はぴいざ!!5 | ナノ





Vague

『はぴいざ!!』 賛同作品その5。シズイザ。だから幸せって(ry …すみません…
















深夜の路地裏。
通りからは目に付きにくい薄暗い死角にうずくまって、臨也はぽつりと呟いた。

「…どうしようか」

逃げる最中にちょっとした判断ミスで足場を踏み外し、捻った足は酷く痛んでいる。
見つかったら、やばいかな。
ズキズキと痛むそこは、たぶんすでに腫れ始めているのだろう。
痛みと熱に苛まれながら、そっと辺りを窺う。
追っ手の気配はないが、安心はできなかった。
もし発見されてしまえば逃げるのはおそらく不可能だ。

「…はは、最悪だな」

捕まればどうなるかは、想像に難くない。
殺されるのもごめんだが、臨也を追っている連中の狙いは、おそらくそこにはないだろう。捕まればろくな目には合わないのは確実だった。
「今回ばかりは、四木さんの忠告を聞いておくべきだったかな」
言ったところで、今更だが。
そう思って、溜息。痛みが酷くて動く気になれない。動かなければ、いずれ見つかる可能性の方が高いというのに、だ。

「…やばい、なぁ」

目を閉じて息を吐く。
こんな時シズちゃんだったら、などと考えて。
連鎖的に色々なことを思い出してしまって、舌打ちした。
なにこれ走馬灯…?…にしては静雄しかでてきていないのがなんというか…

「ああもう、やっぱり最悪」

それなりに危機的な状況だというのに、思い出すのがあの男だというのが最悪だ。
切り離しようがないほど深く自分の中に存在する腐れ縁の相手。
反目して、傷つけ合う。そんな関係なのに、どこかで焦がれているのだと自覚したのは、割と最近のことだ。

「だからって、なにも今思い出さなくたって…――」

途中で、言葉は途切れる。
かつんと、靴の音が聞こえてきた。
息を詰めて気配を窺おうとして――、

「…こんなとこに居やがったのかノミ蟲」
溜息交じりの声が聞こえ、臨也は首を傾げて目を瞬かせる。
「しず、ちゃん?」
おう、と軽い返事が返って。
静雄が臨也の目の前まで歩いてきた。

「なんか変な連中が誰か探してるみたいだけどよぉ、あれ、手前を探してんだろ?」
「…だったらなに?連中の前に俺を放り出すかい?」
そう問えば、何故か大げさに溜息をつかれる。

「手前は俺の獲物だって言ってるだろうが」

確かに時折言われてはいる気はするその科白に、臨也は眉を顰めた。
「…なにそれ」
「手前は俺のだから、俺以外の奴に勝手にやられるのは許さねぇ」
静雄はごく当たり前のことのようにそう言って、いまだ蹲ったままの臨也をじっくりと眺める。
その視線がなにを探しているのかを察して、目を逸らして息を吐いた臨也は、くっと喉を振るわせた。

「はは…なんだが熱烈な告白みたいだ」
「…手前、どっか痛いのか」

話を逸らそうと口にした言葉は、無視される。
本当に思い通りにならない男だ。

「なあに?シズちゃんが俺の心配とか気持ち悪いんだけど」
「…るせぇ…ああ、足か」
「………なぁんでわかっちゃうのかなぁ…野生の勘ってやつかい?」
「知るかよ」

しかし手前はこんな時でもうぜぇな。
そう言いながら、静雄は頭を掻く。
そして、僅かな間何事か考えていた彼は、様子を伺う臨也に手を伸ばし――。
屈んだと思えば、ひょいっと軽々臨也の身体を持ち上げた。
馬鹿みたいに強い力を持つ静雄だからできるそれに、臨也は俺が軽いからじゃないし、と意味もない言葉を口の中で呟く。
あまりにも軽々持ち上げられるとプライドが変に刺激されてしまっていけない。

「…シズちゃん、あのさ、降ろしてくれないの…?」
「あ?足痛ぇんだろうが」
「それはそうだけど…」

てっきり起き上がらせただけですぐ降ろすと思ったのだが、違ったらしい。
決して小さくない自分を子供でも抱くみたいに抱える静雄に戸惑いながら、臨也は小さくうーっと唸った。
歩けない…かどうかはやってみないとわからないが、おそらく静雄の言う通りだろう。

「とりあえず新羅のところ行くぞ」
「え、このまま?」
「歩けねぇやつは大人しく運ばれてろ」

降ろす気は一切ないらしい静雄は、臨也を抱えたままで。
抱えられた臨也も、まあ静雄と一緒なら追っ手に出会っても大丈夫だろう。と考えて、ここは大人しくしていることにした。

「ねぇ、なんで俺を探してたの」
「あ?そりゃ、手前のノミ蟲臭がしたからだろうが」
「…ノミ蟲臭って…」
「あと、なんかこう、妙にざわざわしたって言うか…とにかく手前を見つけねぇとって思ってよぉ」

それだけだと言う男は至って真面目な顔だ。本気で言ってるんだろうなぁとつい苦笑が零れる。

「本当に、シズちゃんって理解できないなぁ」

そう呟きながら、臨也は静雄の腕に安心して身を預けて息を吐く。
ああ、やばいなぁ。なんで、こうこっちが弱ってるタイミング見計らうみたいに手を差し伸べてくるのかな君は。
シズちゃんなんて嫌いだ、と気持ちと正反対のことを呟いて。
でも悪い気はしないと笑った臨也は、そうかよと苦笑交じりの声で返してくる男の首に腕を回して抱きついた。














※なお、まったくの余談だが。
「だからってお姫様だっこはないと思うよ!?」
いくら深夜だって人がいない訳じゃないのに!
運んで貰っておきながらそう叫ぶ臨也の姿が深夜の池袋で目撃されたのは、そのわずか数分後のことであった。
…とかいうオチがつくはずだった話。

ギャグを書くつもりがしょっぱなから間違えてシリアス路線になった自分が不可解すぎる。
シズイザだけど本人たちに付き合ってる意識は薄そうなシズイザも好きです。でもうまく表現できないのが悩みです…。


BACK




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -