pj0220 | ナノ





恋は盲目といいますが…

※ぱん田さまリクエスト「来神組がバンド組む話で、歌ってる臨也がえろくてムラムラしてまう静雄」
前提として臨也と静雄の仲はそれほど悪くないです。基本シズ→イザ。











「バンドやろう!」
「は?」

新羅の突然の言葉に、臨也が間抜けな声を出した。
それを横目で眺めつつ、邪魔が入ったからここまでだな、と静雄は手元の教科書を閉じて仕舞う。
断じてやりたくないわけではない。教師役の臨也は新羅の相手で忙しそうだから、仕方ないのだ。

「新羅、今なんて言ったの?なんかすっごく意味不明な、君にすっごく似合わない単語が聞こえたんだけど?」
「だから、バンドやろう!」

高いテンションはそのままで真剣に言われて、臨也は心底理解不能だという顔で眉間に皺を刻んだ。
きれいな顔はそんな表情でさえきれいなままで、そんなことを考えた自分を忘れたくて静雄はジュースを啜る。
その間にも、話は進んでいく。

「…なんで、って聞くまでもないね…君がよく分からない言動をする時は大概“彼女”が絡んでるんだったね」
「そうなんだよ!セルティがさ、学園祭で新羅は何かやらないのかって言うもんだから!」
「…そこでなんでバンドなのかはよく分からないけど…まあそれも彼女絡みなんだろ。もういいよ。それ以上何も言うな。で、とりあえず俺はやらな――」

臨也がそう言うのを見越していたのだろう。
新羅はびしっと臨也の目の前に人差し指を突きつけた。

「1年!」
「は?」

なるほど、その指は1か。
そう思いつつ、立てられた指に静雄は臨也同様、首を捻った。
何が1年だと言うんだ。と問いたい気持ちは静雄にもある――余計な口を挟んで矛先が向くのが嫌なので黙っていたが。

「一年間治療費タダにしてあげるから、だからやってよっ。ね?ここは人助けだと思ってさ!」

じっと見つめてくる瞳に苛立ったようで、臨也はさらに顔を顰め、盛大に溜息を吐き出した。
まあ、お願いと男にポーズをとられたって気持ち悪いだけだろう。

「…俺が人助けとかするように見えるの?」
「見えないけどそこはそれ、共存共栄、相互扶助だよ!」
「…………それなんか違うし、嫌だ」
「えーっ!」

鬱陶しい。と近づきすぎた新羅の顔を押し返す。
が、敵も然る者。
静雄の方を向き、何だと思う間もなく喋りだした。

「そうだ!静雄だって臨也が歌うの見てみたいよね!?」
「って俺が歌うのかよ!?」

冗談だろうと叫ぶ臨也に、新羅は何言ってるんだいと不思議そうな顔をした。
…そろそろ止めるべきか?

「だって僕もさすがにそれはちょっと嫌だし、門田くんにはすでに却下されちゃったし、その点臨也ならすでに目立ってるからいいでしょ?」
「いや待て。どこがいいのか意味がわかんないし、俺目立ちたくないし歌なんて歌いたくないから。あ…そうだ!シズちゃん歌うまいしシズちゃんがやれば――」
「嫌だ」
「ちっ」

速攻で断ると、舌打ちされた。
恩を仇で返しやがって、とか言っているが知ったことか。
静雄だって、できれば目立たず平穏に暮らしたいと日々思っているのだ。

「とにかくお願い!」
「って近い近い近い!キスでもする気かよ!?」
「あ、それいいね。やってくれなきゃキスするよ、とか?」
「ああもう!それそこまで捨て身になるような内容なのっ!?」
「僕にとってはね」

にっこり笑ってさらに顔を近づけられて、臨也は青くなって仰け反る。
二人のやり取りを見ながらジュースを飲み干した静雄は、やっぱ止めるべきだよなぁ、と溜息をついた。
まさか本気ではないと思うが、臨也に(密かに)惚れている身としては、やはり面白くない。
手を伸ばして新羅の服を掴んで引き離そうとして――それは結局臨也の悲鳴じみた声で実行には至らなかった。

「わかった!やる!やるからホントやめろ!新羅とキスとか冗談じゃないよ!!」
「ありがとう臨也!そう言ってくれると思っていたよ!」

脅迫に屈した臨也の強制参加が確定し、ついでのように静雄も参加させられることになって。
こうして、文化祭に向けてにわかバンドが結成される運びとなった。











「臨也がギター弾けるのは意外だったなぁ」

新羅がぽつりと呟くのに頷いて、静雄は自分のベースギターを見下ろした。
残念ながらギターなど弾いたことはない。
イラッときて壊さないように慎重に練習しているが、なかなか慣れそうになかった。

