pj0225 | ナノ





予想外な出来事

※匿名さまリクエスト「無自覚シズ⇔イザ。助けられて自覚&赤面する臨也とそんな臨也にドキッとする静雄」










雨が降った翌日。
臨也は何となく面倒な気分になりながら、仕事のために池袋に出向いていた。静雄に会わないように細心の注意を払ったつもりだった。
だが、そうそう世の中上手くは行かないもので。

「げ、シズちゃん」

ばったりと出会ってしまった相手に、臨也は一瞬固まる。
そして、次の瞬間にはくるりと向きを変えて走り出した。

「手前臨也!池袋に来るなって何度言ったらわかるんだぁぁああっ」

後ろから追いかけてくる声と殺気。
毎度のことながら本当によくそこまでしつこく怒れるものである。
本日一個目の投擲物は静雄の至近にあったポストだった。
飛んでくるそれを確認し軽く避け、そのまま走り続ける。
次は標識、さらにゴミ箱。手当たり次第に掴んでは投げて追いかけてくる相手のスピードはそれほど速くないが、油断すれば投げられた凶器に当たりかねない。必然全速力で逃げる訳にも行かず、臨也は面倒だと呟いた。
今日は仕事で来たのだ。静雄に構っている暇はない。

「このノミ蟲がちょろちょろ逃げ回るんじゃねぇ!」
「馬鹿言わないでよ!逃げなきゃ殺されるじゃないか!」
「当たり前だ!手前は殺すって決めてんだよぉ!」

話の通じない単細胞はこれだから嫌だ。
毎度毎度同じような台詞を並べられても面白くも何ともない。

「今日は俺、君と遊んでるわけにはいかないんだよね!だから見逃してくれないかなあ?」
「なんで俺が手前の頼みを聞かなきゃなんねぇんだっ」
「…はは、だよねっ」

投げられた自販機が地面に叩きつけられて派手な破壊音。
臨也はそれに顔をしかめて、それから地面を蹴った。
たった今壊された哀れな自販機に飛び乗り、そこから一気にビルを駆け上がる。
手摺り、配管、雨樋を巧みに利用し上まで逃げようとして。

「げ」

次の目標地点に雨水が残っているのに気づいた時にはすでに遅く。
ずるっと勢いのまま着地した足が滑って――

「うわっ」

こけた。
当然、そのまま落下する。
ひゅっと息を飲んで、臨也は衝撃を予感して目を固く瞑った、が。
予想に反して、衝撃はずいぶんと軽く。しかも、何故か妙に暖かい。あれ?と思い恐る恐る目を開けて。

「…シズちゃん…?」
「手前な、もう少し気をつけろ」
「………」

はあ、と溜息をついた静雄の顔がすぐ側にあった。
どういうわけか、落下した臨也が行き着いた先は静雄の腕の中だった。
静雄に抱きかかえられるも同然の状態で、さらに、

「ああ畜生、ビックリしたじゃねぇかよ」

と、どこかほっとしたような呟きが耳元で聞こえて、臨也は「う、え?」と意味のない声を出す。

――え、え、え?何、俺今、シズちゃんに抱き締められてるわけ…?

無意識なのだろうぎゅうっと抱き締めてくる腕は小刻みに震えていて。
臨也はぱちりと瞬いた後、ぼっと音を立てそうなほど一気に赤面した。

――いやいやいやありえないでしょ!?何それどういうことっ!なんでいまさら俺こんなにドキドキしてんだよっ!?

急激に上がり始めた心拍数。
それに混乱しきって、臨也はあわあわと僅かに暴れ出す。尤も、そんな臨也の抵抗など静雄にはないに等しかったのだが。
とにかく心臓に悪いこの体勢を何とかしたかった。

「ちょ、ねぇ!シズちゃん!?」
「ああ、悪ぃ」

臨也の戸惑いを多分に含んだ声を勘違いした静雄は手を離そうとして――

――なんて顔してんだよ、こいつ…。

静雄は唖然とした。
真っ赤になった顔。少し潤んだ瞳。しかもいまだ抱き締めたままの身体はやけに華奢で壊れそうで。

「ッ」

離したくないと訴える脳と、どきっとしてしまった自分を頭をブンブン振ることで振り払う。

「し、しずちゃん…あの、さ…できれば離して欲しいかなーって…」
「う、わっ…悪い!」
「え、あ…いや別にいいんだけど」

お互いなんとも言えない気分のまま離れる。
片方は自分の気持ちに気づいてしまった故にぎこちなく、片方は妙に高鳴る心音に半ば混乱をきたして。
視線を合わせることさえ勇気のいる状態で、二人はじりじりと互いの距離を開けた。

「た、助けてくれてありがとね、シズちゃん」

――ッ!!!



上目遣いに自分を見た臨也の顔。
僅かに照れたようなその表情に原因不明のパニックに陥った静雄は、結果的に臨也を取り逃がしてしまったのだが。
そのことに彼が気づいたのはずいぶん経ってからのことだった。














※些細なきっかけで自覚する話。

ちょっとゴチャゴチャ感がある上にあっさりという微妙感漂う作品に…。すみません。(しかし毎回謝ってるな…)
個人的にはもう少しアクションして欲しかったのですが…技量的にちょっと…。
こういうものを求められていたのではないとは思うのですが、これが限界でした!
リクエストありがとうございました!


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