pj0224 | ナノ





晴れのち自販機、ところにより、

※小枝さまリクエスト「猛獣設定で甘々池袋デート」
先に謝っておきます。こいつらにデートは無理でした。ごめんなさい。












「…なんで俺こんなとこにいるんだろうね」

そう臨也が遠い目をして低く呟いたのも仕方がない。
ここは池袋駅東口から数分の、60階通りの入り口にあるカフェ、ミルキーウェイ。
周囲は若い女性やカップルであふれていて。
そして、臨也の目の前で星座をモチーフにしたというパフェをパクつくのは平和島静雄だ。
本当に、なんでこんなところにいるのだろうか。
もう、それ以外言いようがない。

「ん?どうした?」
「うん。どうもしないから好きなだけ甘味に埋もれるといいよ」

そしてそのまま糖尿病にでもなってしまえ。
そう思いながらも臨也はにこにこと笑って見せた。
それに何を思ったか、目の前にスプーンが差し出される。
上に鎮座するイチゴと生クリーム。
いや…これをどうしろと。

「食わねぇのか?」
「………貰うよ」

なぜ、はいあーんなどという恋人の定番をこんな衆人環視の中でやらねばならないんだ。
世の理不尽さを呪うしかない。
臨也はぱくりと差し出されたスプーンに食いつき、さっさと離れて租借する。
視線が痛いことこの上なかった。

「ねぇシズちゃん」
「ん?」

むぐむぐと頬張っていた静雄がちょっと待てと手で示すのに頷いて。
臨也は自分のコーヒーを一口啜る。

「…で?なんだ?」
「俺、もう帰ってもいいかな?」
「あ゛?」
「ううん。なんでもないよ。それ食べたら次どこに行こうか?」

静雄の鋭い視線でぎろりと睨まれて即座に首を振った。帰宅の提案は失敗らしい。
はふ、と溜息をついて。
臨也は静雄が食べ終わるのを待つことにした。



そもそも何故こんなところで臨也が静雄とデート紛いのこと――否、静雄はデートだと断言するだろうが――をしているのか。
すべては昨日の臨也の失言にあるのだ。
『そう言えば、俺たちってデートらしいデーとしたことないよね』
バラエティ番組を見ながらふとそう口にしたのがすべての元凶。
なんの気なしの発言が、この図体ばかりでかい幼馴染のいまいち在処のわからない琴線に触れたらしい。
有無を言わさぬ勢い…半ば脅しだった…でデートの約束を取り付けられた臨也は、翌日の仕事を休みにしたことを酷く後悔したのだった。



…さて、どうやって逃げるかな。
臨也には静雄のデートプランに最後まで付き合う気など毛頭ない。
今でも十分一杯一杯なのだ。そんな羞恥プレイは死んでもごめんだった。

「次、どこ行こっか」
「あー…どこでもいいけど」
「けど?」
「なんかデートらしいとこにしとくか」

………。
やだもうこの人。
本気でデートする気らしい幼馴染に臨也は遠い目をする。

「あ」
「あ?」

着信を告げる携帯の振動。
確認する。

「ちょっと電話してくるね」
「……ああ」

携帯を指さして言えば、静雄は不満そうな顔で頷いて。
それに笑いながら、臨也は席を立った。
本当はメールなんだけどね、と思いながら静雄から離れて、さて、と逃亡策を考える。逃亡するにしても静雄の機嫌をあまり損ねるのは得策ではない。あくまで、逃げねばならない状況を作り出すべきなのだ。

「うーん…」

ああでもないこうでもないと考えているうちにそこそこ時間が経過していたらしい。
静雄がお金を払って店に出てきたのが見える。

「あれ?出て来ちゃったんだ」
「手前がいつまでも戻ってこねぇからだろうが」
「ごめんごめん。ちょっと考え事しちゃってさ」
「仕事か?」
「うん。そんなとこ」

ふぅんと言って、不満そうな顔を隠さない相手の様子に。
ああかわいいなぁシズちゃんは。そう思って、臨也は笑う。

「シズちゃんこっち」
「?」

手を引いて適当に道を何度か曲がって、路地裏に入り込んで。
誰も見ていないことを素早く確認してから、くっと胸元を掴んで引き寄せて。
軽く、触れるだけのキスをする。

「ん」

ちゅ、と音を立てて離せば。
名残惜しそうに追ってきた唇に優しく食まれた。

「は、」
「…いきなりなんなんだよ手前は」
「うん、ちょっとね」

もう一回しようと誘えば唇が覆われる。
小さく何度も繰り返されるバードキスから、次第に深く貪るディープキスへ。
ちり、と灯った欲の気配を精神力で無理矢理ねじ伏せて。
臨也は静雄の背に手を回し――

「…手前、何しやがる」
「はは、あいかわらず化け物じみてるねぇ」

突き立てたナイフの刃先は5ミリで止まっていた。

「なぁにが言いてぇんだ臨也くんよお?」
「とりあえず、一回死んできたらいいと思うよシズちゃんは」
「…はっ、死ぬのはよぉ、手前の方だこのクソノミ蟲がぁぁあああ!!」
「うわ、やばい」

予想通り、切れたらしい静雄に慌てて逃げ出して。それでも、とりあえずデートは回避できそうだと臨也は安堵の溜息をついたのだった。






それからしばらくの逃走劇の後。
二人はまたどこかの路地裏にいた。
静雄のイライラはすでに解消されているらしく、穏やかな表情で煙草をふかしている。

「ねぇシズちゃん」
「…なんだ?」

臨也が顔を覗き込むような体勢をとると、何を思ったのか煙草を携帯灰皿に押しつけてから腰に手を回してきた。
そのまま素直に抱き寄せられて、臨也は、シズちゃんってホント単純、と笑う。
うるせぇと返される声を心地よく感じながら、ふと思い出したことを声に出す。

「シズちゃん、俺はデートするならあまり人のいないところが良いなぁと思うんだよ」
「…あ?」
「二人でいたいし、人に注目されながらデートするのは落ち着かないしね」
「……そうかよ」

二人でいたい、の部分に反応したらしい静雄が「俺も二人がいい」と小さく呟くのを聞いて、やっぱりシズちゃんはかわいいなぁと臨也は満足げに微笑んだ。
かわいいかわいい幼馴染の顔を見つめて、提案する。

「だから今日のデートはここまで。また今度、ちゃんとデートしよ?」

臨也の言いたいことはわかったのだろう。
はあと溜息をついて、静雄が仕方ねぇなと呟いた。

「仕方ねぇから、手前のプランに乗ってやるよ」
「あはは、がんばって考えるからまた、ね」

ちゅっと触れるだけのキスを交わして。
二人は楽しげに笑い合った。















※なんだかんだ言ってバカップル。

甘々デートにはなりませんでしたすみません!素直にするはずがないな…とは思ってましたが、書いた本人もここまで(脳内の)臨也さんに拒否られるとは思ってませんでした…。
リクエストありがとうございました!リテイクはいつでも受け付けますので!


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