達海が寝て30分、それぐらい経つと持田はよくごそごそと体の向きを変えて、起こさないようにこっそりと達海の背中を抱きしめる。
それまではよく言えば大人らしい、悪く言えばドライな表情ばかり達海に見せる持田は、この時ばかりは違う。

「……達海さん、好き」

本当に小さな声で、そう囁いて優しく耳に口づけるのだ。それに一度気付いてしまってから、その、いつもと違うくすぐったい声がクセになってしまった。
普段は格好つけていて、本当はこっちが本性だとしたら。

「……アンタにちゃんと届いてる気はしないんだけどさ」

(持田、可愛すぎ……)
今日も今日とて寝たふりをし、持田の声を聞いて、達海は笑いをこらえていた。
あまり年下扱いしないでほしいと持田は言っていたけれど、そのためにいつも背伸びをしているなら、ますます愛おしい。
背中を向けているという油断でつい緩む頬をなんとか抑えて、達海はぎゅっとシーツを握った。
しかし、いつもはこうしているとそのうち持田も離れるのだけれど、今日は何かあったのか、なかなか達海から離れようとしない。
達海さん、と小さく掠れた声で名前を呼んで、背中に鼻先をくっつける。
どうしたんだろう。
一瞬気が緩み、心の中で首を傾げた瞬間唐突に首筋を舐められ、ひゃ、と声が出てしまった。
まずい。

「達海さん」
「…………」
「おい、……ちょっと、寝たふりしてんなよ」
「痛い痛い、やめろよー……ニヒヒ」

ぎゅっと頬を抓られて思わず笑う。けれど後ろにいる持田はそれどころではないらしい。低い声が首にかかる。

「……いつから気付いてた」
「たった今起きたかも?」
「あのなあ!」

怒った、というより照れてる。
こんな持田は初めてだ、と素直に口に出すと、体を抱く腕の力が強くなった。

「持田、苦しいんだけど」
「うるさいよ、こっち見ないで。ああもうなんでアンタが起きてんの……最悪……」

声が本当に恥ずかしそうだ。おまけに、肩に当たる持田の頬が熱い。

「いつもこれぐらい素直ならいいのにね」
「……それ以上言うと」
「言うと?」

くるりと後ろを向くと、暗くてもわかるほどに持田の顔が赤くなっていた。

「……好きだよ、達海さん」

笑わないように努力はするものの、我慢出来ずにやける。

「にひひ、俺も」
「……知ってる」

そんな達海の頬をまた緩く摘んで、持田は弱ったように視線をそらした。






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