pj0222 | ナノ





箱庭遊戯

※匿名さまリクエスト「イザ⇔シズで小さくなった(記憶なし)の臨也にメロメロな静雄」











「…だれ?」

新羅の横できょとりと自分を見上げるガキに。
俺は固まったまま一言呟いた。

「…ありえねぇ」

そのガキは、臨也だと直感で分かってしまった自分が嫌だった。


新羅が言うには、薬の効果は長くても数日。
何故か呼ばれて連れて帰れと言われて、なんで俺がと思ったが、このまま新羅のところに置いといたら解剖されそうだしな。仕方ねぇと臨也のマンションに連れていったら秘書だという女は面倒そうに預かれとのたまった。…本気で人望ねぇなノミ蟲。いやあるはずがねぇんだろうが。
ガキを一人で放っておくわけにもいかないから、諦めて連れ帰って、それから1日。すっかり懐いたちび臨也は片時も俺から離れない始末だった。
ああいや。別にそれをどうこう言う気はねぇよ。…一応、本人には秘密にしてるが俺は臨也のことが昔から好きだったから、正直言えばこいつの視線が俺だけに向いてるこの状況はそう悪くない。
悪くはないが、ただ、少し困る。


「シズちゃんシズちゃん!」
「ん?なんだ?」
「俺、シズちゃんだいすき!」

きゅうっと抱きついてくるこの生き物をどうすればいいだんだろうか。
可愛い。可愛すぎる。
明らかにこの素直さは反則だろうが。これがあの臨也だと誰が信じるっていうんだ?というか、これがどう育ったらあんな最悪な性格になるんだ?理解できねぇ。
そう思いつつ、

「俺も臨也が好きだぞ」

と答えれば、抱きついてくる小さな腕の力が強くなる。
ダメだ、可愛すぎる。これが俺が困っている原因なのだ。あまりにも普段の臨也からはかけ離れた言動がいちいち心臓を直撃して、心臓マヒでも起こしそうだった。

「俺、シズちゃんとずっと一緒にいたいな」

小さいながらに無理だとわかっているのだろう。酷く寂しそうに言われてこっちまで寂しくなる。
本当に、あのノミ蟲はこの素直さがなんで欠片もなくなってんだ。
このままの素直さで育ってたらさぞかしかわい…いや、二十歳超えた男にかわいいはねぇか。
でも少なくとも好感の持てる人間になっていたはずだ。そうだったら俺ももう少し素直になれるんだがな、と考えていると。
腕の力を緩めた臨也が俺の顔を覗き込んできた。

「シズちゃん?」
「おう、どうした」

返事をすると嬉しそうな顔。
ああいっそずっとこのままでもいいんじゃねぇか?と思わないでもない。
そんなことを思っていると、唐突に口の端にちゅっと小さい唇が重なった。

「っておい、何してやがる」
「んー…なにってちゅう…?」
「…それは特別に好きな相手とするもんだろうが」

っていうか心臓に悪いから止めろと脱力しながら言うと、

「俺、シズちゃんが好きだよ?」

首を傾げて無邪気に答えるちび臨也。
自分が間違っているとは思っていないらしい。
人の話を聞かねぇあたり、ああ、やっぱり臨也は臨也なのか?と溜息が漏れた。

「お前なぁ…っん!?」

とりあえず文句を言おうと口を開いた俺はまた口付けられた。
しかも今度は、舌が口の中に侵入してくる。

「ン…」

ちろりと探るように舐められてくすぐったさに身じろぐ。
ガキ相手に何やってんだと思わなくもないが、小さな体を突き飛ばすのも気が引けて。
馬鹿みたいに早くなった心臓の音は黙殺して引き剥がさずに大人しく受け入れた。
子猫が舐めるような拙い舌の動きに、ふと、そう言えば昔臨也に無理やりキスされたことがあったな、と思い出した。
なんのつもりであんなことをしたのか知らないが、俺はその頃からこいつが好きだったから鮮明に記憶に残っている。
あの時はまだ高校生だったのに臨也はやけに上手くて、なんだか無性に腹が立ったものだ。

「っ…ふぅ」

しばらくすると、はあ、と大きく息を吐き出して臨也がくたりと身体を預けてきた。
どうやら仕掛けてきたくせに先に息切れしたらしい。
まあそりゃ、この年で慣れてるとは思えないしな。

「おい、大丈夫か?」
「へいき…」

嘘つけ。すっかりへばっちまってるくせに。
力の抜けた身体を抱え起こすと、困ったようなそんな顔をする。
それから、

「シズちゃん、俺と付き合って」

ねぇお願い、と懇願するように言われて。
俺は不覚にもグラッと来た。
真っ直ぐに俺を見つめる、まだ全然汚いことなんか知らないような目は真剣そのもの。
ああチクショウ。本気で可愛すぎだろ、こいつ。
もちろん犯罪に走る気はないが、こんな目で見られて否と言えるわけがなかった。

「…ダメ?」
「付き合ってもいいけどな、俺は男だぞ?」
「知ってるよ?」
「いいのか?」
「俺は、シズちゃんがいいんだよ」
「わかった。そこまで言うなら、付き合ってやるよ」

頷いてやると、ぱあっと臨也の表情が明るくなった。
「嬉しい」と言ってまた抱きついてくるのを抱きしめ返して、苦笑する。
まあ、小さい間のことは覚えてないだろうと新羅も言ってたし、残念だがこの約束は無効だ。
フェアじゃないが仕方ない。それに、なにより大きいほうの臨也は間違ったって俺にこんなこと言いやしないんだから意味はないのだ。

「臨也」
「なに?」
「ごめんな」
「?」

騙すみたいなことをしている自覚は俺にだってある。
でも、少しの間だけでも好きな奴に好きだと言われる幸福を味わわせて欲しかった。
だから、

「シズちゃん?」
「ん?どうした?」
「好きだよ。大好き」

胸にジワリと来る感覚と、ほんの僅かな寂しさ。
それを振り払って、俺はつかの間の幸せを満喫しようと決めたのだった。
















※ちなみに元に戻ったのはこの1日後。元に戻った臨也に静雄さんは内心がっかりしたそうです。

イザ⇔シズというより、シズイザシズ?な感じになってしまいました。
都合7〜8歳くらいの気持ちで書いてましたが、臨也さんはこの頃にはもうひねくれてたんじゃないかと思うんですよね。
動きのない話になってしまった上に、リク内容に沿えてない感じですみません…
リクエストありがとうございました!


以下、全然大きい臨也→シズちゃんの部分が出てこないのでちょろっと臨也が小さくなった経緯。



「は?」
「だーかーらー、俺を子供にする薬作ってって言ってるの」
「…なんで?」
「だって、シズちゃん子供には甘いでしょ?俺だってたまにはシズちゃんに優しくして欲しいんだよ!」

そうのたまった友人に、新羅は白けた視線を向けた。
だからって子供と言う発想はありえないだろう。

「せめて女性化とかじゃだめなのかい?」
「それじゃ俺が主導権握れそうにないからダメ」

ああそうですか。
鬱陶しいなぁと思いつつ、新羅はにっこり笑って「いい薬があるよ」と言った。
その薬は実際は記憶は保持できないのだが、静雄のためにはそのほうがいいに決まっている。
そう考えつつ、新羅は両思いの癖にいまだに互いに片思いだと信じる友人二人に溜息をつくのだった。



今度こそ終わり。


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