pj0234 | ナノ





傍迷惑な話

※匿名さま「シズイザ来神時代で修学旅行。素直になれない臨也と緊張してる静雄に振り回される門田と新羅」
















――なんと言うべきか。
彼らの恋は実にもどかしい。
まさに隔靴掻痒というべきか。
見ているこっちが苛々しそうなほどに。
あと一歩どちらかが踏み出せば埋まるはずの距離が一向に縮まらないのは、果たしてどちらのせいなのか。








「わ、悪ぃっ」
「え、あ…いや、いいけど」

もどかしい。実にもどかしい。
一緒にいた新羅と門田がそんな感想を抱くのも仕方ないだろう。なぜなら、彼らはただほんの少し手が触れ合ってしまっただけだったのだから。

そもそも、静雄と臨也が付き合いはじめてからまだ一週間。なんとも微妙な時間である。しかも、静雄に対しては素直とはほど遠い臨也と、念願叶って臨也と付き合うことになったものの誰かと付き合うということ事態が初めてで緊張している静雄だ。そう簡単に世間一般の恋人のような関係になれるはずもない。
むしろ、喧嘩こそ減ったが状態は悪化しているといってもいい。
そこに今回の修学旅行というイベントがやってきた。
毎度毎度、それこそ彼らが付き合う前から傍迷惑なケンカに巻き込まれ続けている新羅と門田にしてみれば、この機会に是非とも『普通の恋人』になってもらいたいところなのである。


「いい加減腹を括って欲しいよね」
「…ああ」

特に静雄はな、とすっかり臨也の保護者な門田は言う。
もちろん一足飛びな関係など認めないが、もう少し落ち着いてお互いを見るべきではないだろうか。
そんな風に思っていることなど、彼らにはまったくと言っていいほど伝わっていない。
すでに修学旅行も2日目。それとなく静雄にも臨也にも促してはいるが、今のところ進展の気配はなかった。

「…僕はそろそろ嫌になってきたよ」
「安心しろ。俺もだ」

目の前で、お互いを気にしながらも一定の距離を保って――でも並んでいる――二人を見て。
新羅と門田は大きく溜息をつくのだった。







――昼食。


「なぁ臨也、お前静雄の隣に座れよ」
「やだ」

ぷいっと顔を背けて。
臨也は門田の隣の席から頑として退かないつもりらしい。
静雄はそんな臨也の様子に絶えず不機嫌そうで、隣に座る新羅としても本気で席を交代して欲しいところだった。

「ねぇ、折原くん」
「なんだい岸谷くん」
「…君と静雄って、付き合ってるんだよね?」

そう言ってみる。
すると、

「「当たり前でしょ(だろ)」」

と、臨也だけでなく静雄からも同時に返された。
こんなところばかり息が合ってどうするんだ。そう思ったが、今は流れを変えないためにツッコミは厳禁だった。

「じゃあ、なんで離れて座るのさ。っていうか、静雄の隣に俺が座ってて臨也は嫌じゃないの?僕だったら友達だろうが何だろうが、セルティの隣に誰かが座っているなんて許せないんだけど」
「……心狭すぎだろ。そんなんじゃ嫌われるよ」

ぽつりと呟くような臨也の発言に、一瞬新羅はショックを受けるがいや今はそれよりも!と首を振る。

「!………い、今は僕のことはいいんだよ。君の話をしてるんだから」
「…ふぅん。俺は別に、新羅がシズちゃんの隣に座ったって別に嫌じゃないけど。だって新羅は例の彼女一筋だろ。…まあ、シズちゃんが俺の隣がいいって言うなら、考えてもいいけど」

ちらりと静雄を見る臨也に、いきなり話をふられた静雄はピシリと固まった。
そのまましばらくフリーズして。
それから、視線をうろうろ動かして、ようやく答える。

「俺はできれば手前の隣に座りたい、けどな」
「…じゃあいいよ」

新羅交代、と席を立つ臨也に、二人はやっとゆっくり食事が出来るとほっとして。
そうして席を交代した彼らは、目の前に並べた皿にようやく手をつけた。

「臨也、お前もう少し野菜食えよ」
「やだよ。って言うか、シズちゃんそれゴーヤチャンプルーなんだけど食べれるの?」
「…ゴーヤチャンプルー…?」
「そう。すっごい苦いヤツ」
「…………」

臨也の指摘に静雄がすごく葛藤している。
昼食はバイキング形式であるため、みんな好きなものを取ってきていた。
取ってしまった以上、食べないという選択肢はないのか、静雄の葛藤は相当のものだった。

「手前野菜足りないんだから食えよ」
「やだね」

非常に彩りが悪いことになっている臨也の皿に静雄がゴーヤを乗せようとするが、さっとそれを避ける臨也。
小競り合いの様相だが、ギクシャクされるよりはずっとマシだと他二名は口を出さないでいる。
だいぶ雰囲気は付き合う前のそれ――ただしそこに甘さが加味されている気がする――になってきていた。
やっとこれで何とかなるかも、と胸を撫で下ろす。
しかし、相手は静雄と臨也なのだ。そううまく行くはずもなかった。

「手前俺が食えっていてるのに食えねぇのか」
「なんで俺がシズちゃんの言うこと聞かなきゃいけないのさ」

むっとした表情で首を振って。
臨也は馬鹿だねぇシズちゃんと冷笑する。

「俺は俺、君は君。付き合おうが何だろうが、そこは変わらないんだよ?俺は別にシズちゃんの命令を聞く必要はないわけ。分かるかな?」

その言葉に、静雄は一瞬目を見開いて。
眉を寄せて考え込んだ。
そして。

「じゃあ、手前は俺の言葉なんてどうでもいいって言うのか?付き合ってるのにか?」

とどこをどう曲解したのか、そんなことを言い出す。
やばい止めねば、と二人が思う間もなく、臨也は静雄が誤解したことに気付いているのかいないのか、持ち前のツンデレっぷりを発動してしまった。

「別に、俺はシズちゃんが何考えようが別にどうでもいいもん」

ぷいっとそっぽを向く臨也が本気でないことは、傍から見れば明白だった。
しかし、当事者であり現在いっぱいいっぱいな状態の静雄にそれは伝わらなかったらしい。
そうかよ、と呟いて自身も別の方向を向く。

――ふりだしに戻る、か。

努力空しくすっかり初期状態に戻ってしまった二人に。
新羅と門田はがっくりと肩を落とした。
やっと開放されると思ったというのにと溜息が出てくる。


「もうホント、勘弁して欲しいよね」
「…同感だ」

遠い目をした新羅に、門田は心の底から同意するのだった。














※付き合い初めで色々ギクシャクしてるシズイザと、それに巻き込まれた人たち。

修学旅行である意味があまりない内容になってしまいました。…あれ?
…とりあえずこの話は臨也が素直になれば万事解決なのですがそこでそうはならないのが臨也さんなのです。臨也さんは対静雄さんではツンデレが標準装備だと思っています。
遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした!
リクエストありがとうございました!

実は何度か書き直してる関係で別ver.もあったり…。勿体無い気がしないでもないので一応上げておきます。いろいろ変なところがあっても気にしないよ!という方だけどうぞ→パターンB


BACK




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -