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隣の体温

※子シズでシズイザシズ。















ああもう何でこんなにかわいいんだろう!
歩きながらも臨也の手を離れぬようにしっかり握る子供に、心の中で叫ぶ。
子供――静雄は近所に住む子供だ。ちょっとばかり特殊で、そのせいで家族以外に疎まれるこの子供を、臨也はそれはそれは大切にしていた。
心の底から一切の打算を…いや下心があるので一切とはいえないが…含まずに。友人の新羅からも呆れられるほどに溺愛していた。

「シズちゃん、何か欲しいものある?」

見上げる他人より色素の薄い目はまだまだあどけない子供のもの。

「…別にない」

ぎゅっとそれでも加減して握られる暖かな指先を臨也も握り返す。
ああホントかわいい。無条件で懐く静雄の可愛らしさに何でもしてあげたくなる。
初めて子供を見た時から、臨也は彼がどう成長するのか楽しみだった。それを間近に見ていたくて。
望んでもいない力に翻弄される幼い怪物をどう手懐けてやろうか。そう考えて近づいた。

――結局先に白旗振ったのは俺だけど。でもシズちゃんがかわいいからそれでいいや。

警戒して毛を逆立てる子猫が徐々にその警戒を解いて懐いていく過程を楽しんでいた頃はまだ打算の方が大きかった。
懐かせて利用していらなくなったら捨てる。そう考えていたのに、それが何処でどう狂ったのか。
ひとつ言えるのは、臨也を信頼して懐く子供に絆されたというより、その愛らしさに惚れ込んでしまったのが敗因だということ。
この子供が笑ってくれるなら何でもしたいと思う自分はもうすでに末期だなと、臨也は笑う。自嘲するのではなく心底幸せそうに。

「アイスでも食べようか?」
「いざやが食べたいだけだろ」
「そうかもね」

残念はずれだよシズちゃん。俺はおいしそうにアイスを食べる君を見たいだけなんだよ。くすくすと笑って臨也は静雄の頭を撫でた。
そう遠くない未来、静雄がどんな風に成長するのか臨也は楽しみでしかたなかった。
きっと背は高くなるだろうとかこの実直な性格は変わらないのだろうとか、内面も外面もすべて含めて楽しみでしかたない。そして、彼を一番良く知るのは自分でありたいと、心の底から願っている。
だから、臨也は自分の存在を彼の意識に刷り込んでいくのだ。誰と出会い何を感じたとしても決して自分の手を離さないようにと。
まさか静雄も幼いなりに同じようなことを考えているとは思いもしないまま。

「早く大きくなってね、シズちゃん」

年の差7歳。臨也が静雄の告白を聞くまであと8年。
8年後の忙しなくも甘やかな日々を予感すらせぬまま、楽しみだなあと笑いかける臨也に静雄も嬉しそうに頷き返した。
















※臨也さんデレ全開。この当時は臨也16歳、静雄9歳です。のちに形勢逆転でシズイザになるもよし、このままデレ全開のイザシズでもよし。


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