pj0221 | ナノ





それすらも幸福な非日常

※匿名さまリクエスト「ある日突然臨也が女の子になって静雄と1日過ごす話」
ぬるいし最後までしてませんがR-18。付き合ってる設定。
















事の起こりは数時間前。
目を覚ました直後のことだった。

「何…これ」

その朝、寝室に響いた第一声はそれだった。
呆然としたまま呟いて、臨也は首を巡らせる。
隣ですよすよと平和そうに眠る男に視線をやって、それからもう一度自分の身体を見下ろした。

「………」

裸であることはこの際問題ではない。むしろ昨晩寝た時のままなのだから当然だ。
だが、明らかに昨晩と異なる点があり、それが臨也の思考を著しく停滞させている原因だった。
見下ろす先、本来なら真っ平らであるはず胸が、何故か膨らんでいる。
マジマジとそれを眺めてから、そっと触れてみた。柔らかい。
いつもより手や腕の作りも華奢な気がしてそちらにも触れてみて、首を傾げた。
明らかに骨格からして変わってしまっている気がする。

「なに、これ」

もう一度、同じ言葉を繰り返す。
今は布団に隠されて見えない下半身を確かめるのは、怖くてできなかった。
途方にくれたまま、臨也はとりあえず隣の男の肩を揺する。

「ねぇ、シズちゃん起きてくれないかな」
「ん…うるせ…ぇ」

もぞもぞと布団に潜ろうとする相手に。
臨也は眉を寄せ、さらに強く揺すって起こそうとした。
がくがくと揺さぶられ、さすがの静雄も目を開ける。

「いざや、手前なにしやがんだ…」

ぼんやりと開いた目が臨也を視界に映し、何度か瞬く。
寝ぼけていたはずの目が驚愕に見開かれるまで数秒。
さらに何度か瞬いて、間抜けな表情をさらしたまま静雄が身を起こす。

「臨也、だよな」
「そうだよっ…ていうか、君は恋人がいるのに見も知らない女をベッドに連れ込む人間だったわけ?」
「…間違いなく臨也だな。うぜぇ」
「その確かめ方はムカつくなぁ」

イライラと文句を言う臨也は、その自身の声がいつもより高いことに眉間の皺をきつくした。

「なんでそんなことになってんだ?」
「そんなの俺が聞きたいよ」
「心当たりねぇのかよ」
「ない」

きっぱりと言い切ってから、だが一応昨日の出来事を思い出してみるが。
やはり特にこれというものはない。
いつもどおり、池袋で静雄と傍迷惑な喧嘩を繰り広げ、怪我の治療をしに新羅のマンションによってから帰宅したところを静雄に捕まったのだ。
あとはお決まりのコースで明け方近くまで静雄に翻弄され続けたぐらいで、そこまで思い出して一気に機嫌が下降する。

「シズちゃん俺になんか盛ったりしてないだろうね?」
「んなことしねぇよ」

どうだか、と臨也は眉を寄せて静雄を睨みつけた。
媚薬を使われた事件はまだ記憶に新しい。思い出すのも不愉快な屈辱の記憶は、臨也の消し去りたい過去のひとつだった。

「…はあ、どうするかなぁ。新羅に診てもらおうにも夕方まで戻らないし連絡もつかないって言ってたのに」
「………」
「なに?」
「いや、なんでもねぇ」

凝視し続ける静雄に訝しげな視線を送れば、首が横に振られる。
臨也は、まさか静雄が、臨也は女になってもきれいだと的外れな感想を抱いているなど考えもしなかった。

「まあ、仕方ないし…とりあえず朝ごはんにしようか」

盛大にため息をついて、臨也はもそりとベッドから降りようとして――。
直後、静雄に「服を着ろ!」と怒鳴られる羽目になるのだった。






「ねぇシズちゃん」
「なんだ」
「何でそんな遠くにいるのさ」
「気にするな」
「…いや、するし」

明らかに避けられている。
そのことに気がついて、臨也は不満げな表情をした。
静雄が自分を避ける理由などわかり過ぎるくらいわかっている。

「シズちゃんって、女の子の裸見たことないっけ?」

そんな反応をされるとは。というのが臨也の素直な感想だった。

「シズちゃん」
「………」
「シズちゃんってば」
「…………」
「しーずちゃん、シズちゃんシズちゃん」
「……なんだ」
「触ってみる?」

空気が凍った。
そう表現した方が分かりやすい、そんな反応が返る。
そうか、シズちゃんは女の子にそういう意味で触ったことはないわけかぁ。
そうかそうかと納得して、臨也は満足げににんまりと笑った。

