pj0227 | ナノ





もしも君が、

※匿名さまリクエスト「シズイザで臨也の目が見えなくなる話」















臨也の目が見えなくなった。
それは、頭に静雄の投げたゴミ箱の直撃を受けたのが原因で。
当たりどころが悪かったとしか言えなかった。





「臨也、隣座るぞ」
「んー…いいけど、変なことしたら怒るよ」

しねぇよ、と答えて。
静雄は臨也の側に座る。
加害者であり恋人であるという理由で、新羅から一時的に臨也を預かるよう言い渡された。
それ自体は仕方ないし、他の人間に任せる気もないので、まあ問題ない。
だが。

「シズちゃん?」

首を傾げて名を呼んでくる相手の目を覆う白い包帯が、酷く痛々しくて。
静雄は今更ながら自分のしたことを少しだけ後悔する。
もしこのまま見えなくなってしまったら。そう思うと、重く、複雑な気持ちになる。
なぜなら――、

「しーずちゃん、なーに考えてるのさ」
「…別に」
「嘘。どうせシズちゃんのことだから、俺のせいで、とか、責任とらないと、とか考えてるんでしょ?ホント真面目だよねぇ」
「………」

静雄の思考を中断させた臨也の言葉は、半分は間違いではなかった。
答えず沈黙で応じると苦笑される。

「だいたいさぁ、いっつも俺に自販機とか投げてくるくせにこういうことになる可能性は考えてなかったわけ?馬鹿だねぇ」
「…手前は、考えてたってのか」
「そりゃ、避け損なえば結構危険なもの投げられてるしね。まあ、まさか俺も目が見えなくなるとは思わなかったし、治ってくれないと今の仕事は続けるの難しいだろうなーくらいは思うけどさ」

臨也はくすりと笑って、そこで一息入れた。

「シズちゃん、少なくとも俺はシズちゃんに責任をとってほしいなんて思ってないよ?っていうか、正直、そんな考えで一緒にいられても迷惑。辛気くさい顔したシズちゃんにずっと側にいられたら、たとえ見えなくても気が滅入るね絶対」
「…うぜぇ、少し黙れ」
「うん。その方がシズちゃんらしい」

クスクス笑って、臨也は静雄に手を伸ばした。
静雄が探るようにさまよう手を取ってやれば、ふわっと柔らかな笑みを浮かべる。

「どうした?」
「うん。いや、シズちゃんが優しいなぁと思って」
「あ?」
「だってさぁ、いつもだったらこんなに長い時間一緒にいて、あんなふうに喋ってたらシズちゃん絶対キレるよ」
「…それは手前が悪い」
「まあそうかもしれないけどさ。なんだかこういうのも思ったより悪くないなーとか思っただけ。なんか落ち込んでるのが鬱陶しいけど」
「…手前な」
「でも、シズちゃんも悪くないと思ってるでしょ」
「あー…かもな」

大人しくて素直な臨也など、そうそう拝めるものじゃない。
目が見えないことは臨也の行動を著しく制限し、結果として静雄を怒らせないよう行動させているらしかった。
まあ、自力で静雄から逃げられない以上そうせざるを得ないのだろうが。

「痛くねぇか」
「頭は痛いよ?」
「…悪ぃ」
「俺にケガさせて謝るなんてシズちゃんらしくないよ?」
「…そうだな」

確かにそうだ。
自分らしくない。
だが、それでも静雄は謝りたかった。ケガをさせたことだけでなく、それ以外のことでも。

「触るぞ?」
「うん、どうぞ」

そっと頬に手を触れて撫でると、臨也はくすぐったそうに首を竦める。
そのまま首の後ろに手を回して。
少しだけ引いて、近づいた顔にキスを落とした。

「ん」

額、頬、唇。
目を覆う包帯の上から瞼にも。
心行くまで羽のような軽いキスを繰り返して。
静雄は満足げに息を吐いてから、苦笑した。
目が見えないだけで臨也はこんなに無防備で。
静雄にされるがまま、大人しく身を預けている。
信用か信頼かは知らないが、信じられているという事実が、少し心に重い。

――手前は知らねぇんだろうな…

臨也を預かれと新羅に言われた時、頷いた静雄の頭の中を過ぎったものが何であるのかを。

「シズちゃん?」

さらりと手触りの良い髪を梳く。
もし、目が治らなければ、臨也は今までのような生活はできなくなる。
そうなれば、責任を取るという建前の下、これがずっと自分だけのものになると。
そう一瞬でも思ってしまった自分が嫌だった。

「なぁ、臨也」
「何?」
「目、治るまではここにいろよ」
「えー……まあ、いいけどさぁ」

あ、でも電話くらいはさせてよ。と言う相手に好きにしろと応じて。
静雄は臨也を抱きしめる。

「シズちゃん?何?」

首を傾げる臨也の目が見えないのをいいことに表情を取り繕うことはせず、静雄は自嘲の笑みを浮かべた。
せめてこの目が治るまでは、手元に置いておきたい。
いや、いっそのこと治らなければいいのだと。
そう思う身勝手な感情に蓋をして。

「早く治ると良いな」

静雄は偽りの言葉を口にした。
















※独り占めするひとつの方法。

最初はドシリアスな話で考えていたのですが、前後編どころか中編くらいになりそうな勢いだったので断念しました。結果、薄暗い話に…。絶対求められているのはこんな話じゃないですよね。ごめんなさい…。
元々考えてた方の話は余裕があればそのうち連載か何かでやりたいと思います。(でも予定は未定)
あ、この後臨也さんの目が治るのかどうかはご想像にお任せします。個人的には治らない方が面白い気がします(外道)
リクエストありがとうございました!


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