pj0206 | ナノ





雨の日の猫

※あここさまリクエスト「付き合ってる設定で雨の日に家でごろごろしながら取り留めもない話をしたりするシズイザ」
















外はしとしとと雨が降っていて。
臨也はぼんやりと窓から見える街並みを眺め、溜息をついた。

「シズちゃん」
「なんだ」

即座に返る返事は、相手が手にする雑誌に集中していなかった証拠だ。

「コーヒー淹れるけど、飲む?」

問えば、僅かな逡巡の後、静雄は頷いた。

「砂糖とミルク――」
「はいはい。いっぱい入れてあげるから」

遮って言えば、ムッとした顔をする。
子供っぽいなぁ、と思ったが怒るのは目に見えていたので口に出さず、臨也は席を立った。
お子様舌の恋人にはたっぷりの砂糖と牛乳を。
慣れた手つきで用意して、慣れた、という事実にくすぐったさを覚え、臨也は苦笑した。






「はい、どうぞ」
「おう」

差し出したカップが受け取られるのを確認して手を離し、臨也は静雄の向かいのソファに座る。
こくりと一口飲んで、放り出された雑誌を手に取った。

「ああ、幽くんのか」

静雄の弟の顔を表紙に見つけ、納得する。
滅多に本など持ち込まない相手が持ってきたものだ――貰ったのか買ったのかは知らないが。

「愛されてるねぇ、幽くんは」

そう言えば、何当たり前なこと言ってるんだという顔をされた。
何となく不愉快になって、臨也は視線を静雄から外して外を見る。
重い色をした灰色の空だ。

「雨、止まないね」
「何処か行く予定でもあったのかよ?」
「ないよ。シズちゃんが来るって言ってたのにわざわざ予定入れてどうするのさ」
「…そうかよ」

そこで何故照れるのか訊いてもいいだろうか。
そう思ったが、止めた。なんだか色々よろしくない気がする。
臨也は代わりに重く長い溜息をついて、テーブルにカップを置いてソファに体重を預けた。

「おい」
「なに?」
「こっち来い」

端的な命令形。

「なんで?」

ちらりと視線だけ向ければ、ちょうど静雄が立ち上がるところで。
何をするのかと注視していると、臨也の座るソファまでやってきて、座る。

「…なんなの?」

怪訝な顔で問う臨也には答えず、静雄は彼をの腕を掴み引き寄せた。
その動作と重力に抗うことなく臨也の身体は傾いで、ぽすんと静雄の膝に頭を乗せることになった。
一体なんなのだ。
とりあえず突然の暴挙を咎めようと見上げた先の相手を睨みつければ、何故か酷く満足げな顔で。

「ホント、なに?シズちゃんキモイよ?」

眉根を寄せて臨也は問う。

「寝るんならここでもいいだろうが」

ここ、とは膝のことだろうか。
臨也は首を傾げ、訊くか否か迷った。

「別に、寝ようと思ったわけじゃない」

結局、そう言うにとどめる。

「じゃあ撫でさせろ」
「じゃあってなんだよ、じゃあって」
「うるせぇ、どうでもいいだろうが」

良くはない。良くはないが、許可も与えていないのに勝手に頭を撫でる大きな手のひらに、臨也は黙った。
優しく行き来する手が、時折頬や首筋を撫でるのにくすぐったいと文句を言うとそうかよと返される。
止まらない静雄の手に、一体なんなのだと臨也は困惑気な表情だ。
まるで猫扱いだと思ったそばから、

「雨の日は猫は眠いもんらしいしな」
「…俺猫じゃないし」

静雄からもそう言われて、臨也は小さく抗議する。
「似たようなもんだろ」と答える相手は、どうやら手を止める気はないらしく。
何度も髪を梳かれて、だんだんと眠くなってくる。

「ねぇシズちゃん。晩御飯、どうするの?」
「雨だし外出んのはめんどくせぇな」

言外に帰るのか泊まるのかと問えば、見当違いな答えが返った。
馬鹿に遠まわしに訊いても無駄だったか、と溜息ひとつ。
臨也はころりと向きを変えて、静雄の顔が見やすい位置を確保する。

「なら、おいしいもの作って」
「…まあ、仕方ねぇか」

本当に猫にするように喉を撫でられて、臨也はくすぐったさに身を捩った。
喧嘩の時に見せるものとはまるで異なる優しい色をした目が、臨也に向かって細められる。
それに気を良くして、臨也はついでのように本当に欲しいものをねだることにした。

「泊まってってよ、シズちゃん」

何度か瞬かれたブラウンの目がまた細められて。
仕方ねぇな手前は、という言葉と共に触れるだけの優しいキスが降ってきた。
















※雨でご機嫌斜めな猫を甘やかしたくなった静雄さんと、無自覚に甘える臨也さん。

ごろごろというか、だらだらしてました…。あれ…?
書き直し要請はいつでも受け付けますので!
あここさま、リクエストありがとうございました!


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