「触ってもいいよ?」

ねぇ、と話しかけて。
手を伸ばす。

「ッ」

戸惑い、逃げるか思案する気配。
一瞬の迷いの間に、臨也は静雄の腕を捕らえた。
指にそっと唇で触れて、どうする?と笑ってやれば、ごくりと喉の鳴る音がする。

「手前な、人が…」
「遠慮とかシズちゃんらしくないよ」
「ちっ、ムカつく野郎だな」
「ん…」

声と裏腹に、指先が優しく慎重に臨也の唇をなぞる。
壊れものを扱うその慎重さに、思わず笑いが零れた。
悪くはない。だけど。

「シズちゃん、俺はそう簡単に壊れないよ?」
「でもよ、その、やたら細いし、な…」

女になった身体に戸惑ってるのが、本人でなく静雄であるというのがおかしい。

「大丈夫だって。俺は折原臨也だよ?シズちゃんなんかにそう簡単に壊されてなんてやらないよ」
「ッ…言ってろ」

喋りながら唇をたどり続ける指に舌を這わせると。
静雄は臨也の挑発に煽られたのか、くそっと唸って唇を合わせてきた。

「ん、ぅ…ッ」

口を開いて誘う。
すぐに進入した来た舌が、臨也の咥内を味わうように蠢いて。
ぞくりと背筋をふるわせて、臨也は静雄にもたれ掛かった。
キスはあんまり変わらないなぁとどこか観察者の視点で思いながら、しばらく角度を変えてキスを続ける。

「んッ」

急に胸に触れられて、ビクリと竦んだ。
ゆっくりと形を確かめるようになぞられて。
それから、柔らかく揉まれて。

「ふっ、ぁ…っ」

とろりと、何かが溢れるような感覚が広がる。
服越しのもどかしい刺激では物足りなくて、脱がせてと口にした。
要望通り静雄が服を脱がせて直に触れてくる。
ぞくぞくと背を走る悪寒。

「ん、なんかいつもより感じやすくねぇか?」
「そう、かも…」

やわやわと揉み込まれて、いつもとは違う感覚に戸惑うしかない。
胸の突起も指先と舌で刺激されて、小さな喘ぎが堪えられずに零れた。

「し、ずちゃん…っ」

器用に片手ですべての服を脱がされて。
一糸まとわぬ姿にされて、臨也はふるりと震えた。

「怖くねぇか」
「へいき、だけど…たぶん」

首や鎖骨の浮き出る肌にキスマークが残される。
そのままゆっくりと唇が下へと降りていく。

「ん、は…っ、あ」

気持ちいい。
手順はいつもと変わらないのに、なぜかひどくふわふわする。
臨也は静雄の与える快楽に身を任せながら、今は他のすべての思考を放棄することにした。今はただ、この快感を感じていたかった。

「しずちゃ、もッ」
「すっげぇ濡れてる」
「ん、そういうことっ、言うなっ」

下肢に這わされた手が足の狭間に触れて、ぬるぬるした液体をすり付けていく。

「ちょっ、じっくり見るな!この変態!!」
「うるせぇ、減るもんじゃねぇしいいだろうが今更」
「なに開き直ってんの!?…っひぅ」

足を押し広げてまじまじと見つめる相手に怒鳴れば、黙らせるためだろう。そこに指が一本ゆっくりと沈みこんできた。
くぷりと音がして、わずかな痛み。
息を詰めた臨也がせめてもの抵抗で睨みつけるが、「痛くねぇか」と予想外に心配そうな声で言われては、それ以上文句を言うことさえできない。

「大丈夫、だよ」

たぶんね。と心の中でつけ加えて、臨也は身を屈めて静雄の髪に触れる。

「して、いいよ」

薄い色の瞳が戸惑うように揺れるのに微笑んでやって。
臨也はゆっくり動き出した指に、小さく息を漏らした。











だるい。痛い。眠い。
臨也はもぞりとシーツに包まったまま身じろいだ。

「今、何時…?」
「5時をちょっと回ったところだな」
「そっか。しずちゃん、水ちょうだい」
「ちょっと待ってろ」

くしゃりと髪をひと撫でされて、うんと頷く。
慣れない身体での行為は、臨也に酷く負担をかけていた。
途中からは記憶も曖昧で、いつの間にか気を失っていたらしい。

「ほら」
「ありがと」

差し出されたコップを受け取って、なんとかだるい身体を起こして水を飲む。

「大丈夫か?」
「大丈夫じゃ、ない」

喉痛いし、あそこも痛いし。
と臨也が言うと、静雄の視線がうろうろと彷徨う。
いまさら恥ずかしがるなこの馬鹿、と思うが、声を出すのも億劫なので黙って次のリアクションを待つことにした。
と、その時静雄の携帯がメロディを奏で始める。

