はぴいざ!!7 | ナノ





5月4日

『はぴいざ!!』 賛同作品その7。基本シズイザ。
















「5月4日?その日は仕事だからダメだよ」

そう言った臨也に、静雄が何故か妙な顔をしたのが一週間前。
そして、その5月4日。
ようやく今日が誕生日であったことを思い出した臨也は、ひょっとして祝おうとしてくれたのか…?と思った。
だが今更すぎるし、静雄はそれ以上何も言わなかった。何より、臨也は別に誰かに祝ってもらおうなどとは思っていなかったし、祝われたこともほとんどなくて。
だから、少し残念だったかもと呟いた彼は、それ以上考えることもなく池袋の街中を歩いていく。
頼まれていたものが手に入ったから仕事の帰りでいいから寄るようにと新羅に念を押されていたので、しかたない。
静雄に見つかった場合そう言い訳したところで無駄だろうが、とりあえずそう言ってみようとか考えて。
臨也はのんびりと新羅のマンションへと向かったのだった。


***


「やあ、臨也。いらっしゃい」
「…やあ」
「中に入ってよ」
「…なんで?」

いつもなら玄関で渡してそれで終わり――新羅曰く、セルティと僕の愛の巣に他人が踏み込む機会は出来る限り減らしたい、ということらしい――のはずなのに。
あからさまに不審そうな顔をした臨也に、新羅はまあまあと言ってその手を引いた。
引っ張られるまま玄関に入って、溜息をつく。
本当に一体なんだというのだ。

「ねぇ新羅…俺はこれでも忙しい身なんだけど?それにシズちゃんがもし俺に気付いたりしたら困るのは君――」
「俺がどうかしたかノミ蟲」
「…なんで君がここに…」

っていうか、なんで怒ってないの。
恋人だろうがなんだろうが、いつも池袋に現れると怒る相手――静雄が自分を前にして穏やかなことに慄きながら問うと。
ふかしていた煙草を携帯灰皿に押し付けた静雄は、のんびりした足取りで近づいてくる。

「あ?気にすんな。それより手前こっち来い」
「…遠慮するよ」

何を企んでいるんだと臨也が逃げないように後ろで退路を塞ぐ新羅に目だけ向けるが、闇医者は内心の読めない笑みを浮かべるだけでそこからは何の答えも見出せはしなかった。

「大体手前遅いんだよ。ったく」
「はあ?一体何の――ちょ、おい!なにす」
「煩ぇ。いいから、ほら、行くぞ」

伸びてきた手が臨也の腕を掴んで引き寄せて、そのまま歩き出した静雄に手を引かれる形になる。
慌ててあとを追う臨也はもう何が何だかわからなかった。
「もうっ、一体何なのさ」
廊下を抜けてすぐに到着するリビングへ続く扉が開かれて、
「―――」
臨也は口を開いたままという間抜けな顔で唖然としてしまう。

飾り付けられた部屋。
テーブルに用意されたケーキ。
Happy Birthday!の文字。
そして――。

「ハッピーバースデイ臨也!」
『おめでとう』
「おめでとう、臨也」
「臨也さん、おめでとうございます」
「…おめでとうございます」
「ま、一応言っておきますよ。おめでとうございます」

そこにいた面々が、口々に言う言葉。
ああ、そうか。そう言えば誕生日だったな。とか。ぼんやり考えながら、臨也は、彼らを見回す。
新羅やセルティはまあ家主だからわかる。門田がいるのも来神学園時代からの付き合いだからだろう。
だが、帝人や杏里や正臣がいるのは何でだろうか。ああ、そういえば運び屋と友達だったか。じゃあその関係…?などと、実にどうでもいいことをつらつらと考える彼は、そこでようやく、あれ?つまりこれって…と思い至った。
つまりこれは――折原臨也の、自分の誕生パーティーだということ。

「…っ」
「あ、ちなみに料理は鍋だよ。今運んでくるから――って臨也?」

思い至った瞬間からの臨也の行動は迅速だった。
腕を掴んだままの静雄に向かって勢いよく体当たりして、そのまま顔を押し付けてしがみつく。
そんな臨也の奇行をただ黙って見ていた静雄は、自分を服をしっかり掴んで顔を隠す彼にくくっと笑った。

「はっ、臨也くん真っ赤じゃねぇかよ」
「煩い。しばらくこうしてて」
「ったく、素直じゃねぇよなお前は」
「…煩い」

だって、祝ってもらえると思ってなかったし、祝って欲しいとも思ってなかったんだよ。なのに、こういう不意打ちとか、ちょっと困る…。ぼそぼそとそう言う臨也はあくまで顔を上げない気らしい。
素直に嬉しいなら嬉しいと言えばいいのに、本当に素直でない男だ。
やれやれと視線を上げた静雄に苦笑してみせる面々。
本当に仕方ねぇなこいつは、と静雄も笑って。
それから少し屈んで、臨也の耳元で低く、柔らかな声で囁いた。

「誕生日おめでとよ、臨也」
「…ッ!」

真っ赤な顔のまま、死ね!と小さく悪態をつく臨也に、静雄は今度は声を立てて笑ったのだった。
それに癇癪を起こした臨也がナイフを突き立てたのは、まあ、余談である。














※お誕生日おめでとうございます臨也さん!そして素敵企画に参加させて頂きありがとうございました!!

あ、ちなみに狩沢さん(たち)がいないのは門田お父さんの配慮です(笑)
このあとみんなに囲まれて祝われながらワイワイ鍋するんですよ臨也さん良かったね!


BACK




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -