人はそれを幸せと呼ぶか
※ 『はぴいざ!!』 賛同作品その3。新←臨。薄暗くて短いです。幸せどこいった…
さわりと髪を撫でられて、臨也は、ん、と小さな声を上げて目を開けた。
「あ。起きたかい、臨也」
柔らかな声が降ってくる。
見上げれば、中学以来の友人の顔。
「…しんら」
「おはよう。よく寝てたね」
なんで膝枕?
そう思いつつ、身を起こそうとした臨也を新羅が制した。
「新羅?」
首を傾げて問いの意図で名を呼ぶと。
もう少し寝てなよ、寝不足で倒れたんだから。と言われてしまう。
ああそうなのか、と、この状況に納得して、ぱたりと再び新羅の膝に頭を乗せて。
臨也はまだ眠気に半分支配されたまま、自分を見下ろす新羅の顔を見る。
「あまり無理しちゃダメだよ臨也」
「ん、わかってる」
向けられる優しい眼差しに素直に頷いて、それから緩く溜息。
こうやって時々甘やかしてくれるから、いまだに好きなままなのだ。
突き放されれば諦められるかもしれないのに。
それがわかっているはずなのに優しくする新羅の残酷さが、だが、臨也は嫌いでなかった。
ああ、どうしよう。今、結構幸せかも。
とろとろと微睡みながら、臨也は小さく笑った。
ゆっくりと目を閉じて、それから、呼びかける。
「しんら」
「なんだい?」
「俺、お前のこと、好き、だよ?」
「………」
答えは返らない。返らなくて、いいのだ。
そんなこと最初から望んでいない。
ただ、こうやってたまに甘やかしてくれるなら。
あの首なしの妖精と異なる意味で、それでも特別なのだとこうやって示してくれるなら。
それだけで臨也は充分なのだ。
だから。
「君は馬鹿だね」
くしゃりと柔らかな髪を撫でる新羅に。
臨也はそうでもないよ、と目を閉じたまま答えた。
※幸せは人それぞれであるというはなし。
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