「だれ?」
「ん……ああ。新羅からだな」

屈んで、放られたままの服の山から携帯を引っ張り出して確認して。
「出なよ」と臨也に促されるまま静雄は通話ボタンを押した。

「よう、新羅か?」
『そっちに臨也はいるかい?』
声はほとんど漏れてこないので臨也には聞こえない。
が、なんとなく新羅の用件は察することができた。

「いるけど…」

ちらりと視線を寄越す静雄に、眉を寄せて応じる。
こんなタイミングでの電話。しかも自分がいることを確認するとなると。
もうこの時点で臨也の中では、この件の犯人は新羅で確定だった。

『じゃあ、今臨也どんな感じ?』 「…は?…あー…これって手前の仕業か」

どうやら静雄も察したらしい。なんとも言えない表情を作る。
『ああ。ひょっとして成功?うん。それは良かった。で、どんな感じになったの?』 と、静雄の表情が変わった。
なんだ?なにか良くないことでも言っているのか?と身構える臨也に苦笑して。

「……絶世の美女?ってやつか?」

と、褒め言葉。…褒められた気はしないが。
『あはははっ、惚気ならいらないよ』 僅かに漏れ聞こえる笑い声。
新羅、後で覚えとけよ。心の中でそう呪いの言葉を呟いて、臨也はじろりと静雄を睨んだ。
途端、ばつが悪そうに視線が反らされる。

「うるせぇ。それより薬の効果はどれくらいで切れるんだ」

そうだ。臨也もそれが知りたいのだ。
『うーん…試作品だからねぇ。はっきりとは言えないけど、ずっとってことはないかな』 じっと耳をそばだてて会話を聞き取ろうとしたが、無駄だった。

「…ん、わかった。ならいい」

なにを言っているのか聞こえない。
だが、静雄の表情からして最悪の状況はなさそうだと判断して。
臨也は、はふ、と溜息をついた。

『うんうん。じゃあ、後よろしくね!』 「おう、わかった」

頷いて、電源ボタンを押して。
通話を終えた静雄が臨也に視線を戻したので、臨也はじっとそれを見上げる。
説明を要求するそれに気付いていたのだろう。
静雄は頬を掻きつつ簡潔に新羅の言葉を伝えた。

「そっか。まあ、ずっとじゃないならいいかなぁ」
「…ちょっと惜しい気もするけどなぁ?」
「俺は別に惜しくないよ」
「そうか?」

そうだよ、と返事して。
臨也は静雄の首に手を伸ばして、引き寄せる。

「それともなに?やっぱりシズちゃんは女の子の方がいい?」
「…そうは言ってねぇ」

溜息をつかれて、それから額にキスされた。

「俺は別に手前が男でも女でも構わねぇよ。ただ、もう少しだけこのままでもいいんじゃねぇかなって思っただけだ」
「ふうん。ま、俺ももう少しはこのままでもいいよ?」

昨日の、結構気持ち良かったし。
くつくつ笑って言うと、複雑そうに顔が顰められる。

「シズちゃん、ちゅーしよ?」
「…ったくよぉ」

仕方ねぇ奴、という呟きと共に静雄の手が臨也の顎にかけられて。
二人の唇が重なり合う。柔らかく優しいキスに気を良くしながら。
それでも、臨也は臨也らしく、脳内で目まぐるしく思考を巡らせていた。

――とりあえず、新羅には何か報復しないとねぇ…。

静雄に気付かれぬ程度に唇の端を持ち上げて。
くつりと笑った臨也がその後どんな報復をしたのか。
そのことについて新羅が口を割ることは決してなかったので、すべては闇の中である。
















※結局いつもとそう変わらない日常的非日常の話。

女体化はあんまり書かないのでどう書くかすごく迷いました〜。
うちの静雄さんも臨也さんも基本相手がどっちの性別でもそう意識的には変わらない感じです。
ただ、女には優しく!という意識が働いて静雄さんはいつもより優しいといいと思います。臨也さんも壊れ物注意!みたいな扱いがくすぐったいようなもどかしいようなそんな感じだとなお良し。
なにはともあれ、今回はこんな感じで!
リクエストありがとうございました!


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