pj0230 | ナノ





so stubborn

※匿名さまリクエスト「イザシズ前提モブ臨」
若干R描写有?






























「…っ、う…や、めっ」
「ははっ、いい格好じゃねぇか情報屋さんよぉ」
「ふっ…んぅ」

ぐちぐちと濡れた粘着質な音を立ててかき回されて。
臨也は唇を噛みしめて声を堪えようとする。
些細な判断ミスだった。
いつもは怠らない警戒が、ほんの僅か他へ逸れた一瞬。
それを狙ったかのように、背後から薬品を染み込ませた布を当てられて。
気付けば、すでに半裸に剥かれて複数の男に囲まれていて。
完全に覚醒に至っていない臨也の腕に、注射針が差し込まれたところだった。
薬で強制的に引き出される快楽に半ば溺れながらも、臨也は生きて帰れたら報復するために一人一人の顔をしっかりと記憶していく。

「おい、顔上げさせろ」
「あ?」
「口、空いてるだろうが」
「でもよ、大丈夫か?」
「はっ、さすがにもう噛みつく元気はねぇだろうよ」

ぐいっと髪を掴まれ顔を上げさせられて、臨也は痛みに低く呻いた。
こんな連中のモノをくわえなければならなくなった自分の迂闊さを呪わずにはいられない。近づけられて、歯を食いしばって口内への侵入を拒むが、鼻を刺激する独特の臭いに軽くえづきそうになった。
こんなもの銜えるんだから、シズちゃんってばすごいなぁ。現実逃避気味に場違いなことを考える。

「おら、口開け」
「ん…っぅう」
顎を掴まれて、抉じ開けられそうになって、最後の足掻きで相手を睨みつけたその瞬間。
ド派手な音がして、部屋の扉が吹き飛んだ。巻き込まれる形で近くにいた男も宙を舞う。

「…っ!?誰だ手前!!」
「ああ"?なんで俺が手前らみてぇな下衆野郎どもに名乗んなきゃなんねぇんだよ」
「…あ、ま…まさか」
「金髪にバーテン服…平和島静雄か!?」

聞き覚えのあるドスの利いた声と、焦りと恐怖を滲ませた声。
薬のせいか現実感の薄いふわふわとぼやけた頭は、それらを正確に判別してはいなかった。顔を巡らせる気力もなく、ただ、慌てて離れた男の、ずるりと体内から抜け出したものの気持ち悪さに呻いて、臨也はぐったりと体の力を抜いて目を閉じる。
だが、気を失う事はできなかった。
そうする前に、髪を掴まれ引き起こされて、臨也の首筋にナイフが突きつけられたからだ。
重い瞼を何とか開けば、見慣れた細身の男の姿が映る。

「平和島静雄!こっちを見ろ!!」
「あ?」
「こ、こいつがどうなってもいいのか!?」
「…あー…」

――あーあ…馬鹿だねぇ。シズちゃんが俺のことなんか気にするわけないじゃん…
大声で笑い出したい気分だったが、今の臨也にはそんな力は残っていない。
代わりに小さく息を吐き出して、口の端を微かに釣り上げる。
そんな臨也の反応に気付いたのかどうかは分からないが、静雄も口の端を持ち上げた。

「…ったくよぉ…いい様だな臨也くんよぉ?」
「はは……酷いなぁ、しずちゃん」
「っ…手前これが見えねぇのか!?」
「…いーや、見えてるぜ?」

静雄の返答は端的で。そして、酷く近くで聞こえた。
ごしゃりと音がして、首にチリッと痛みが走る。
体を押さえていた手が緩んで、力の入らない体は重力にあらがうことなく滑り落ちて。
「ったく、世話が焼けるな手前は」
ぽすっと軽い音を立てて、静雄の腕の中に収まった。
触れた腕の思わぬ優しい動きが薬で高められた性感を煽る。ぞくり、と背筋が粟立った。

