お前しかいないなあ。ぼんやりと達海が呟いて、その途端硬直した椿を睨みつけた。

「なに、その顔」
「え、いや、その、なにかあったんスか?」

今この瞬間まで肉食獣のように達海の身体を喰らっていた椿が、一気に頬を赤らめる。撫でて、と言いたげな子犬のような椿。その頭を撫でながら「なんとなく」と掠れた声で言うと、椿は不満げに少しだけ唇を尖らせた。
その顔がなんとなく、自分に似てきたような。にっと笑った達海は椿の背中に手を回す。

「俺がお前を欲しちゃだめなの?」
「いや、そうじゃないんスけど、その」
「じゃあいいじゃん。かわいい、椿」

汗が伝う額を拭うように撫でる。目を真ん丸にして見つめてくる椿。可愛い、と思う度にチクリとした罪悪感も浮かぶけれど、それには慣れた。

「……ちょっと切ない顔してるッス」
「そーか?」

鋭いところも動物っぽいな、と思いながら達海は、抱きしめてくる椿の腕にただ身を任せた。
意外と強い力や、触れ合う肌が若々しい。

「……若い子をたぶらかしちゃったなって思ってね」
「されました!」
「されましたってお前ね」

思わず笑うと、だからもう離さないッスよ、と元気な声が肩辺りから聞こえる。うーんやっぱり犬みたいだ。頭を撫でると無性に落ち着く感じも。
なんだかもうこのまま眠りたいなあ、と達海は息を吐く。すると中で椿のモノが硬くなった。
忘れてた。

「椿ー……、続き、したい?」
「……すみません」

申し訳なさそうな顔しなくてもいいのに。多分そう言っても全部はうまく伝わらないだろうから、ただ頭を撫でてやった。

「いいよ、おいで」

おずおずと触れる、始めの合図らしいキスが本当に唇を合わせるだけのもので笑ってしまう。
ディープぐらいしなさいと軽く頭を叩くと、椿は照れ臭そうにゆっくりと舌を入れてきた。





「そ、こっ、あっ、ぁ…、や、ッ」

ギシギシとベッドが不快な音を立てる。しっかりと足で椿の身体にくっつき、より深く繋がろうとすると椿は嬉しそうに達海の腰を撫でた。

「ここ、良すぎてやだって前言ってましたね」
「んな、ことっ、忘れろ、ッ、く、ぅ、あッ」
「駄目。大好きだから、なんでも覚えたいっス」

生意気。そんな声をギラギラした目で封じて、椿は達海の中をずり上がる。硬い部分で柔らかい中を押し開くその度に、粘膜が絡み付くように締まるのがたまらないらしい。
はあはあと気持ちいい息を吐く、そんな椿が達海にとってもたまらないもので。

「椿かわいー…、っあ!ぁッ、好きなだけ、して、いいから」
「締めないで、くだ、っ、出る、すみませ……っ」

どくりと溢れた熱い奔流を身体の奥で受け止め、達海はぎゅっと目を閉じる。そういえば、ゴムを付けていなかった。
少し後悔しながら、じわじわと溶けるような内部に意識を集中させていると、椿が達海の下腹部を撫でた。

「気持ちいい顔、してる」
「……っ、つ、ばき」
「ここに出されて、気持ちいいって顔ッス」

笑う椿の顔にぞくりと背中に痺れが走った。何度もそこを撫でられる度、びりびりと。
だけど、椿が嬉しそうだから怒ることも出来ない。
どうしようもなく達海が椿の肩に腕を回し直して、きゅっと後ろを締めると、それを押し開くように椿も律動を再開した。

「あ、……あっ、ん、今だめ、ゆっくり、して」
「達海さんの、なかっ、俺のでぐちゃぐちゃになってる……どうしよ、興奮する」
「はッ、ああ、う、椿っ……」

激しさにちょっとついていけなくなり、椿の肩に爪を立てる指から力が抜けない。
ごめん、痛いよな、と何度も呟きながら抱かれていると、妙に優しく頭を撫でた椿が、掠れた声で「いいよ」と言った。
それがかっこよかったって話は、まだ当分したくない。




「まあでも……椿、俺に入っていいのはお前だけだよ」
「きゅ、急になんスか、あの、どどどどういう」

へたりとシーツに崩れて息を整えてから呟く。そして、達海の言葉に一気に顔を赤くした椿に笑いかけた。

「心の話、ね。……何想像した?椿のえっちー」

わわわ、違うんス!そんなオーバーリアクションな言い訳を聞きながら達海は微笑む。やっぱりかっこいい椿はまだいいや。
「つーばき、……もっとおいで、奥まで」
「そ、そういう言い方やめてほしいッス!」

素直に、かわいいなあと呟いたら同じ言葉が大音量で返ってきて、ますます笑いが溢れた。





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