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psychedelic dreams -00

※匿名さま「津軽静雄×サイケ臨也で初めて出会った日の話」
津軽とサイケ。『psychedelic dreams -02』と同設定ですが、単品で読めると思います。

















広い広いネットワークの海の中。
津軽がそこに行ったのは、偶然だった。
色々学んでおいで。と、放任主義の製作者が自由にさせてくれるおかげで、まだ現実世界で動ける体こそないが、津軽は様々な場所――もちろん問題のない所だけだが――へと足を運んでいて、そこに辿り着いたのは、本当に偶然だったのだ。



そこはロックこそされていないが他に何もない空間だった。
他に何のプログラムもない場所。
そこに、彼はいた。

「――誰だ?」

問いかけに、後ろを向いて座り込んでいた子供が振り返る。
外見は人間の年齢に換算すれば15くらいだろうか。
ピンク色の瞳のその子供に、津軽は息を呑んだ。

「…臨也…じゃないよな」

自分の製作者と同じ顔の、プログラム。
誰だ、と混乱する津軽に彼は首を傾げて、それからこくんと頷く。

『ひょっとして、つがる?』

ついさっきまでらくがきをしていたらしいスケッチブックを捲って白いページにそう書く彼に、津軽はますます混乱する。

「…ああ、そうだ。お前は?」
『サイケデリック01。臨也くんはサイケって呼ぶよ』
「サイケ…?」
『うん』

ふわりと笑う臨也とよく似た顔。
だが、決定的に表情が違う。
名前とともに知ったその事実に、津軽は混乱しつつも彼が臨也と別の存在だと納得した。

「音声プログラムはないのか?」
『うん、ないよ。おれまだ色々未完成なんだ』

そう言ってきらきらと目を輝かせて、サイケは立ち上がって津軽の側によってくる。

『つがる、どうしてここにきたの?』
「…迷惑、だったか?」
『ううん!そんなことない!』

ぶんぶんと大きく首を横に振る。
そのまま重心を崩して転ぶんじゃないかと内心ひやひやした津軽は、分かったと頷いてそれを止めさせた。
行動の一つ一つが妙に幼くて、見ていて微笑ましいような危なっかしいような。
なんというか…目を離せないな、と思い、津軽はそうと分からぬように苦笑する。

「ここに来たのは偶然だ。臨也が俺以外にも人型PCを作っていることは知っていたけどな」
『おれも臨也くんにきいてたよ』

サイケはふわふわとした笑顔を浮かべて、あのねあのね、と津軽の着物の袖を引いて言った。

『おれね、臨也くんからつがるの話をきいて、すっごくすっごく会えるのたのしみにしてたんだ!』
「…そう、なのか?」
『うん!いつか会えるよっていわれてたけど、こんなに早く会えるとは思わなかった!』

きゅうっと抱きついてくる臨也とよく似た姿の、まったく違う無邪気な子供。
さらりとした感触の髪を撫でてみると、不思議そうに津軽を見上げてくる。

――…なんか可愛いかも。

そのきょとんとした顔を見詰めながらそう思って。
津軽は口の端に小さな笑みを浮かべた。


これが彼らの出会い。
まさかこれから先の未来で人格プログラムに過ぎない自分たちが恋仲になるなど、津軽もサイケもまだ想像もしていなかった日の話。










※『psychedelic dreams』の津軽とサイケではじめましてな話。

津軽静雄×サイケ臨也で初めて出会った日の話とのことだったので最初はまったく別な話を考えていたのですが、中々うまく纏まらずこのような話になってしまいました。
おそらく予想と大幅に外れた話になってしまっていると思います。ごめんなさい…。
また、リクエスト頂いてから時間が経ちすぎてしまい大変申し訳ありませんでした!
リクエストありがとうございました!


↓以下は上のSSの前の話になります。前に持ってこられる話でなかったので使わなかったのですが、もったいないので宜しければ。

















――つがる?

『そう、津軽。君とほぼ同時期に開発を始めた子』

――ふぅん。津軽も俺と同じ?

『いや、違うよ。君とは違うタイプ。でも優しくていい子だよ。会ったら仲良くしてあげてね』

――うん!

通信が切れて、また一人きりになった電子空間で。
サイケはころりと横になる。

――津軽かぁ。

ついさっき製作者でマスターでもある臨也から教えてもらった名前を何度か繰り返す。
自分以外にも作っていることは知っていたけれど、名前を聞いたのは初めてだった。

――楽しみだなぁ。はやく会いたい。

そうは思っても、まだここから動けないサイケには無理だ。
はやく完成しないかな、と考えて、ころりと体を転がして。
サイケはふうと溜息をつくような仕草をする。

――退屈。

自分だけの空間で、サイケはぼんやりと上を見上げる。
生まれたばかりの彼は、まだここから出ることも出来ないただの人格プログラムにすぎないのだ。

――津軽、ここに来てくれないかな。

自分と違って電脳空間の中なら自由に動けるという津軽なら、ここに来れるのではないか。
そう考えてはみるが、所詮はただの絵空事だ。
あーあ、退屈だなぁ、と音声プログラムを持たない彼は音にせずに呟いて。
ころりころりと転がる。

サイケの漠然とした願いが叶えられるまで、もう少し。














※ここからだらだらぐだぐだ長い話になりそうだったので強制終了しました…。


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