ポンッ ゴパァッ!
モコナの口から何かが飛び出た。水あめのようなそれは、地に落ちると弾ける様に広がり、消えた。代わりに中から5人の旅人が出てくる。モコナは黒鋼の頭の上に着地し、一人で『10点満点!!』と胸を張っていた。そんなモコナに、奈々が言う。
「モコナ、万が一のために隠れておいて。騒ぎになるとややこしいから」
「はーい」
素直に奈々の服の中に入った。黒鋼は自分じゃないことに少しだけほっとする。ふと、ファイが周りを見渡す。すると、建物の影から小さな少女が出てきた。ポニーテールの、前髪を切りそろえた女の子。
興味深そうにこちらをみている。どこかで見たことのある顔。面影が強く残っている。あれは……
「春香…?」
それはまさしく、高麗国で会った春香だった。あの時より一回り小さいのはこの子があのときの春香より幼いからだろうか。嬉しそうに瞳を輝かせるサクラ。
当時は記憶の羽根が集まっておらず、虚ろだったが、今は仲間との再会を心から喜んでいるようだった。一方、春香は不思議そうに奈々たちを見る。
「何で私の名前を知っているんだ?」
「あぁ。あまり気にしないで。それよりここは何処?教えてくれるかな?」
「ここは水月だ。国名を知らないってことは旅の人か?その格好といい」
好奇心は人一倍強いらしい。幼いのに一人で外に出て、見知らぬ大人たちに話しかける子供なんてそうそういないだろう。大切なものを探して旅をしているというと、春香の顔が一気に晴れた。
「だったら家へくるといい!私の家は宿屋をしているんだ!」
「いいの?」
「モチロン!」
満面の笑みで、春香は答えた。
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