君尋君の誕生日。


「きーみーひーろー!!」



奈々が今まさに買い物途中の四月一日に駆け寄り、抱きついた。周りの人は何事かとヒソヒソ話している声や、冷やかす声や、呆れる声でどよめいた。
それほど声が大きくて目立ったと言う事である。今日は4月1日。四月一日君尋の誕生日だ。そんな日に幼馴染にいきなり抱きつかれたら、自分を祝福してくれていると勘違いしてもおかしくはない。
それも四月一日は、今日の朝、侑子にとても必要とは思えない買い物を大量に頼まれていた。あんな薄情な雇い主と比べると、この幼馴染はなんて素敵な人なんだとおもう。

しかし、次の一言で四月一日は雷に打たれるよりも辛いダメージを受ける事になる。



「あのねっ!私、百目鬼君と付き合い始めたのっ!!」

「…………えぇえぇぇぇ!!!」



暫く今奈々が発した言葉が頭に入らなかった四月一日は、先ほどの奈々の叫びに勝るとも劣らない声で叫んだ。



「あのね、言うの恥ずかしいんだけど君尋には言うね。今日、百目鬼君に「好きです!」<って告白したらOK貰えちゃったの」



頬を染めて『恋する乙女風』にキャピキャピ話す奈々。ちょっとまて、何が悲しくて自分の誕生日に大切な幼馴染が天敵に攫われた話を聞かなくちゃいけないんだ。



「今日は四月一日といい私といい最高の日だねっ♪」

(最高じゃないぃいぃぃ!!)



そんな事を叫んだら奈々が傷付くのは目に見えているので、口には出さない。

人生最悪の誕生日になることを、覚悟した四月一日であった。

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