pj0212 | ナノ





お帰りは此方から

※匿名さまリクエスト「シズイザで静雄が臨也を好きすぎて監禁orストーカーする話」
シズイザというよりシズ→→→→→←イザな感じ。

















さて質問です。
こういう状況にアドバイスを求められたら貴方はなんと答えますか。


@マンションのポストに長々と綴られた恋文
頭悪そうな内容だなと語彙の少なさに呆れながらも、正直気持ち悪いのでシュレッダーにかけてゴミ箱に投棄。
無駄な時間を使わされて果てしなく迷惑だ。

A玄関のドアノブが明らかに拉げていて開けた形跡
これは割りとよくあるのでこの際スルーしてもいいけど。

B風呂場とトイレと寝室にカメラと盗聴器
うん。さすがにこれはない。
俺に恨みを持つ人間の犯行だと考えてもいいけど、この中途半端な隠し方が明らかに素人臭い。


結論。
かなりヤバめのストーカー被害に合っていると思います。警察へ届けましょう。(俺は無理だけど)





「…あー…もう、最悪」

分かりやすいのか分かりにくいのか。
そもそもなんでこんなことをしてるんだ、あの単細胞は。
嫌がらせにしても…いや、ないな。あの男はそういう性質の悪い陰湿な嫌がらせをするタイプじゃない。
だが否定しようにも状況証拠は間違いなくたった一人の人物を示していて。
俺は大きく息を吐いて、精神的な疲労を覚えてソファに懐く。
もう何にも考えたくない。最悪。
それでも頭は勝手に思考を続ける。

「…誰かの入れ知恵か?…いや、それでもそういうことをするタイプじゃないよな」

基本的にヤツは真面目で人が良いのだ。俺みたいに間接的な嫌がらせはしない。
だけど、だから、違和感がある。
そうやって、深く考え始めたのがいけなかった。
まさか、天敵の襲来に気付かないなどという失態を犯す羽目になるとは…。

「いぃざぁやぁくーん?」
「……いつ、入ってきたのかなシズちゃん」

背後から聞こえたそれに、呻くように声を絞り出す。
正直、今ものすっごく振り向きたくないです。
その気持ちに正直に、俺は振り向かずに訊いた。

「ねぇ、シズちゃん」
「あ?」
「これ、どういうことかな?」

これ、とさされたのはテーブルに放り出したままのカメラと盗聴器だ。

「……」

シズちゃんは答えない。
無言は肯定だと、この男は理解しているのだろうか。
とりあえずやはりシズちゃんだったのかと確認できて、俺は深い溜息をついた。

「あのさぁシズちゃん、言いたいことがあるなら直接言ってよ。こういう陰湿なのって――」

後ろの気配が動いて、言葉を切って反射的に逃げを打つ。
だが、一瞬の差であっさり腕を取られてしまった。不覚だ。

「ッ…シズちゃん、放して」
「なあ臨也」
「…なに?って…うわっ」

腕を引かれて倒れこんだ先は当然シズちゃんの腕の中で。
何故かぎゅうぎゅうと抱き締められた。

「…えーと、シズちゃん?」
「あれだけで俺だって分かるんだなお前は」

いやいやいや。ラブレターの筆跡はそのまんま君のだったし、ドアノブははっきりくっきり手の跡があったし!
カメラとかでちょっと実はシズちゃんじゃないのかなって考え直そうとしたけど、でも君以外あんなことできるヤツいないし!!
っていうか!なんで抱き締めてんの!?なんで頬擦りなんてしちゃってんの!?なんでそんなに嬉しそうなの!?

「し、しずちゃん…?」
「寂しかったんだよ」

いやだから意味分かんないし!脈絡をもってきっちり喋ってくれ頼むから!!
するりとコートの裾から忍び込んできた手がシャツを捲り上げて肌に触れた。

「ひっ」
「最近手前が来ねぇから。仕事が忙しいんだろうと思って最初は我慢してたんだけど、な」
「ちょ、やっ…だ」

我慢ってなんなのさ!?っていうか、手ぇ放せ触るな気色悪い!!

「なあ臨也」
「ッ」
「俺は、手前が他のやつに手ぇ出されないように守ってきたんだけどな…」
「いや意味分からないよッ?守られた覚えなんてないし、そんなことして欲しくないしッ…っていうか放せよ!」
「そろそろ俺が限界だ」
「――ッ」

こちらの言うことなど聞く気もないストーカー野郎にかぷりと耳朶を噛まれて、声にならない悲鳴を上げる。
ありえない!ありえないよシズちゃん!!

「お、落ち着いてシズちゃん!!俺と君の関係をじっっくり思い出そう!?俺と君は高校時代から犬猿の仲で殺し合いの喧嘩をする仲で、俺は何度も君を殺そうとしてトラックに轢かせてみたり色々したよね!?その度に君は本気で怒って――」
「黙れ」
「ッ!!!」

なに?なんなの?なんで俺、シズちゃんに口塞がれちゃってんの?ねぇ知ってるのシズちゃん?これ世間一般じゃキスって言うんだよ?

「…っ、ん」

ぺろりと唇を舐めてから、開放された。
いや、まだ何度も啄ばむようなキスはされているんだけど…。

「手前が俺を好きなのは分かってるから、もう嫌いな振りなんてしなくていいぞ」

いや。振りじゃないんだけど。本気なんだけど。
ホントどうなってるの?なんでシズちゃんがこんなこと俺にしてんの?…いや充分分かったけど。でも、なんで…俺は本気で振り解こうとしてないんだよ。そりゃ俺じゃシズちゃんには力じゃ敵わないけど、でもナイフだってコートのポケットの中に入りっぱなしだし、さっきのキスだって舌を噛んでやることもできた。なのに、なんでしないんだよ俺。

「もう、訳わかんない」

いっぱいいっぱいだ。限界。無理。もう考えたくない。

「…そんなに、寂しかったわけ?」
「うるせぇ、手前が来ねぇから悪い」
「…だからってストーカーに走るのは感心できないよ?」

ぎゅうっと腕に力がこもる。反論はないからストーカーの自覚はあるらしい。

「なんなんだかなぁ」
「うるせぇ死ね」
「死んだらこういうことできないよ?」
「………」

今度はだんまりか。
そう思って、また口を開こうとした時――

「手前はもう俺のもんだ。そう決めた」

短気短慮単細胞な大馬鹿ストーカー野郎はきっぱりそう宣言して下さった。よし分かった。とりあえず死ね。
一瞬でも絆された俺が馬鹿だった。
「シズちゃん」

ぐいっと抱き締める腕を押して、俺はシズちゃんに向かって極上の笑みを浮かべてみせる。
そして。
びしりと開け放った玄関の外を指差して一言。

「ハウス」

意味が通じたらしいシズちゃんのこめかみに青筋を浮かぶ。
そう。それでこそシズちゃんだ。
だから、さっさと怒って殴りかかってきてよ。もう君の戯言に付き合うのはごめんだからさ。
















※ストーカーと被害者の攻防はまだ続きそうです。

監禁かストーカーかで迷ったのですが、シリアスとの指示はなかったのでストーカー話に落ち着きました。
これは比較的軽めですが、監禁話だったらかなり重い話になってた気がします…(だから最後まで迷ったんですけど)
なにはともあれ今回はこんな感じで!もちろん書き直し要請も受け付けます。
リクエストありがとうございました!


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