pj0211 | ナノ





おおかみさんとくろねこさん


※けもみみパラレル続編。耳が求愛なら尻尾は?という話。
葉月さまリクエスト「けもみみパラレルの続編で尻尾にちなんだ話」
匿名さまリクエスト「けもみみの続き」
上記の二つを合わせて書かせていただきました。
















はふ、と小さく欠伸をして。
黒い毛並みをした猫族がころりと静雄の膝に移動してきた。
所謂膝枕、と呼ばれるものをさせられた静雄は、なんだ?と怪訝そうな顔をして彼を見下ろす。
見上げる形の相手のゆるりと細められた目が楽しげな色を浮かべている。

「臨也?」

呼びかけながら、そっと撫でてやればくるると喉を鳴らす。
その満足げな表情に静雄はやれやれと溜息をついた。



静雄が臨也に求婚して二週間。
17歳である彼らはまだ結婚は出来ないので、必然的に婚約という形をとることになった。
キスはよくする。以前とは違う穏やかで他愛のない触れ合いも多い。
ただ、増えたスキンシップに喜ぶべきなのか、いい加減先に進ませてくれと嘆くべきなのか。


「ねぇシズちゃん」
「なんだ?」
「尻尾」
「あ?」
「尻尾、触ってもいい?」

………。
なあ、それは誘っていると思ってもいいのか?
そう問いたいが、そうでないのが分かっている静雄は投げ遣りな気分で「好きにしろよ」と尻尾をばさりと振って差し出した。

「けっこう硬いんだねぇ」
「……」

狼の被毛は二重構造だ。上毛と下毛に分かれていて、表面を覆う毛は見た目より硬い。
細い指に毛を掻き分けられて、ぞくりと悪寒が静雄の背を駆ける。
やっぱり猫とは違うねと言いつつ弄くり回す臨也は、それに気付いていないらしい。
真ん中から先の方へと指を滑らせて、また戻ってきてそのまま付け根へ向かう。

「い、ざやッ」
「え?どうしたの?」

絞り出した声に、きょとりと見上げる臨也はやはり自分が何をしているのか分かっていない様子で。
静雄は低く唸って、尻尾を臨也の手から取り返した。

「…シズちゃん?」
「…あのな、臨也」

まさかとは思う。ありえないだろうとも思う。
だが、どう考えてもこの反応は知らないとみて間違いないだろう。
本来なら男としてはその事実を喜ぶべきなのだろうが、残念ながらそんな余裕は静雄にはなかった。

「手前、他のヤツにやったりしてないだろうな?」
「え?なにを?」
「尻尾触らせてくれなんて、言ってねぇよな?」
「…言ってないよ。恋人でもない人に言ったらセクハラだよそれ?わかってるのシズちゃん?」

呆れた顔での返答に、とりあえずよしと頷く。

「じゃあ、触られるとどんな感じか知ってるか?」

静雄の問いに、ふるふると臨也が首を振る。
それから、よいしょと声をかけて起き上がって。

「尻尾触られるの小さい頃から嫌いでさ、だから知らない。でもさ、それとさっきのと何の関係――」
「触られてみれば分かる」
「………」

困惑した表情のまま、臨也は静雄を窺い見た。
静雄が無言で差し出した手とその顔とを何度も視線が往復する。

「尻尾、貸せ」
「……」

さらに何度か視線の往復。

「臨也」

静雄の呼びかけに、臨也は意を決したように手の上にぽすりと黒い尾を乗せた。
柔らかな毛並みの感触に、静雄は目を細める。
無知は罪、という言葉が脳裏を過ぎったが、静雄としては役得なので構わない。むしろ、こういう方面は無知な方が嬉しかった。
細かくて触り心地の良い滑らかな毛をやわやわと指先で撫でながら、徐々に付け根に向かっていく。

「え……な、に…?」

戸惑う声と、ぺたりと伏せられた耳。
無意識に尻尾を逃がそうとする臨也だが、静雄の手にしっかりと掴まれていてそれは叶わなかった。

「…ぅ…ん」

目を閉じて小さく震える臨也に、静雄はごくりと喉を鳴らす。
ああちくしょう。今すぐ食っちまいてぇ。
そう口の中だけで呟き、予想より感度が良いらしい尻尾を撫で上げながら、このまま襲ってしまいたい衝動を堪える。

「や、だ…シズちゃん、やだ」

涙声での訴えに、はあと大きく溜息をついて静雄は臨也の尻尾を開放した。
途端、しゅるりと逃げていく黒いそれが名残惜しくて目で追うと。
臨也は自分の尻尾を抱き締めて警戒の色の混じる目を向けてきた。

「あー…これで分かっただろ」

ばつが悪くて視線を逸らせば、静雄の行動の訳を理解したらしい臨也も視線を泳がせて。

「…ごめん」
「分かればいい…」

謝る臨也の心情に合わせるかのように黒い尻尾もへたりと力をなくす。
その様子に、これはやり過ぎたかと反省し。
静雄は出来る限り警戒させないように注意しながら手を伸ばして、愛しい黒猫を抱き締めた。








その直後。

「ねぇ君たち、ここが学校の屋上だって分かってるかな?」

新羅の呆れを含んだその言葉に、二人はびくりと背を揺らすことになる。















※ある日の午後の屋上にて。おおかみさんの我慢はもうしばらく続きそうです。

しっぽが性感帯なのはお約束。でも、しっぽと言われてこれが真っ先に出てきた自分が心配です←
書き直し要請はいつでも受け付けますので!
リクエストありがとうございました!


BACK




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -