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課題はさっさと片付けましょう

※来神時代。シズイザシズ(リバ)。付き合ってる設定。














まだまだ残暑の厳しい8月後半。
外の気温は30℃をとうに越している中、臨也と静雄はクーラーの効いた室内で二人で夏休みの課題に取り組んでいた。
最初は二人ではなかったのだが、遠慮したのか何なのか、新羅と門田は早々に辞してしまっている。

「シズちゃん、ここ間違ってる」
「あぁ、悪ぃな」

そんなやり取りがしばらくは続いていたが。
さっさと自分の分を終わらせてしまった臨也は暇を持て余し始めていた。

「シズちゃんアイス食べる?」
「…食う」

こくりと頷く静雄に笑って。
臨也はじゃあ取ってくるねと立ち上がる。
付いてきたそうな相手にちゃんと課題を進めるように厳命するのも忘れない。
渋々といった体でノートと向き合うのを確認して、臨也は席を立った。
キッチンの脇にある冷蔵庫――の冷凍室を開いて適当にアイスバーを取り出して。
臨也は目を離すとすぐ別のことに気を取られる静雄の元に舞い戻る。
まったくもって手間のかかる男だ。そう心の中だけでぼやく。

「はい、シズちゃん」
「サンキュ」

差し出したそれを静雄が受け取るのを確認して、自分も食べ始める。
冷たくておいしい。

「ん、やっぱり夏はアイスとかき氷がおいしい季節だよねぇ」
「そうだな…って溶けてるぞ、そこ」
「うわ…ああもう」

たらりと溶けて零れたのを追って、臨也は舌を伸ばす。

「ん」

ぺろりと舐めとって、ふと視線に気づいて顔を上げた。
しかめっ面をして静雄が臨也を見ている。

「目の毒なんだよ手前は」
「すぐにそういう方向に考えるシズちゃんの脳味噌が問題なんだよ」
「………」

だいたいそう言う静雄もだいぶ目の毒だ。
静雄はミルクバー、臨也はイチゴミルクバーなのだが、静雄の舌先が舐めとるたびにその白が妙な想像を掻き立てていけない。
唇から覗く舌がぺろりぺろりとアイスを舐め上げ、ぱくりとそれの先をくわえ込み、僅かにかじりとって舌先で溶けていくのをこくんと嚥下する。非常に、卑猥だ。やばい想像を掻き立てられる。
自分も同じようなことを思われているのだろう自覚はある臨也は、

「…次はミルクは絶対避けよう」

うん、そうしよう。そう決めて、目の前の光景から目を背けることにした。

「シズちゃんどこまで進んだ?」
「あー…ここまで、だ」
「全然進まないねぇ」
「…悪ぃ」
「別にいいよ。今日はとことん付き合ってあげるつもりだし」

だがしかし。と臨也は静雄の課題を確認する。
もともと静雄は決して頭が悪いわけではない。ちゃんと教えれば理解できるし応用も効く。ただ、授業態度はあまりよくないし居眠りも多い。だから、成績は今一つだし、内容も把握できていないのだ。

「シズちゃん、君もう少し授業中まじめに勉強したらいいんじゃないかなぁ」
「臨也の方が教えるのがうまいからいいんだよ」
「…そうかい」

褒められるのは悪い気はしないし、静雄が頼ってくれるのも悪くはない。
ただ、静雄と長時間一緒にいるのは、臨也としては若干問題があるのだ。(何しろ健康な男子高校生であるので)

「…ああもう」

ちゅうしたい。触りたい。
暇を持て余した煩悩まみれの頭が要求することをいちいち叶えていたら、静雄の勉強が捗らないとわかっているのに、さっきのアイスが臨也にとってはとどめに近かった。
はふ、と溜息をついて、恨めしげに静雄を見る。

「…なんだよ?」
「うん。なんでもないよー。じゃあ、さっさと終わらせようか?」
「…これ、今日中には無理だと思う…」

何を弱気になってるんだこの男は。ひとがキスもハグもそれ以上も我慢してやっているというのに。
そんな臨也の心中など知らない静雄は、ぱらぱらとページを捲って、その多さにうんざりした顔を見せている。

「なあ臨也、これ明日にしちゃダメか?」
「ダメです。明日明日って言って、結局ずるずる延ばすのは目に見えてるからね?」

そうしたらいつまで経っても遊びに行けないじゃないか。
絶対ダメだと首を振ると、続きを始めることにしたのか、渋々といった感じで静雄が途中で放棄していたページを開く。
それにえらいえらいと頷いて、臨也はああそうだ、と思いついた。

「ねぇシズちゃん」
「ん?何だ?ちゃんとやってるぞ?」
「うん。分かってるよ」
「…?」

なんだ?と顔を上げた静雄に、臨也はにこりと笑う。

「今日中に終わらせられたら、今晩はシズちゃんが上でいいよ?」

本当は順当に行けば自分の番だが、まあいい。だからさっさと終わらせろよ。と発破をかける。

「!…本当だな?」
「本当だよ。だから、さっさと終わらせてよ。あんまり遅くなったら今日のお泊まりは中止だからね」
「わかった」

こくりと頷いて。
それから猛然と課題と格闘し始めた静雄に。
臨也はやっぱりこれが一番効果があるかぁ、と苦笑した。
餌を目の前に吊された途端このやる気だ。さっさと言ってしまえばよかったかと少し後悔する。
こうなればもう今日中にはけりが付くだろう。
そう考えて、臨也は夜のために体力を温存することに決めた。
そして、必死にペンを動かす静雄を横目にころりと横になって、

――やっぱりシズちゃんって単純でかわいいなぁ。

と、くすくすと笑うのだった。
















※煩悩にまみれた人たちの夏の一幕。


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