い中固まる。ただ、キスでもしたいような気持ちの僕を置いて、もう彼の目は完全に閉じられ寝息らしきものが聞こえた。

「……あーあ、早いなあ」

疲れているから仕方ない。おやすみと呟いてから、もう一眠りすることにしよう。
ごそごそと、タッツミーを起こさないように注意を払いながら彼を抱きしめて目を閉じた。

「夢の中まで両思い、か」

そんな浮かれた呟きをすると、腕の中の彼が、う、と嫌そうに息を吐いた。






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