「っ…ぅん」
「!なに薄ら寒い声だしてやがるっ!?」
「…うすら、さむい…ってひどくない…?シズちゃんだって、似たような声、だすのにさぁ…」
「っ!!!」
「ははっ…くすり、盛られちゃってるから…っだし…文句、いわないでよ」
「………」

小さく、溜息がつかれる。
のろのろと顔を上げれば、険しい表情をした静雄が睨み付けていて。
臨也は、困ったように苦笑した。

「あーあ…まさか、シズちゃんに助けられるなんて…さぁ…」
「……大丈夫、か?」
「たぶん、ね…くすりが、抜ければ平気だとは思うよ…」

汗で張り付いた髪を払って、覗き込まれて。
予想外に真剣な目に戸惑う。

「平気だよ…べつに、大したことじゃないし」
「…新羅んとこ、行くぞ」
「うぇ、これを新羅に見られるのは…ちょっと嫌だなぁ…」
「うるせぇ、黙ってろ。こういうのはちゃんと処置しねぇといろんな意味で後がヤバイ」
「…なあに?…っ…経験者は語る…ってやつ?」

わざとらしくくつくつ笑って言ってやれば、静雄は心底嫌そうな顔をして。
それでも臨也を抱え直し、抱き上げた。

「…臨也」
「…なにさ」
「…早く助けられなくて、悪かった」
静雄の言葉を聞いた瞬間、臨也はかっと頭に血が上るのを感じて、叫ぶ。
「っ!なんでシズちゃんが謝るんだよ!?俺は、別に助けて欲しいなんて思ってなかった!」
「でもよ」
「うるさっ…いっ…」

さらに文句を続けようとしたが、暴れた臨也が落ちないように再度抱え直した静雄の手が腰に触れてしまい、ひっと息を呑んだ。
薬の効果は切れたわけではない。むしろまだ当分続くだろうそれは、またじわりと思考を犯し始めていた。
そんな臨也をじっと見つめて、唇を噛みしめて耐える姿に「悪ぃ」と謝罪して。
静雄は投げ捨てられていたコートを拾い上げて臨也を包む。

「…っ…別に、助けてくれなんて…言ってないし」
「うるせぇ黙ってろ」
「だ…って、さ」
「…っ」

なおも言葉を続けようとする臨也に、静雄はついに我慢できずに怒鳴った。

「うるせぇうるせぇうるせぇ!いいか!一回しか言わないからよく聞きやがれよ!」

すごい剣幕に、さすがの臨也も一瞬黙り。
それから、「…なにさ」と小さく問う。

「いいかよく聞けよっ?」

獣の威嚇にも似た声音。
どこか必死な静雄のそれに頷く。

「手前は俺のもんだ!だから俺以外に触らせるんじゃねぇ!」

……。
一瞬思考を――薬の効果によるドロドロとした欲望さえ――完全に停止させ、臨也は静雄の顔をまじまじと見つめた。
そして、途方に暮れた声を出す。

「…俺、シズちゃんに抱かれる気ないんだけど…」
「だぁぁあああ!そういう事じゃねぇぇえええ!!」
「…うるさいなぁ」
「手前命の恩人にそういう口きくか!?」
「だーかーらー助けてなんて言ってないってば」
「〜〜〜ッ」

静雄の怒りを煽るような物言いしかしない臨也に、静雄はこいつは怪我人怪我人と脳内で唱え必死に怒りを押し殺す。
そうでもしないと腕の中の最低野郎を放り出してしまいそうだった。
だから。馬鹿じゃないのと呟いた臨也の耳が赤かったことに、静雄が気付くことはなかったのだった。













※ひねくれ者の話。

かっこいいシズちゃんかぁと考えているうちに目標を大きく逸れました…。
タイトルは苦肉の策と言うか何と言うか…。とりあえず「ひねくれた」の意味で使ってます。
遅くなってしまい申し訳ありませんでした!
リクエストありがとうございました!


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