「俺はわざわざ新羅が全部自前で用意してきたことの方が驚きだね」

呟きが聞こえていたらしく、臨也はやれやれと溜息をついて静雄たちの方へやってくる。
そして、ひょいと静雄の手元を覗き込んで一言。

「シズちゃん意外と器用なんだ」

何が言いたい。
そう思って眉を寄せると、楽しげに笑われる。

「いやいや、褒めてるんだよ?まったくのド素人のわりには上達が早い。やっぱり先生がいいと違うね!」

静雄に基本的な弾き方をレクチャーしたのは臨也だ。
結局自画自賛の前振りだったらしいと理解し、眉間の皺をきつくして睨んでおく。

「臨也、邪魔してないでこっち来い。お前は歌の練習だ」
「はーい」

じゃ頑張ってねと言い残して、臨也は門田の方へと去っていった。
と言っても、もともと離れて練習しているわけではないので大した距離ではない。
門田に絡んで楽しげに笑う臨也の表情を盗み見て、静雄はもやもやとした気分を味わう羽目になる。
門田はドラム担当だが、どこかでやった経験があるのかと問いたいほど演奏する姿が様になっていて。
それが余計に静雄を苛立たせていた。

「じゃあ僕も練習するかなー」

そんな静雄の様子に気付いたのだろう。
あからさまに目を逸らした新羅を睨んでから、静雄も練習を再開する。

「っくそ」
「…静雄、頼むから壊さないでよ。予備のやつ取りに家に帰ると時間の無駄――あ、セルティに持ってきてもらえばいいんだ!そうすれば僕はセルティに会えて静雄は練習を再開できるから一石二鳥だね!」
「まだ壊してねぇよ」

セルティに会えると思った途端きらきらと目を輝かせて「壊してもいいよ!」とのたまった友人に若干引きつつ、静雄は慎重に弦を弾く。
まだまだ軽やかとは程遠いその指つきに臨也の馬鹿にした顔が重なって、一瞬怒りが湧き上がるが深呼吸して耐えた。
壊したら壊したで絶対何か言うに決まっているのだ、あのノミ蟲は。

「…なぁ、新羅。手前のと交換できねぇか?」
「ダメだよ。ビジュアル的に静雄がベースの方が絶対いいもの。それに僕もギターは弾いたことないからね。キーボードがベストポジションだよ」
「…ちっ」

キーボードだったら何とかなるかと思ったが却下されて。
静雄は仕方なしにひとまず気分を落ち着けることにする。
と、丁度それまで門田に文句を言われて渋々発声練習をしていた臨也が、やはり渋々といった感じで歌いだした。
本人が渋っていただけに決して上手くはないが、いい声だった。
つい自分の練習のことはきれいに忘れて、臨也の方に視線を向ける。
それが、失敗だった。

「ッ」

どくん、と心臓が大きく鼓動を刻む。
歌っている臨也は、ひどくエロティックだった。
細められた目とか、ほんのり赤くなった目元とか、ほっそりとした喉とか、赤い舌先が覗く唇とか…。
そんなものにばかり目が行って。
静雄は焦って目を逸らそうとするが、意に反して身体は動いてくれなかった。
逸らせない視線の先、歌い続ける臨也は甘やかな歌声と相まって静雄を誘惑しているとしか思えない。

「…臨也って声は良いんだよねぇ。後は歌い方さえ何とかなれば結構いけそうだと思わないかい?」
「…ッ」

ああクソ。なんなんだよチクショウ。あんなにエロいとか反則だろうが!!
静雄の中で沸き起こった熱が急速に高まっていく。

「静雄、すごい顔しているよ君」

新羅の言葉はほとんど素通りだった。
ただ我慢できない衝動のまま、静雄は行動に出る。

「臨也!」
「え…なに?」

急に名前を叫ばれて、臨也は目を瞬かせた。
ずんずんと歩いてくる静雄を見詰める目は、まだ先程の余韻を残しているように感じられて。
それが静雄の衝動を加速させる。

「手前いいからこっち来い!」
「え、なに?なに?俺何にもしてないよね!?」

ずるずると引き摺られる臨也が新羅に向かって叫ぶが。
新羅は臨也頑張れと呟いて、素知らぬふりを決め込み、門田は心配そうな表情をしたが止めはしなかった。

そして。
まんまと臨也の拉致に成功した静雄は膨れ上がる熱に思考を支配されながらも、これからどうするかと考えるのだった。















※これから告白タイムですね!

…というところで終わってすみません。
最後の方、力尽きた感があります…。せっかく素敵なリクをいただいたというのに力量不足でバンドやってるシーンまで行き着けませんでした。不甲斐なくてすみません…。
リクエストありがとうございました!


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