pj0223 | ナノ





風邪引きと世話焼きと一時休戦のはなし

※匿名さまリクエスト「無自覚シズ⇔イザで風邪ひき臨也が殺し合いの最中に倒れる話」















「いぃざぁやあぁぁ!」
「っ…くぅッ」

ザザッと音を立てて、足が地面を擦る。
踏みしめる硬いアスファルトの感触が今日はひどく不安定に感じて、臨也は小さく深い息を吐いた。
すぐ脇を掠める道路標識を避けようとして、思うように動かない足に苛立ちを感じる。
くらりと歪む視界が気持ち悪い。

「これは、思ったよりやばいかも…」

その日は朝から熱があった。
だが、まだ新宿を出るころはここまで酷くなくて。
だから多少の具合の悪さを堪えて取引のために池袋まで出向いたのだ。

「避けてんじゃねぇ!」
「いや、避けなきゃ、死ぬし…っ」

投擲されたものをかわし、臨也は苦しげに息を吐き出す。
風邪を甘く見るものじゃないなぁと思うが、後の祭りだ。
ナイフを取り出して応戦しようという気も起きない。
相当熱が上がっているのか、身体が火照って視界がぼやける。

「…う…やば、い」

ゴミ箱を避けた拍子に。
ぐらりと視界が揺らいだ。
…最悪。
そう思うが、さすがに限界だった。
倒れる込んだ衝撃と急速に薄れる意識。
己の名を必死に呼ぶ天敵の声が聞こえた気がしたが、臨也はそれを確認することもできず目を閉じた。







「…?」

布の感触が指に触れて、臨也はゆっくりと目を開けた。
その視界に映ったのは黄色く汚れた天井だ。

「…ここ」
「目ぇさめたか」

聞こえた声に、思わず固まる。
ぎぎぎっと音がしそうなほどぎこちない動きで横を見て。
予想通りの人物がいて、また固まる。

「……」
「…ったく、手前も風邪なら新宿で大人しくしてろよな。いきなりぶっ倒れたりするな」
「…なんで助けるかなぁ」
「うるせぇ、俺は弱ったやつにとどめを刺す気はねぇんだよ」
「………」

ちょっと待ってろと言われて、臨也はわけが分からぬまま頷いた。
どこかへ行った静雄はすぐに戻ってくる。その手には水の入ったコップがあった。

「飲めるか?」
「……」
「おい?」
「……シズちゃんが俺に優しいとか、普通にきもい」
「殴るぞ」

そう言いながらも殴る気はないらしい静雄に、臨也はのろのろと起きあがってコップを受け取る。

「…ありがと」
「おう」

コップの中身は普段は絶対飲みたくないまずい水道水だったが、熱で火照った体には冷たくて心地よかった。
飲み干すと手が伸びてきてコップを取り上げる。もう一杯飲むかと聞かれて首を振って、臨也はいまだ頭を急に動かすと視界が揺らぐ感覚に目を閉じた。

「…新羅呼ぶか?」
「いい。たぶん、平気」
「……ならいいけどよ」

気を抜くとそのままベッドに逆戻りしそうな状態だ。だが、もう少し休めば動けそうではあった。
と、静雄が溜息を付く。

「寝ちまえ、今日くらいは殺さないでやるから」
「…ん…でも」
「いいから寝ろ」

ぐいと押されてベッドに倒れて、その衝撃でぐらぐらと脳を揺らされるような不快感に臨也は苦しげに呻いた。

「ひどいよ、シズちゃん…」
「あー…悪ぃ」
「ホント、最悪」

耐えられそうにない気持ち悪さに、はあ、と重い息を吐き出して。
諦めて体の力を抜いて目を閉じて。

「少し、寝る」
「そうしろ」

呟くように言った臨也の髪をくしゃりと撫でる手のひらが意外に大きかった。「礼は言わないよ」という憎まれ口に返る声さえどこか優しくて、臨也はなんとなく悔しい気がする。

「シズちゃんなんか嫌いだよ」
「俺も手前が嫌いだから安心しろ」

そんな言葉まで優しい声とか、やめてよ。
そう言いたかったが、かと言っていつもの口調で言ってほしいわけでもなく。
臨也はそれ以上何も言わずに眠ることにした。















※無自覚に優しくしちゃうシズちゃん萌え(何)

弱ってる臨也さんはちょっと素直だといいと思います。
なんか中途半端な話ですみません…。というか、タイトルが仮でついていたやつのままで本当にすみませんっ!
リクエストありがとうございました。リテイクはいつでも受け付けます!


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