pj0228 | ナノ





連戦連敗

※匿名さまリクエスト「恋人設定。10枚くらい上手の幽に図星刺されて静雄に八つ当たりするも…な臨也の話」










「臨也さんって、兄さんのこと本当に大好きなんですね」

その一言に。
臨也はピタリと動きを止めた。

「…ねぇ、幽くん。確かに俺は君のお兄さんと付き合ってるよ?でも、“大好き”はないから」
俺がシズちゃんを大好きとか、ありえないし。
そう反論するが、幽は小さく首を傾げ、
「でも好きですよね」
と一切譲る気はないらしい。
なんなんだ。この会話してるのに会話が成立してない感じ。誰かを思い出す。…ああ、そうだ。シズちゃんだ。シズちゃんと話してるみたいな感じなんだ。さすが兄弟。人の話なんか聞いちゃいないとこまでそっくりだ。
激しく脱力し、臨也はあのね、と口を開いた。

「俺はね、成り行きとは言えシズちゃんと付き合い始めたし、それなりに好きだけど、そんなの比べものにならないくらいシズちゃんが嫌いなんだよ。そこだけは理解してほしいな」

誤解しないでよと、嫌いの部分に力を込めて言う。
だが。
幽は無表情のまま、また小さく首を傾げ。
それから、抑揚の乏しい声で指摘した。

「でも、臨也さんって兄さんの動向逐一調べてますよね?あと、この前、兄さんが道を聞かれて女の人と離してるの偶然見かけて、その後一週間兄さんと口きかなかったですよね?」

こんな時だけ雄弁になるな、平和島兄弟!
何でそれを知っているんだ、とか。実はストーカーか何かなのか、とか。突っ込みどころはいくらでもあったが。
臨也は思い切り狼狽えて、身を引く。
ねぇ、臨也さん。と続ける幽に。
さらに聞きたくないと咄嗟に耳を塞ごうとしたが、その両手はあっさり幽の手に捕らえられ、遮られた。

「臨也さん、あれって、嫉妬じゃないんですか?」
「ッ」

――ああそうだよ!悪いか!?確かに俺は嫉妬したよ!ああクソッ!っていうか、なんで君がそれを知ってるんだ!?

キッと両腕を掴んだままの相手を睨むが、相手の表情は変わらない。
感情の変化の見られぬその顔に、臨也は苛立ちながら、低く、威嚇するような声を出す。

「離してよ、幽くん」

じっと見つめてくる幽は、言葉に応じる気はないらしかった。
何度か瞬きして、それでも相変わらず無表情なまま。
馬鹿にされているような気分になって、唸る臨也に。
幽はそこでようやく小さく息を吐き出して、口を開く。

「臨也さん」
「…なに?」
「たまには、素直になった方がいいと思います」

するりと手が離される。

「〜〜〜〜ッ!!!」

よけいなお世話だ!!
心の中でそう叫んで。
臨也は「じゃあ」と言って、くるりと向きを変えて去っていく背中をきつく睨みつけた。





***





「シズちゃん!君の弟何考えてんの!?俺に説教とか何様のつもり!?」
「あ?」
「だーかーらーッ!幽くんのことだよ!なんで俺が説教されなきゃいけないわけ!?」
「………」

いきなり家にやって来て八つ当たり気味に文句を言う臨也に。
静雄はただ黙って、その顔を見つめる。
それを不審に思い、臨也は眉を寄せて首を捻った。

「……?…しずちゃん?」
呼びかける声も疑問が滲んでいる。
そんな臨也をじっくり観察しながら、静雄は小さく気付かれぬ程度に口角を吊り上げた。

「なぁ、臨也」
「何さ」
「手前よぉ」
「何だよ!?」
「結構かわいいとこあんのな」
「…………は?」

なんだろう。ものすごく、嫌な予感だ。
そう思い、固まったまま動けない臨也に。
静雄はくつくつと喉の奥で笑って、屈んでその目を覗き込んでくる。

「俺は手前は俺のことなんか結局嫌ってるだけだと、ずっと思ってたんだけどなぁ」
やはり、静雄は弟から何か聞いているらしい。
十中八九、焼きもちの件であると理解できて。
臨也はじり、と後退した。
現在の状況は非常に不利だ。口でさえ勝てる見込みがない。

「……し、しずちゃん…その話はもう止めよう?」
「止めねぇ」

にやりと笑った静雄が、顔を近づける。
一歩下がる臨也。一歩進む静雄。
しばし、同じことが繰り返され――。

「ッ」

どん、と壁に当たって。
臨也は息を飲んだ。

「しず、ちゃん…」
「なぁ、臨也」
「………」
「素直になれよ」
「…ッ」

耳元で囁かれて、顔を真っ赤にする臨也に満足げに笑んで。
静雄は、さらに追い打ちをかけた。

「臨也、好きだ」
「ッ!!!」

――なにそれなんなの!?っていうかそれを今言う!?いじめ!?いじめなのかコレッ!?

今度こそ耳まで真っ赤になって、臨也は耐えきれず俯いた。
頭の中で反響する静雄の声に、動悸が激しくなり、まともに相手を見ることなど出来そうもない。
だから。
素直になれよ、と囁きかける声の主が、その身を持ち上げて抱き抱えても。
そのまま運ばれて、ベッドの上に転がされても。
開き直れない臨也は低く柔らかい響きの囁きを聞く度に身を硬くして。
ろくに抵抗もできないまま、結局、最後まで静雄の為すがままにされてしまうのだった。








――やっぱり俺は平和島兄弟は苦手だよ。
後日、新羅宅でそう愚痴る臨也は、いっそ憐憫を誘うほど憔悴しきっていたそうである。













※平和島兄弟>臨也な話。臨也さんは平和島兄弟に勝てません。

図星を指されて、とのことで、最初はまったく静雄さん関係ない内容を考えてたんですが、纏まらなくて急遽変更。おそらく…というかほぼ確実に期待はずれな出来です。ごめんなさい…。
そもそも何であの二人が話してたんだとかは気にしてはいけません。(←考えてない)
遅くなってしまい申し訳ありませんでした!
リクエストありがとうございました!


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