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無邪気に触れる手

※年の差シズイザ。小学生臨也で別人警報。
















「シズちゃんシズちゃん」
何故か俺を怖がらないで懐いている子供が、袖を引っ張ってくる。
「シズちゃん聞いてるの?」
「ああ」
頷けば、本当かといわんばかりに大きな目が俺の顔を見上げてきた。


――折原臨也、9歳。
出会いは偶然で、懐かれたのも偶然。
臨也は必然だと胸を張っていたが、そもそも正しく意味がわかってるのかも怪しい。
ただ、その日から俺はこの子供と一緒にいることが多くなった。
学校が終わる頃にふらりと現れて、借金の負債者を痛めつける俺を恐れるでもなく大人しく少し離れたところで待っている。
最初から臨也は俺を恐れなかった。少し脅して遠ざけようとしても離れなかった。
そして、少し変わった独特の赤味の強い目は、今日も変わらず人懐こい色でこちらを見つめている。


「ね、シズちゃん」
呼びかけられて視線だけで答える。

懐かれるのは悪い気はしない。誰にも言わないが俺は小さくてかわいいものが好きだ。
臨也は間違いなくそれに当てはまる。
ああ、そうだな。たぶん俺はすっかりこの小さな生き物に絆されてしまっているんだろう。
仕事の合間の歩きながらの会話は、いつものことで。
歩幅を合わせようと必死になる臨也に合わせて少し速度を落として歩くのもいつものことだ。

「あのねシズちゃん。俺決めたんだ」

じっと俺を見ながら妙に嬉しそうな誇ったような顔をする臨也。
足元が疎かになるから前を見ろと言おうとした時。

「俺、大きくなったらシズちゃんと結婚するから!」

言われた言葉に、一瞬思考が止まった。
次いで、なんてありがちな展開だと思った。…ああいや、あれは親に言うもんだったか?

「臨也、男同士じゃ結婚はできねぇよ」
「うん知ってる」

こくりと頷いた子供を見下ろす。
上機嫌にニコニコ笑って俺を見る臨也に、首を傾げた。

「は?」

間抜けな声が勝手に出る。
それに声を立てて笑って、臨也は俺の手に手を重ねてきた。

「知ってるよ。でもいいんだ。結婚するって決めたから」
「…意味がわからねぇよ」
「するったらするんだよ。それとも、シズちゃんは俺のこと嫌い?」
「…嫌いじゃねぇよ」
「じゃあ、結婚しよう?」

無邪気に言われて天を仰ぐ。どうしろというんだ。

「結婚ってのは好きな奴とするもんだ」
「俺はシズちゃんが好きだよ」
「………」
「シズちゃん、俺とずっと一緒にいよう?」

子供の戯言だ。すぐに忘れてしまうに決まっている。
そうわかっているのに、不覚にもぐらっときた。
あ、いや。言っておくが俺にそういう趣味はねぇ。ただ、自分に何故か懐いているこの子供の言葉がひどく胸に響いただけだ。
ずっと誰かに言って欲しかった言葉だったからだ。
ああチクショウ。ガキの戯言だってのに、クソッ。

「…手前が大きくなっても同じことが言えたら、考えてやるよ」

辛うじて平静を保った…つもりだ。実際にそう見えたかはわからないが…態度で答えれば、子供が嬉しそうに笑う。

「約束だからね!」

きゅうっと握られた手のに暖かさに俺の胸も温かくなった気がして。
まあいいか。と心の中で呟いて、小さな手を握る力をわからない程度にほんの少しだけ強くした。



7年後、俺はこの時の自分の発言の無責任さを呪うことになるんだが、まあそれは別の話だ。














※ちびイザといっしょ。
臨也さんの別人警報は7年後にはきっちり解除されちゃってます。


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